第47話 その門番に刻まれた恐怖の体験

アティム大陸・ロマネスコ王国・辺境都市・シールド・マムの家


この世界に来て初めて風呂に湯を張って、のんびりと入浴を楽しんだソラシスは、ふかふかのベッドで熟睡して昨夜の疲れを癒したのだ。


気分爽快に目覚めたソラシスは、部屋に運んでもらった朝食をのんびりと食べ、暫くソファーで寝転がり本日の予定を考えていた。


(少し買い物をしてから、森に行こうかな…)


二時間近くソファーでゴロゴロ過ごしたソラシスは、一階フロントでチェックアウトを済ませ宿屋を後にした。


(高いが良い宿屋だったな。森から戻ったら…また、泊まろう)


宿屋を出て大通りを歩くソラシスは…


(なんか…警備兵と騎士の見回りが多いな…事件でもあったのか?)


気になったソラシスだが、屋台から漂う食欲を刺激する匂いにつられて…


「おねえさん…それ二つください!」

「銅貨6枚だよー」

お金を支払い串に刺さった肉を受取り…

「いい匂いだね」

「我が家の自慢の秘伝のタレをたっぷりと塗ってあるからね!」

おねえさんの話を聞きながら串にかぶりつくソラシスとクウ。

「うまい!!!」

「キュ!!!」

その言葉に満面の笑みを浮かべる屋台の女店主。


また来ますと店主に伝え屋台を後にした。


その後、パン屋に立ち寄り

「おっちゃん、このパンいくらだ?」

ソラシスの前には、前世のメロンパン程のサイズの黒パンが並べられていた。

「1つ銅貨2枚だよ」


(肉を挟むパンが欲しいが、これ…うまいのか?)


「取り敢えず、一つくれ」

「はいよ」

銅貨を支払い黒パンを受取ったソラシスは、黒パンを半分に切ってクウに渡した。


黒パンを食べながら歩くソラシスは…

「ないな…マズい…」

クウを見るがクウも渋い表情をしていた。


(このパンはダメだな。なんかジャリジャリするし…少し臭い)


渋い顔の一人と一匹は、メインの大通りを門に向かって歩いて行く。


門へと続く道は、馬車に人にと往来が激しく活気に満ちていた。


「これに並ぶのか…」

ソラシスの前には、外に出る為の長い行列ができていた。


仕方ないと…深いため息をついたソラシスは、列の最後尾に並んだのだが…


(鬱陶しい視線だな…)

ねっとりとした視線があちこちから突き刺さり、イライラしながら行列に並ぶのだった。


列に並び一時間が経過して、ようやくソラシスとクウの番になったのだ。


門番はソラシスとクウを見て顔を青ざめた。

「み、身分証明をお見せください」

門番の指示に頷き、冒険者のギルドカードとクウのカードの二枚を門番に渡した。


門番は素早く二枚のカードを確認して、即カードを返却したのだ。


「通っていいのか?」

「はい。どうぞお通りくださいませ」

無言で頷いて門をくぐったソラシスとクウを見送る門番は安堵の表情をしていた。


周りに居る門番の同僚は、無愛想で仕事が粗い仲間の変わりように驚きの表情を浮かべていた。


ソラシスは全く気がついてないが…この門番は、ソラシスが初めてシールドに訪れた時に貴族専用の門を守っていた一人である。その時の体験が忘れられずに…ソラシスの顔を見て顔を青ざめたのだった。









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