第2話 寝れなかった・・・
アティム大陸・どの国の領土にも属さない無主地・古き魔境の森
人族種を含む多くの種族が訪れた事のない古き魔境の森の奥地
真夜中から魔物の活動が活発化して、ソラシスが魔法で作った壁を攻撃された。フルティンの攻撃に壁は問題なく壁の役割を果たしていたが、フルティンの数が多く、その鳴き声が五月蠅くソラシスとクウは全く寝れなかったのだ。
仕方なく壁から打って出てクウと共にフルティンを殲滅したのだが・・・・・そのフルティンの血に誘われてオークにまだ一度も戦った事がないオーガにウルフ、コボルトにと多くの魔物に襲撃されたのであった。
「ああああああああ!!!鬱陶しい!!!」
既に魔物の襲撃は10回を超えソラシスとクウの一人と一匹は200以上の魔物を狩っていた。絶え間なく続く襲撃にソラシスとクウはイライラの限界を超えていた。
「クウ!木々に火が燃え移ってもいい!煉獄のプレスを使え!!!火は俺が後で消す!」
「キュー!」
クウはソラシスの言葉に答え煉獄のプレスを辺り一面に吹きかけた!そのブレスは凄まじく襲ってきた魔物たちを一瞬で丸焦げの炭に変えたのだった。
「クウのブレスはスゴイなぁ!体感温度が一気に10度近く上がったよな。さすが煉獄のブレスだな・・・これが鑑定の説明に書いてあった世界を八割焼いた炎かぁ!」
「キュ~♪キュ~♪」
クウは煉獄のブレスを思いっきり使えて満足しているな。かなり機嫌が良いようだ。
「クウ!こっちに来てくれ!炎を消すから!」
ソラシスは水の魔法を使用して人工の雨を周囲一帯に降らして、クウのブレスで燃えている木々の火を消したのだった。
「火は消えたが・・・・・焦げ臭いな。もうここでは寝られないな・・・・・。」
度重なる魔物の襲撃を迎え撃った為に仮拠点の周囲は臭くクウの煉獄のブレスである程度は炭と化したが、まだまだ魔物の死骸や血が辺りに散乱している。ソラシスは炭になってない魔物の死骸を指輪に回収していった。
「まだ暗いしな・・・今は何時ぐらいだろ?三時か四時か?時計が欲しいな。戦闘後で少し疲れてるから歩きたくないな・・・・・。」
「キュ~♪キュ~♪」
「クウは元気だな~」
クウはソラシスを見ながら
「キュー!」
まだまだ元気だよーって表情をしていた。
ソラシスが今後のことをクウを見ながら考えていると・・・
「ギィギィ!ギィギィ!」「ギィギィ!ギィギィ!」
再び二十体ほどのフルティンのゴブリンが現れた。
「またかよ・・・・・。」
「キュー!」
「クウ。炎系以外の魔法で戦ってくれ!」
クウはソラシスの顔を見て了解と言わんばかりに縦に一度首を振ってからゴブリンに突っ込んで行った。ソラシスも風の魔弾を製造して火縄銃に入れゴブリンに銃口を向け引き金を引くのだった。ゴブリンとの戦闘は五分とかからずに終了した。
ソラシスは、多分安かろうと思いつつも冒険者ギルドで売るためにゴブリンの死骸を指輪に収納していったのだった。
「クウ!!!もうこうなったら日が昇るまで魔物狩してレベルを上げよう!どっちが多く魔物を狩れるか勝負しようかぁー」
「キュキュ!」
了解と言わんばかりに短く頷いてから、すごい勢いで浮上して飛びだって行くクウ!
「あ!こら待てクウー卑怯だぞ!」
ソラシスはクウを追いかけ叫ぶのだった。
それから日が昇るまでの約三時間。一人と一匹はひたすら魔物狩をして、どちらが多く魔物を狩れるか競うのであった。
「クウが205匹かぁ・・・スゴイな。オークの巣を見つけたのがデカいな。」
クウはオークの巣を見つけ一匹でオークの巣を急襲して見事にオークを全て倒してしまったのだ。残念ながら上位種にオークキングは居なかったが凄まじい戦果である!
「俺はフルティンばかりだな・・・・・まあでも140匹も倒せたのは良かった。」
倒した魔物の回収を終えてクウを眺めるソラシス。クウはソラシスが用意した大盛りに盛られたオーク肉にかぶりついていた。
クウはオークにホワイトウルフやビッグスネークとゴブリン以外の戦闘が多かったが、ソラシスは逆にフルティンのゴブリンに遭遇する率が高くゴブリンとばかり戦う羽目になったのだった。
「しかしスゴイ食べっぷりだよな・・・何処に入るんだ?」
ソラシスは勝負の勝者へのご褒美にとクウの身体よりもデカい塊のオーク肉を焼いてあげたのだった。その肉に食らいつくクウは凄まじいスピードで食べているのだった。
そう言えばクウの特殊スキルに体のサイズを変更できるスキルがあったよな。
「クウ!オーク肉を食べ終えたらスキルで体を大きくしてくれ!できるかぁ?」
「キュ~♪キュ~♪」
肉を口に銜えながら上機嫌でソラシスを見て問題ないと応じるクウ。
そんなクウを見ながらソラシス自身も自分用に焼いたオーク肉一枚にかぶりつくのだった。
そして、食事を終えたソラシスとクウ。
ソラシスは水魔法を使って巨大な水の塊りを上空に浮かべてクウに見せる。
「クウ!これと同じ大きさになれるか?」
「キュー!」
問題ないと応じるクウは特殊スキルを使い10メートル程のサイズになった。
「おお!デカいなぁー!!!」
「キュ~♪キュ~♪」
ソラシスの言葉に上機嫌に答えるクウ。
昔なんかの記事でオオソリハシシギという鳥がアラスカからニュージーランドまでの距離1万2000キロ以上を11日間かけてノンストップで飛行したって話を聞いたな。
この古き魔境の森から西に3000キロ行った場所に街が在るんだよな。余裕を持って移動しても三日で行けそうだな。そうすると俺がクウにどうやって乗るかだよな・・・・・上空だと風の圧がすごいだろうし・・・確か高ければ高いほど寒くなるし空気が薄くなるんだったよな?魔法はイメージ想像だったよな。
自分の周りに風の魔法を使って薄い膜のようなものを展開してみるかな・・・まぁ、失敗したらしたで次を考えよう。
しかしデカいクウを見ると、まんまブルー〇イズだよなぁ~。まぁ、あっちはカッコいいドラゴンでクウは神秘的な感じがする白い猫だな。でもドラゴンなんだよな。
体もモフモフしてて気持ちよさそうだな。ちっさいクウは最高に手触りが良かった!ずっと触っていられる感触だよな。
「クウ!悪いが背中に俺を乗せて西に飛んでくれ!」
「キュ~♪キュ~♪」
ソラシスの言葉に機嫌よく応じるクウはソラシスの横で体を下げてしゃがみソラシスが乗りやすい体制をとるのだった。
「クウ!羽を掴んでもいいか?」
「キュ~♪キュ~♪」
ソラシスの言葉に問題ないと応じるクウ。ソラシスはクウの羽を掴んで
「おお!フワフワだぁ!手触り最高!!!」
クウの羽の感触が良くモフモフするソラシス。
「キュキュ!」
「あぁ、悪い悪いクウ!空を飛んでくれ!」
「キュー!」
ソラシスの言葉にクウは羽をバタつかせ空へと上昇するのだった。
クウは一気に上空2000メートル程の高さまで上がり
「すごい・・・・・。」
ソラシスは地平線まで木々に覆われて人工物が何一つない大自然に感動していた。
「そう言えば前世の地球では飛行機に乗ったことがなかったな・・・高い所に行ったのは東京にある東京タワーぐらいだったよな。しかし絶景だよなぁ~」
飛びながら器用にソラシスの方に顔を向けるクウに指示を出して空の移動を楽しむソラシスであった。
「風の魔法も無事に成功したようだな。風の圧を感じないな。相殺してる感じかな?」
一人つぶやくソラシス。
眺めがホントに良いよな。絶景絶景絶景って言葉しか浮かばないな。思えば前世は何処に行っても人、人、人だらけだったよな・・・まぁ俺自身が東京住まいだったのもあるが・・・こういう大自然も良いよな。トレビス王国のアーティファクトをぶっ壊して、報復対象の二人をぶっ殺したら、ここら辺に家を建てるのも良いかもな。そう言えば前世は全く旅行して・・・いや?一回も行ってないか・・・学生時代の修学旅行を数に入れなければ旅行に行ったことが無いな・・・・・。
今世は相棒のクウがいる!何処にでも行けそうだな!
そうだな・・・いろんな場所に行くのも良いかもな。いろんな場所を見て回るのも楽しそうだな。
「うん?なんだあれ?」
クウとソラシスの前方といってもかなり距離があるが・・・何かがこちらに向かって飛んできている。ソラシスは目を凝らして鑑定を発動させた。
鑑定
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
【名前】なし
【種族】ワイバーン族
【身分】なし
【性別】オス
【年齢】4
【階位】B
【レベル】79
【ライフ】7900/7900
【魔力】200/200
【スタミナ】B
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
【魔法】
【風の魔法】レベル5
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
【スキル】
【切れ味】レベル2
爪での攻撃時に爪の切れ味が増す
【叫喚】レベル2
自身よりレベルが低い存在を一瞬ひるませる
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
【特殊スキル】
なし
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
【称号】
なし
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
なるほど。
「ドラゴンもどきのワイバーンねぇー!クウ!少し高度を落としてこのまま真っ直ぐに飛んでくれ!ワイバーンは俺が倒す!!!」
「キュー!」
ワイバーンは今まで相手にしてきた魔物より強いだろうしライフも高いな。
フルティンに使用した風の魔弾で魔力10込めでは絶対に倒せないな。
ここは確実に仕留める為に魔力を1000込めた弾丸を五つ用意するか・・・
それでも初戦闘は心配だな。10000の魔力を込めた弾を保険で一発用意しとこうかな・・・・・。
ソラシスは魔弾を素早く製造して火縄銃にセットする。この火縄銃のスゴイ所はソラシスが製造した魔弾を火縄銃に近づけると勝手に吸収してくれる所だ。そして魔弾の種類ごと魔力量ごとに分けてセットしてくれるのだ。一度火縄銃に吸収された魔弾はセットした順番に関係なく発射できソラシスの好きな魔弾を発射できる優れ物だ。
ドラゴンもどきと呼ばれているワイバーン!然れども空の強者と冒険者に恐れられる存在である。その飛行スピードはとても速い。ワイバーンに天敵はとても少ない。
ワイバーンの天敵は、同族のワイバーンに縄張りが被るグリフォン、
そして正真正銘のドラゴン種である。
しかしドラゴン種とは滅多に争わない・・・いや一生に一度あるか?ぐらいだ。
ドラゴン種は個体数が少ないため遭遇事態少ないのだ。
彼(ワイバーン)は今日オークを仕留め一匹まるまる食べ尽くし上機嫌に空の散歩を楽しんでいた。彼は無敵だった。多くの魔物を仕留め同族との縄張り争いに勝利して今日も彼は上機嫌に縄張りを散歩していたのだった。
しかし彼は恐怖した・・・・・前方から来る存在に・・・・・。
距離が近づくにつれ彼の恐怖は増した・・・・・。勝てないと。
本能が囁く・に・げ・ろ・と
初めて体験する恐怖に彼は汗が滝のように流れ出て、
おじいちゃんになったのではと錯覚するほど彼はからからに干からびていた。
そして彼は瞳にその存在を捉えてしまった。
純白のドラゴンを・・・・・。
そして、そのドラゴンに乗る白髪の死神を・・・・・。
「ハゥ」
彼が最後に発したのは・・・何とも情けない一言だった。
「はぁ・・・・・?」
ワイバーンとの距離がドンドン縮まり火縄銃の銃口をワイバーンに向けるソラシス。
そろそろ射程距離に入り魔弾を発射しようと引き金を引こうとしたタイミングだった。ワイバーンが勝手に落下していったのだ。
戸惑うクウとソラシス。
そりゃそうだろう。何もしてないのに目の前でワイバーンが落下死して果てたのだから・・・・・。
「クウ!周りに強い魔物はいるか?」
クウはワイバーンが落下死した上空をグルグル回り周囲を警戒するが・・・・・。
ソラシスの方を見て首を横に振る。
「いないか・・・・・じゃあ?何で死んだんだろう?」
いや、まあ死因は落下死だろうけど・・・・・
考えても分からんな。はぁ~ワイバーンの死骸を回収するかな。
「クウ!ワイバーンの死体の傍に降りてくれ!」
「キュー!」
ソラシスの言葉でワイバーンの横に降り立つクウ。
ソラシスは落下死によりボロボロになったワイバーンを素早く回収して再び空に旅立つのだった。
「クウ!あと少し移動したらお昼ご飯にしよう!」
「キュ~♪キュ~♪」
ソラシスの言葉に上機嫌になり飛ぶスピードが速くなるクウであった。
ソラシスは上空を見て再び感動していた。
雲一つない青空はどこまでも青く澄んで美しかった。
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