第45話 その名は、カラー

アティム大陸・ロマネスコ王国・辺境都市・シールド・スラム街


建物の裏手にクウを迎えに行ったら、クウの周りに六人の人間が倒れていた。


「クウ!こいつ等…クウを襲ってきた奴等か?」

「キュ!」

その通りと言わんばかりに首を上下に動かすクウ。

「なるほど。よくやった!」

「キュ~♪キュ~♪」

「全員…似たような格好だな…」


ソラシスは、一人ひとりから金目の物を剥ぎ取り指輪に収納していった。

(三途の川の奪衣婆も…こんな感じで剥ぎ取るのかな…)


全員の剥ぎ取りを終えたソラシスは、クウを抱き上げて、スラム街を移動して行った。


スラム街を暫く歩いていると…

「キュキュキュキュー!」

「どうしたクウ?」

ソラシスの瞳を見つめて…

「キュキュキュ!」

「なるほど…腹が減ったんだな。俺も腹ペコだよ…」


(指輪から何か出すかな…なんか、いい匂いがする店があれば、入ろうかな…)


指輪からオークの肉が挟まったパンを取り出して、クウに食べさせながら、

ソラシスは、とぼとぼと歩いていた。


暫くして、スラム街を抜けたのだが…

(やけに人が多いな…何かあったのかな?)


あちこちで…4、5人で集まり何かを喋っている…


(見回りの警備兵も多いんだな。それに騎士の姿もチラホラ見かけるな…事件か何かあったのかな?まぁ、いいか俺には関係ないしな…)


「お!」

「キュ!」

ソラシスとクウが同時に…とても美味そうな匂いに反応したのだ。

「いい匂いだな…」

「キュ!」

同意するクウ。


その匂いに誘われて…

(懐かしいなぁ~このタイプの屋台は、この世界で初めて見たな)


屋台のオヤジは、こちらを見ずに声をかけてきた。

「うまいよ~!高いよ~めちゃ最高だよ~」

(なんだ…このオヤジは……)

「一人と一匹だが、いいか?」

「ん?一匹…お、おう、兄ちゃんにドラゴンだな…いいぜ!」

こちらを見て少し驚いたみたいだが、オヤジは再び鍋に視線を戻したのだ。


ソラシスは、屋台の前に置いてある椅子に腰かけて、目の前の鍋を見る。

(これ?カレーかぁ?見た感じは、カレーそっくりだよな…匂いも独特な匂いがするしな…)


「オヤジ…これ?なんて食べ物なんだ?」

「これか?カラーって食べ物だぜ!はぅはぅするぜ!」

(カレーじゃないのか…まぁ、一回試そう…)

「2つくれ」

「銀貨8枚な!」

(マジかよ…カレーもどき一つに…4万円…)

少し悩んだが、ソラシスは銀貨をオヤジに支払ったのだ。

「まいどーちょいと待ってなよー」


オヤジは金を受け取ると、目の前の鍋から2人分のカラーを取り出して、鉄板にぶちまけたのだ。辺りには独特な香ばしい匂いが充満する。


鉄板で焼かれるカラーにバターを大量に投入している。

「オヤジ…それバターかぁ?」

「おうよー!これを大量に入れるから高いんだぜ!」

(バターあるのか…初めて見たな。他の屋台では見なかったな…)

「いい匂いだな…」

「もう少し待ってな」

そう言いオヤジは、次にパンを鉄板に乗せて、そこにも大量のバターを投入していた。


(もう…これ…バターって食い物じゃないのか?さっきから…ひたすらバターが投入されているぞ…)



「はいよーお待ち!」

ソラシスとクウの前に木の大皿が置かれた。バターまみれのデカいパンが一つとカラーがたっぷりとよそってある。


「クウ…食べようか…頂きます」

「キュ!」


ソラシスは、パンにカラーを付けて…口に運んだが…

「カラー!!!オヤジー水くれ!」

「どうだ!はぅはぅするだろ?」

「なんだよ…これ…辛すぎだろ…」

「キュキュ~♪」

「マジかよ…クウ、美味しいのか?」

「キュ~♪」

(辛党なのかな…俺は苦手だな)

「味が分かるドラゴンだぜ!坊主、甘味水を置いとくぜ!銅貨5枚なぁ!」

「ああ、銅貨5枚ねぇ…」


その後、残りのカラーをクウにあげたソラシスは、甘味水を飲み口直しをして屋台を後にした。





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