第24話 せんべいが食べたくなる笑顔。

アティム大陸・ロマネスコ王国・辺境都市・シールド・マムの家


名も無き武器屋を後にして、ゴルドに案内されながら歩くソラシスは、周りの景色を見ながらゴルドの後に続いた。


相変わらず、移動中に嫌な視線を浴びるソラシスとクウであった。


(俺の思ってた異世界イメージと違って、いろんな店があるな…それに多いな。しかし…マジで鬱陶しい視線だな…襲ってこないのは近くにゴルドが居るからかな…?)


「ソラシス」

「宿屋に着いたのか?」

「いや、あと少しだが…あのスライムの看板の店はポーション類が安く買える店だぞ…まぁ、ソラシスには必要ないだろうけどなぁ…」


(へぇ~少し興味あるな…明日行ってみようかな…)


「まぁ、念のために数本ポーションを持っとくかな…明日行ってみるよ」

ゴルドは真剣な顔で頷き…

「冒険者には大切なことだぜ…万が一の際に準備で生死を分けるからな…」

「ゴルドたちは明日から依頼を受けて活動するのか?」

「いや、しばらく休むぞ。体を休めるのも大切だからな」

「なるほど…勉強になるな…」

「オレも新人の頃に先輩冒険者に教えてもらったんだよ…長く活動したいなら、休める時に休んで準備は怠るなってなぁ…」


それからも冒険者のあれやこれやを、ゴルドから聞きながら歩くソラシスであった。


「ソラシス、着いたぞ」

「ここかぁ…立派な建物だな」

(千と〇〇の神隠しで、千が働いていた湯屋にそっくりだな…)


「建物が古くなって最近、新しく立て直したんだよ」

「なるほどなぁ…ゴルド、世話になった。道案内ありがとう。あとは大丈夫だよ」

「おう。命の恩人だから気にするなよ。ソラシス、オレたち森の盾は、やすらぎ亭って宿屋に泊まっているから、何かあれば着てくれよ。場所はギルドで聞けば教えてくれるからな。……じゃあな」


「ああ、じゃあな」

「キュー」


ソラシスとクウは、ゴルドが角を曲がるまで見送り…


「さてと…中に入るかな」


ソラシスが店の扉を開けると


「いらっしゃいませ。マムの家へようこそ。おかみのマーガレットと申します」

深々とお辞儀をする宿屋のおかみさん。


ソラシスの第一印象は……


(ぽたぽた焼きのせんべいの…おばあちゃんにそっくりだな。ああ、食べたくなってきた…この世界には無いだろうなぁ…しょうゆ煎餅…)


「部屋空いてますか?」

おばあちゃんは、ソラシスが抱っこしているクウに一瞬驚くも、直ぐに笑顔になり…


「はい。空いていますよ。お泊りでしょうかね?」

(その笑顔…せんべいが食べたくなる笑顔だな…)


「クウ、俺の従魔と同じ部屋にしてほしい」

「一泊二食付きで大銀貨1枚になります。従魔は一泊二食付きで銀貨5枚になります。そのサイズでしたら従魔用の小屋ではなく、ご一緒で大丈夫ですよ」

「取り敢えず、三日泊まるよ…延長も可能ですか?」

「はい。大丈夫ですよ。では、大銀貨4枚と銀貨5枚になります」


ソラシスは頷き、テーブルに金貨をおいた。

「はい、こちらがお釣りになります」

ソラシスは、煎餅のおばちゃんからお釣りを受け取って…

「メシは直ぐに食べれるのか?」

「はい、直ぐにご用意できます。一階の食堂でお食べになりますか?お部屋でもお食事は可能ですよ」


(食堂に興味はあるが…視線が鬱陶しそうだなぁ…今日は部屋で食べようかな)


「部屋に運んでくれ、それとクウにも同じ物を頼む。追加料金はいるか?」

「同じお食事ですね。追加料金は不要ですよ。では、お部屋に案内をさせますね。アンナちゃん、こちらに来なさい」


煎餅おばあちゃんに呼ばれ

「はーい!」

(元気がいい声だな…)


アンナはクウを見て…

「かわいい~」

「“コラ”、アンナちゃん。お客様にご挨拶しなさい」

「おかみさん、すいません」


アンナは素早く、おかみとソラシスに頭を下げた…


アンナはソラシスを見て

「お客様。いらっしゃいませ~」

(金髪の似合う可愛らしい子だな…高校生くらいかな…?)


「アンナちゃん。お客様をお部屋にお連れしなさい」

「はーい。お客様、お部屋に案内しますので、私に付いて来てください~」


ソラシスは無言で頷き、アンナの後に続いた。



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