第3話 空の旅人

アティム大陸・どの国の領土にも属さない無主地・古き魔境の森


人族種を含む多くの種族が訪れた事のない古き魔境の森の奥地


雲一つない青空を眺めながら空の旅を楽しむソラシス。

澄んで綺麗な青空をずっと眺めているがソラシスは全然飽きなかった。


「キュー!」

クウの鳴き声にソラシスは空から地上に目を遣る

「あれは湖かぁ?デカいな・・・琵琶湖よりデカい。」

前世で観たTV番組の鳥人間コンテストが琵琶湖で開催されていたよな。

俺は琵琶湖に行ったことが無かったけどTV番組で観て少し気になったから、

ネット検索で琵琶湖全体の画像を見たりYouTubeで琵琶湖の動画を観たりしたな・・・


「これだけデカい湖だとネッシーが数頭いそうだな・・・・・。」

よくTV特番で放送してたよな。日本にはイッシーがいたらしいが・・・。

まぁ、この世界にはリアルに魔物がいるからな。

ネス湖より琵琶湖の方が遥かにデカいと知ったときは驚いたな。

懐かしい思い出だな。


「クウ。あそこの湖の近くに降りてくれ!お昼ご飯を食べよう!」

「キュ~♪キュ~♪」

ソラシスの言葉に上機嫌に答えるクウ。

クウは湖の近くの開けた場所を見つけ降り立つのだった。


「クウ。ほら焼けたぞ」

クウはソラシスから焼けたオークの肉を貰い勢いよく頬張り食べる。

現在のクウはスキルを解除しており小さいクウに戻っている。


ソラシスも焼いたオーク肉を食べるのだが

「そろそろ肉以外の食べ物を食べたいな・・・・・。」

あぁ、肉を刺す枝が今回の分で無くなったな・・・めんどいが補充しないとな。

「クウ。肉が食べ終わったら肉を刺す枝を森に探しに行くぞ!」

「キュー!」

「元気だな。」

「キュ~♪キュ~♪」


ソラシスとクウは10分ほど休憩してから森に探索に入った。

「クウ。周囲の警戒を頼む!魔物が近くに居たら教えてくれ」

「キュー!」

ソラシスの言葉に任せてと応じるクウ。


森に入り適当に枝木を拾い集めること約10分

「あれは何だろう?」

20メートルほど先の木の下にソフトボールぽい何かが落ちていた。

ソラシスは近づいて鑑定を発動した。


鑑定

ナーシィーの実

ランクC

食用・みずみずしい甘い果実


「ナーシィーの実ねぇ~見た目ソフトボールだな。」

ソラシスはブラックドラゴンのローブでナーシィー実を軽く磨き

「あまぁ~い!」

むしゃむしゃとナーシィーの実にかぶりつくソラシス。

「キュー!キュー!キュー!」

そんなソラシスに抗議の声を上げるクウ。

「あぁ、ごめんごめんクウ。」

ソラシスは半分程になったナーシィーの実をクウに渡した。

「キュ~♪キュ~♪」

はじめて甘い食べ物を口にしたクウは今までにないほど上機嫌になり

「キュ~♪キュ~♪キュ~♪キュ~♪」

「すごく機嫌が良いな~クウ」

「キュ~♪」

即答で答えるクウ

「よし!クウ。今からナーシィーの実を収穫しよう!ほらクウ上を見てごらん」

クウが上を向いて見てみると・・・

周囲の木々にはナーシィーの実がどっさり実っていたのだ。

「キュー!!!!!!」

嬉しさのあまり雄たけびを上げるクウ。


ソラシスとクウは知る由もなかったが、クウが興奮して上げた雄たけびで、

周囲に居た魔物たちが一斉に強者の咆哮に恐怖パニックを起こし逃げ出したのだ。

もちろん例外もいるが・・・その代表格はフルティンの憎めないおっさんである。


「クウ。魔力を抑えた風の魔法でナーシィーの実を下に落としてくれ!俺は下でナーシィーの実を回収して指輪に収納する!実にキズをつけたらダメだぞ。できるかクウ?」

「キュー!!!!!!」

再び雄たけびを上げるクウはソラシスの瞳を見て問題ないと頷く

「よし!ナーシィーの実の回収を始めよう!」


それから約三時間

一人と一匹はひたすらナーシィーの実を回収していった。

そして、ナーシィーの実を収穫している途中でヨーギィーの葉という回復ポーション製造に必要な葉っぱの群生地を見つけて、その葉っぱを九割ほど回収するのだった。


ちなみにヨーギィーの葉の鑑定は

鑑定

ヨーギィーの葉

ランク B

個体によりランクが変わる

ライフを回復する。

葉に宿る魔力量により体の異常を緩和する。

葉に宿る魔力量で作れるポーションの等級が変わる。

あらゆる状態異常に効く万能薬。

そのままの葉の状態でも使用可能。


「クウ。少し休憩しよう!」

ソラシスとクウは森から出て少し開けは場所に移動した。

「しかし綺麗な湖だな」

ソラシスとクウの場所からは透き通る湖が見渡せた。

ソラシスは10分ほど湖を眺めた後に土魔法を発動して、

分厚い土壁を四方に展開して即席の休憩スペースを作り上げた

「クウ。少しこの中で休もう」

ソラシスは先ほど回収したナーシィーの実を一つクウに与え、

自身もナーシィーの実を指輪から一つ出して実にかぶりつくのだった。

ソラシスは実にかぶりつきながらクウの方を見ると、

クウは上機嫌にナーシィーの実にかぶりついていた。甘い物が気に入ったんだろう。


収穫成果

ナーシィーの実

ランクC 2000個

ヨーギィーの葉

ランクA 7枚

ランクB 30枚

ランクC 150枚

ランクD 1000枚


以上が一人と一匹の収穫成果である。


昨日とは打って変わってソラシスとクウがいる湖の近くは現在とてもとても静かで、かなり遠くに何らかの魔物の雄たけびが辛うじて聞こえるかな?ぐらいに湖の近くは静まり返っていた・・・・・。


その原因は言うまでもなくクウの喜びの雄たけびの咆哮であった。

ソラシスとクウは静まり返った湖で、

疲れがたまっていたのか、ぐっすり眠ってしまったのだった。


ソラシスは太陽の眩しさと土のゴツゴツとした不快な感触で目を覚ました。

横を見るとクウは既に起きていてネコのように丸まっていた。


「しまった・・・爆睡してしまったな。夜中ずっと周囲を警戒してくれたのか?悪かったな。でも助かった!クウありがとう~」

「キュ~♪」

クウは問題ないと応じる。

「よし!夜飯食べてないから朝飯はガッツリ食べよう!」

「キュー!」


ソラシスは手慣れた手つきで素早くオーク肉を焼いて、昨日採取した大きな葉っぱの上に塊のオーク肉とナーシィーの実を3つクウの前に置いた。

「キュ~!?」

ソラシス見つめるクウ

「クウ。今日は少し頑張って飛んでくれるか?明日か明後日には街に着きたい。街に着いたら塩やその他の香辛料が買えるはずだ!それを使って料理すればオークの肉が、今食べている物よりも美味しくなるはずだ!」

「キュー!!!!!?」

クウは瞳孔が完全に開き

「キュー!!!!!!」

凄まじい咆哮を上げた。


このハイテンションのクウの咆哮が・・・

これからソラシスとクウが向かう辺境に一つしかない辺境の都市シールドの

冒険者ギルドに若干の混乱をもたらすのである。



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