第46話 領主ギルバート

アティム大陸・ロマネスコ王国・辺境都市・シールド・マムの家


カレーもどきの店を後にしたソラシスは、他の屋台には寄らずに宿屋に向かった。


「やっと宿に着いた。疲れたな…」

美味しい物を食べて満足したのか、クウはソラシスに抱っこされ眠っている。


宿屋の門には…いつも以上に人が立っていた。

「お帰りなさいませ~」

門の警備に部屋の鍵を見せ無事に門を通ったソラシス。


宿の扉を開けて中に入り…

「あ!ソラシスさま。お帰りなさいませ~♪」

ソラシスを出迎えたのは、宿屋の夜勤勤務メルルちゃん。

「やぁ、メルルちゃん。ただいまー」

「ソラシスさま。お食事はどうなさいますか?」

「夜中でも食べれるのか?」

「はい。問題ございません」

(そう言えば…煎餅おばあちゃんに、そんな説明を受けてたな…)

「なら、部屋に運んでくれる?」

「承知いたしました~♪」

メルルちゃんのメロンを少し鑑賞して、満足したソラシスは自身の部屋に向かったのである。


(自分の家じゃないが…落ち着くな…いずれ自分の家が欲しいな…)


ソファーに座り寛いでいると…


部屋をノックされ…

「お食事をお持ちしました~」

入室の許可をすると…

部屋に入りテキパキと料理をテーブルに並べていくメルルちゃんの動きは、とても素晴らしかった。大満足のソラシスであった。


「メルルちゃん。ありがとう」

「それでは、ごゆっくりお召し上がりください~♪」

お辞儀をして部屋を出て行くメルルちゃんを見送り…


「いい匂いだな…」

「キュ~♪」

「なんだ…クウ…寝てたんじゃないのか?」

「キュキュ!」

抗議の声を上げるクウ。

「屋台で食べただろ?」

「キュキュ!」

ソラシスを見つめるクウ。

「分かったよ。一緒に食べよう…頂きます」

「キュ~♪」


(匂いで目を覚ますとは、食いしん坊だな…)


食事を終えたソラシスとクウは、部屋に備え付けの風呂に湯を張り、ゆっくりと風呂を楽しむのだった。



時は少し戻り…

「なるほど…厄介だな…」

渋い顔をして、ギルド長ミルクから報告を受けているのは、この都市シールドの領主であるギルバート・フォン・シールドである。


「街中で起きた大量殺人…死んでいた者が賞金首だと直ぐに分かったから…いいが…誰の犯行かは不明のまま…」

「無理もないわよ…ギルバート。今日起きた事件よ…ここまで直ぐに分かったのは奇跡なくらいだわ…」

「騎士に警備兵…冒険者を大勢動員したんだ…これくらい直ぐに調べらるのは当り前よ…まぁ、手を焼いていた連中が死んでくれて、儂としては喜ばしい出来事だがな」


領主のギルバートは、昔馴染みのミルクと定期的に情報交換をしているのだ。


夜も深まり…そろそろ話を終えようとした時だった。


いきなり…凄まじい光が部屋を明るく照らしたのだ。

あまりの眩しさに二人は目を閉じて…

「なんだ!」

「え!」

突然の出来事に固まる二人…

「領主さまー!!!」

家臣の一人が部屋に飛び込んできた。

「いったい…何が起きている!?」

「そ、外をご覧くださいー」

家臣の叫び声にミルクと共にバルコニーに飛び出すギルバート。

「なんだ…あの光の柱は…」

「ギルバート!直ぐにあの場所に騎士を派遣して!私もギルドに戻って、何人か送るわ!」

「ああ、分かった…」

まだ、唖然としてるギルバートは…それ以外に言葉が出なかったのだ。

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