第2話 魔法の杖をもらった

目が覚めると先ほどと同じように草原に立っていた。


同様に亡くなる前に着ていた服を身につけているが、今度は手に1mほどの木の杖を持っていた。


「これが魔法の杖なのか?」


杖は微細な装飾が施され先端が太く大きな赤い宝石が輝いていた。

いかにもアニメの魔法使いが持つ杖なのだが、どうやって魔法を使うのかがわからない。


何の魔法が使えるとか指定をしていなかったので、これが役に立つのかさえわからない。


これは失敗したな。


とりあえず杖を前にかざしてみる。何か言わないといけないのかな?


ファイア!!と叫んでみるが、何も起こる気配はない。


••••••どうやって使えばいいんだ?


魔法の杖をもらったとしても、使い方がわからなければただの杖だぞ。


さっきはファイアでダメだったから、次は••

「ウォーター!!」


ダメだ。


「サンダー!!」


何も起きる気配はない。


「メラ!!」

「イオナズン!!」

「パルプンテ!!」


俺は知っている魔法の名前を次々に叫んでみたが全く魔法が発動する事はなかった。


だんだんイライラして来て、杖を折ってしまおうとしたが、そんな腕力は俺にはない。

俺は文系の大学生だったのだから。


前回は何も持たずにこの世界に転生した事を考えると丈夫な杖を持っている事はマシではあるのだが。

それでは小鬼達にさえ勝てないだろう。


まずいぞ。まずい。

前回と一緒の運命を辿ってしまう!


「アイスランス!!」

「ソニックブーム!」

「ウインドカッター!」


俺は必死に思い浮かぶ魔法の名前を叫ぶ。




「ファイアボール!!」


ボッ!!!


っと音が出たかと思うとサッカーボール大の火の玉が前に飛んでいく。


まじか〜〜!!


で、出た!!火の玉がでた!!

やったぜ!!!!!!


魔法だ!!!!

魔法が使えたぞ!!


この魔法の杖はファイアボールの杖だったんだ!!


あの天使の女、ちゃんとした杖をくれたんだな。正直詐欺にあったのかと心配したけど優しい天使だったんだ。


今度会ったらお礼を言わないといけないな!!

いやいや、お礼を言う時は死んだ時だった。二度と会わないに越した事はない。


とりあえずファイアボールという攻撃魔法の定番とも言える魔法の杖を手に入れた。

しかもなかなか大きな火の玉が飛んでいくし、これはイケる!



違う魔法も使えるのだろうか?


と、更に色々試したが、結局ファイアボールしか使えない杖のようだ。


しかし、これで魔物が現れてもなんとかなるだろう。


ファイアボールの杖で魔物は倒せても、それだけでは生きては行けない。

やはりまずは人里を探そう。小鬼の村ではなく人間の村を探すんだ。


今度は草原を先ほどとは逆に歩いていく。逆に歩いているつもりだが、実際のところはわからない。どこもよく似た特徴のない草原だし。

しばらく歩くとやはりまた森にぶち当たった。

そして、森の中を進んでいると今度も沢山の人の足音が聞こえてきた。


しかし、前回の事もある。人の足音っぽいだけで人だと思っては行けない。

何が現れても対処できる様に、俺は音がする方に向かって杖を向けて待ち構えた。


かかってこい小鬼ども!と気合を入れる。


そして現れたのはやはり先ほどと同じ小鬼の集団だった。頭に小さなツノがある子供のような大きさの鬼である。


「ギェ〜〜!!」


小鬼達は俺を見つけるとまたしても棍棒を振り回しながら走ってきた。


しかし、今度の俺は一味違うぜ!!


「ファイアボール!!!」


そう唱えると杖の先から出た炎の玉が小鬼に向かって飛んでいく。


しかし小鬼共はその火の玉を簡単に避けてしまった。

奴はらそのまま走り込んでくる。


しまった!奴らは避ける事が出来るのか!!


「ファイアボール!!」


次の火の玉も小鬼には当たらない。


二発のファイアボールはどちらも当たらず、もう目前に小鬼の集団が来ていた。


先頭の小鬼が俺に棍棒を叩き付けてくる。

魔法を諦めて俺は杖で対抗するが、相手の数が多すぎた。


結局、肩、足、腹を棍棒で殴られ、俺は激痛で倒れ込んでしまう。


倒れた俺に群がる小鬼たち。至る所を棒で殴られ、身体中に走る痛み!!


一匹の小鬼の棒が俺の片目に刺さる。

「ウガー!!」


声にもならない声をあげる俺の口を目掛けて、更に棒が差し込まれた。


「ゴエッ、ヴ、ヴ、ヴ•••••」


俺は恐怖の中で意識を失った。



————-



目の前にまた天使紛いの女性がいる。


「あのね。こっちも暇じゃないの。1時間や2時間で帰ってこないでよ。」


「お、俺は、、、もう嫌だ!!

もう殴られたくない!!」


「ヘタレね。でも女神のルールは絶対です。貴方をそのまま転生させるのがルールです。」


「嫌だもう転生なんてしたくない!!」


「そんな事は許されません」


「じゃあ、もっと凄い魔法、10mくらいの火の玉出る魔法とか使わせろよ!!」


「また我儘を言うのですね。でも良いですよ。面倒臭いのでプレゼントします。

それでは、行ってらっしゃい。」


目の前が真っ白になる。

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