第15話 治癒魔法の杖
俺の目の前に、羽を広げた自称天使の女がいる。
「俺はまた死んだんだな•••」
「そうですよ。聖槍までプレゼントしたのにまた戻って来るなんて本当に雑魚ですね」
この天使の女に雑魚と呼ばれても何故か怒りが湧いてこない。
あの魔族の城で会った2人の絶世の美女も焼け死んだのだろうか。
いや、容姿だけではない。俺は彼女達に聖なるものを感じていた。
自分の身を賭してまで相手を守ろうと言うその姿に俺は感動してしまったのだ。
しかし、あのロホミンとか言う鬼畜魔法使いは全てを燃やしてしまったのだろう。
俺は良い。こうして天使の女が何度でもやり直させてくれるのだから。
だが、奴はあの心まで美しい女達までも焼き殺したのだ。
「あれ?いつもの元気がないですね?どうしたんですか?自分が雑魚だと思い知りましたか?」
「ああ、俺は雑魚だった。あの女達を守れなかったんだからな」
「ええ!!どうしたんですか?女を守る??
熱でもあるんですか??
暴行にレイプに殺人までした鬼畜な貴方の言葉とは思えませんけど」
「確かにレイプもした。人を殺した事だってある。ついカッとしてやっちまったんだがな。
でもな。無差別に人殺しをしようなんて思った事は一度もねぇ!」
「はぁ。今更なに言ってるんですかね。まあ別にどうでも良いんですけど。
今度は何が良いですか?M16ですか?M60とかいっちゃいます??」
「もう武器はいらねぇ」
「え?えーーーー!
クソ雑魚なのに武器がなければすぐ死んじゃうかもですよ?」
「治癒魔法の杖をくれ」
「ち、治癒魔法??本当に熱でもあるんじゃないですか?
治癒魔法では人は殺せませんよ?」
「良いんだ俺はもう人殺しはしねぇ。人を癒す人間になりたいんだよ」
「人を癒したい?貴方がですか?悪いものでも食べたのかも知れませんね。
まあ、凄い武器を与えても雑魚は雑魚ですからね。良いですよ。治癒魔法の杖プレゼントしちゃいます♡」
「ありがとよ」
「ではもう帰って来ないでくださいね!
行ってらっしゃい」
目の前が真っ白になる。
ーーーーーー
俺は雪を頂く山々の麓にある寂れた田舎の農村に転生した。
その農村はとても貧しく、村人が皆で力を合わせて畑を耕し家畜を飼い家を建てて生活していた。
俺はボロ屋に住むある家族に助けられて、命を繋いだ。
その家は自分たちが食べるのも精一杯なのに俺に飯を食わせ寝るところまで用意してくれた。
俺はお礼に畑や家畜の世話を手伝った。
ある時、その家の15歳くらいの女の子が病気になった。
この村には医者などいない。病気になっても教会が寄付と引き換えに効きもしない薬を渡してくれる程度だ。
俺は治癒魔法の事を思い出し、その女の子に治れと念じながら杖で触れてみた。
すると杖の先端にある小さな宝石が光り出す。
しばらくして、女の子の症状が軽くなり、一日で病気から回復したのだ。
女の子と家族はとても喜び感謝の言葉をくれた。俺の事を神の使徒様だとも言ってたな。
俺はそんな偉い人ではないんだよ。おれは大罪人だからな。
あの天使の女のプレゼントは全て本物だった。口は悪いが根は悪い奴ではないのかも知れない。
この杖にはとても価値がある。人を癒す事がこれだけ素晴らしい事だとは••。
俺は今までにない喜びを感じていた。
その後、しばらくはこの村の病人を治癒魔法で癒やしながら、貧しくも親切にしてくれるその家族の世話になっていたが、次第にこの力をもっと多くの人のために使いたいと思うようになった。
だから俺は病気や怪我で苦しむ人を助けるために旅に出ることにした。
俺を助けてくれた家族は別れをとても悲しんだが、二度と会えないわけじゃない。
「お兄ちゃん絶対帰って来てね!!待ってるからね!!」
「また戻って来るぜ!!必ず!約束だ」
その涙ぐむ少女の顔は今でも忘れられない。
必ず戻って来よう。俺はそう心に誓った。
ーーーーーーー
「こ、ここはどこなの??」
「私は女神アルデ様の使徒カリンです。貴方はV15374世界の生を終え、魂の状態になっています」
ーーーーーーーー
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