第42話 水攻め

アティム大陸・ロマネスコ王国・辺境都市・シールド・暗殺ギルド隠れ家


リーダー格の男が扉を開けようとしたが…


ガタガタガタガタガタガ…………。


隠れ家に入った時には、普通に開いた扉だったが…


「どうしたすぅ?」

「扉が開かない…」

「フレットさん!窓が塞がってます!」

部下の一人に名前を呼ばれた、リーダー格の男は…

「誰かぁー!二階の窓を見てこい!」

その言葉に階段の近くに居た部下の一人が階段を駆け上がっていく。


「おい!お前!その斧で扉を破壊しろ!」

「了解すぅ!」

若い構成員は、自身の愛用の斧を振りかぶって…扉に叩きつけたのだが…


木材で作られた扉は、いとも簡単に破壊できた……だが……


「なんすぅか…これ…壁?」

若い構成員は、壁の出現に困惑するのだった。


「おい!その壁も斧で破壊しろ!」

「了解すぅ!」

再び斧を振り下ろすが…

「……そんな!」


壁はビクともせず…無傷だった。


逆に斧の刃先が少し欠けてしまったのだ…


「フレットさーん!」

二階を見に行かせた部下が慌てて一階に降りてきた…

「二階にある全ての窓がぁ……か、か、壁で塞がってましたー」


部下の報告を受けたフラットは…

「一体何が起きて…」


水だ!!!!!!


誰かの叫び声が聞こえたのと同時に…


二階の階段から、大量の水が流れて来ていた。


「なあ!?」

意味不明の現象に一瞬思考が停止したフラットだが…

「おい!お前ら!壁を壊せ!壁を壊して外に出るぞ!」

フレットの大声に動揺していた部下たちは、少し落ち着きを取り戻し…


各々に壁に攻撃を加えるのだが、壁はビクともせず…

「くそぉ!なんでー壊れないんだー」

部下の一人が絶叫しながら…剣を壁に叩きつけていた。


既に水は腰の辺りまで来ており、徐々に身動きが困難になっていた。

「一体なんなんだー!!!」

大声を上げるフレットだが……


水の勢いは…強いまま…ドンドン二階から流れて来ていたのだ…


部下の一人が堪らずに、二階に上がろうとするも、水の勢いが強すぎて、階段途中で押し流されていたのだ。


水は既に肩まで来ており…次々に部下たちは、水に沈んでいったのだった。


「そんなぁ~母ちゃん~死にたくないっす」

裏の世界で名の知れた若手の暗殺者の男も…水の底に消えていった…


「バカな…一体何なんだよ…」

そこ言葉を最後に…リーダー格の男も水の底に消えていくのだった。



「ふぅ~水の魔法に壁と土の強化魔法…同時に使うのは初めてだったけど、上手く使えたな」


そう言い残して…白髪の男は、その場を後にした。


魔法を解除した事により、建物内から大量の水が流れ出て来て、周囲一帯の住人たちは、一時パニックに陥るも…警備兵に騎士に冒険者ギルドからの援軍が現地に到着して、騒動は落ち着いたのだ。


建物内に入った騎士と警備兵は、建物内に多くの死亡者がいる事に眉をひそめるも…


事件の早期解決を目指す騎士団がメインで動き出して、数名が指名手配をされていた者だと判明して騒ぎになり、騎士団の要請で冒険者ギルドも協力したことにより、建物内での死亡者が暗殺ギルドの関係者だと判明したのだ。


だが…調べが付いたのは、ここまでで、一体誰が何の目的で暗殺ギルドの関係者を殺害したのかは、謎のままで終わったのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る