第14話 魔王
街を焼いた事で、俺たちは魔族王国の敵に認定されちまったらしい。
魔族の軍と何度か戦闘になったが、ロホミンのえげつない魔法とプロテ司祭の防御魔法で難なく壊滅させる事が出来た。
そしてその後も守りを固めた2つの街を焼く事になり、人々が無慈悲な炎によって炭になっていく。
その悲痛な叫びが俺の少しだけ残っていた良心を痛めつけた。
その呵責に耐えかねて、俺はロホミンに魔法の使用禁止を命じた。
「俺も自分が相当ワルだと思っていたがな。お前ほど極悪な奴は初めてだぜ。
どれだけの人を殺したと思っている??お前に罪悪感はないのか!?」
「魔族は聖王国の敵ですよ??
そもそもそこの変態槍が騒動を起こすから仕方がなく魔法で対処してるだけじゃないですか?」
「俺様を変態槍と呼ぶなー!!娼館まで燃やしやがって!!代わりにお前を貫いても良いんだぞー!!」
「グングンヌク。お前は黙れ。ややこしくなる。
それでもだ。街ごと焼く必要が何処にある??街ではその魔法は使うな。もっと小さい魔法を使え」
「私は魔法の天才なので、爆炎魔法以外使いたくないんです」
「下手に出てたら調子に乗りやがって!!グングンヌクに貫かせてやろうか!!このアマ!!!」
「そんなに焼き豚になりたいんですか??」
「お前が詠唱をしている間にグングンヌクなら一瞬でテメェを仕留められるぜ」
「詠唱??そんなもの必要ありませんよ?
一瞬で焼き豚になるのはあなたですよ?」
「何!?じゃあ、あの無駄に長い詠唱はなんだー!」
「せっかくの最高の魔法を使ってあげるのにカッコいい詠唱しないと相手に悪いじゃないですか??おまけですよ」
「その最高の魔法で何人何千人、いや、何万人殺したと思ってるんだ〜!!」
「勇者様もロホミン様もその辺でおやめください。
魔族と言えど人。悪の魔王を討伐するために仕方がなかったとはいえ、多くの血が流れた事は遺憾に思います。
ロホミン様、今後は出来るだけ街中では爆炎魔法を控えるという事でご納得いただけませんでしょうか?」
「プロテは話がわかるじゃねぇか!!」
「プロテ司祭が言うなら仕方がありませんねぇ。ではそこの変態勇者が失敗した時だけ加勢する事にします」
「誰が変態だ!!〜このアマ〜〜!!」
「頭が弱い人はすぐ吠えるんですね」
••••もう怒るのも疲れたな。
ーーーーーーーーーー
とうとう魔族の王の居城がある街にやって来た。
そこは街全体が高い塀に囲まれた城塞都市で美しい純白の王城が街の門のその先に見える。
門は堅く閉ざされていたが、グングンヌクが「俺に任せろ」と飛び上がると門の裏側に飛んで行った。
そして、しばらくして街の門が開いた。
どうやら門兵を殺戮した挙句、脅して開かせたらしい••••。
お前だけで魔王を殺して来てくれてもいいんだぜ??
「魔法を使うなとか言うからこんな手間がかかるんですよ。全部燃やしちゃえばいいのに」
鬼畜な魔法使いの女がまた恐ろし事を言い始める。
「さあ魔王城へ向かうぞ!」
俺はこの極悪な女の言葉を無視して敵兵が集まる王城を目指した。
爆炎魔法がなくてもグングンヌクとプロテ司祭の防御魔法だけで敵兵を突破し王城の前まで来る事が出来た。
爆炎魔法は必要ない!
今回は爆炎魔法で住民を皆殺しにしなくて済んだ事に安堵を覚える。
王城の前には、10名程の兵を従えた女性が2人並んで俺達がが来るのを待っていた。
「魔王様!ここは私が食い止めますので王城を捨ててお逃げください」
白ローブを来たブロンドの髪を靡かせる20歳くらいの美女が、もう1人の蒼いドレスを身につけたこれまた妖艶な30歳前後の美女の前に立つ。
「良いのじゃ、勇者殿。其方はその治癒の魔法具を持って現れた。
人々を癒す勇者なのじゃ。争いに加わる必要はない」
「ですが、女王様は悪魔の使徒からこの国の民を守るのが私の役目だと仰ってくださいました。逃げるなんて出来ません」
白いローブのブロンドの美女がドレスの美女に食い下がる。
「お取り込み中のところ悪いんだがな。俺は魔王を倒しに来た。そこのドレスの女が魔王って事でいいか?」
「女王様には手を出すな!!この悪魔の手下が!!」
「しゃあねぇ。美女は殺したくないんだが、やるしかねえか。やれグングンヌク」
俺は聖槍グングンヌクを軽く放り投げる。
「嫌だね!!!美女を殺るのはお断りだぜ!!美女は俺様の下の棒で貫くためにいるんだからな!!
2人とも良い女じゃねえか!!俺と良い事しようぜぇ!」
グングンヌクは魔王達を殺すのではなく口説きはじめた。
「まあ俺も殺るよりやる方にに賛成ではあるが•••」
とりあえず魔王と話をしようと、2人に向かって歩き出すが、近くに寄れば寄るほどその2人がこれまで見たことのないほどの絶世の美女だと言う事がわかる。
「とんでもない美人だな•••おい」
殺してしまうのは惜しすぎる。いや、俺のわずかな良心が抵抗しない2人を殺すのを拒否している。
「私たちを辱めようと言うのですか!?この悪魔め!!」
近づく俺と聖槍にローブの美女が声を荒げる。
「私が魔王だ。お前にこの身は差し出そう。この女と部下には手を出すな」
魔王と言う女は、ローブの女を庇おうとさらに前に出て来た。
「魔族の王を相手になにやってるんですか?変態勇者が殺らないなら、私の爆炎魔法の出番ですね」
後方から鬼畜魔法使いロホミンの声が聞こえる。
「ちょっと待て!!何も殺さなくても良いんじゃねえか!って言ってるんだ!!」
俺は振り返りロホミンにそう説明した。
「あっ!日和ましたね??では」
ロホミンが杖を前に掲げる。
何を!?まさか爆炎魔法を使う気なのか!?
マジか!?あいつを先に殺らなければ!!
「グングンヌク!!ロホミンを殺•••」
「インフェルノ」
目の前に炎が広がる。
ウガ〜〜〜〜〜!!
俺は灼熱の炎に飲まれて•••意識が途絶えた。
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