第11話 白いモフモフと黒いモフモフ?

アティム大陸・どの国の領土にも属さない無主地・古き魔境の森


「・・・・・。」

ソラシスの挨拶に啞然とする、森と盾のメンバーたち。


「えっと・・・・・初めまして、俺はソラ・・・」

ソラシスの言葉を遮り

「ああ、すまない。オレは冒険者のゴルド。こいつがローズ、エルフ族のミントに、熊族のクマキチだぁ。この四人で森と盾っていう、パーティーを組んでいる。オークの集団から、助けてくれて感謝する。ありがとう。」

そう言って、森の盾のメンバーたちは、頭を下げてきた。


マッチョ男、いい奴そうだなぁ。

ローズって人、初めて見たな、ピンク髪の人。


「いやぁ、助けれて良かったです。それで・・・ケガの治療は必要ですか?」

「正直助かる。もう手持ちのポーションが無いんだ。もちろん、お金は払う」


「分かりました。っと、その前に、北の方角にオークの一部が向かったのですが、そちらに街とかってありますか?」

「ん?北は森を抜けたら、山ばかりで、町も村も無いぞ。」

「なら、そっちのオークは放置でいいかな。それじゃあ治療を始めます」

「ん?ポーションでは・・・・・・」

ゴルドの言葉を遮り、ソラシスは治療魔法を発動した。

「魔法はイメージ。エリアヒール。キズよ完全に癒えよ」


ソラシスが魔法を発動すると、忽ち森と盾のメンバーたちの、キズが消え、体力も回復して、完全復活したのだった。


「うそやろ・・・無詠唱で・・・しかも、完全回復・・・・・。」

「すごいべ・・・おら元気モリモリ」

「これ程の治療魔法を使える人を、わたし、見たことないわ・・・」

「おいおいおいおいおい・・・さっきまで、しんどかった身体がビンビンするぞ!」

男二人は、ハイテンションに、女二人は、呆然としている。

しかし、クマ男のリアル獣耳・・・美少女の方を見たかった。

エルフ族のミントって女は、まさに美形だな・・・のじゃエルフは・・・いるのかな?


「キズの具合はどうですか?」


「ああ、すごい!オレは問題ない。助かった!いくら払えばいい?」

「ウチもええよ~お兄さん。すごいね~」

「わたしも大丈夫よぉ。イケメン君。ありがとう~」

「オラは元気いっぱい!」


「問題ないなら良かった。お金はいらないので、街まで案内してほしい、この国に来たのは初めてで、場所が分からないんだ」

「そんなんでいいのか?案内なら問題ない、この森を抜けて、西の方角に四日歩けば、ロマネスコ王国の辺境都市シールドって都市がある」


なるほど。ロマネスコ王国って名前なのね。


「あの~お兄さん。あの白いドラゴンは、エンシェントフェアリードラゴンですか?」


ん?・・・クウは有名なのかな?とりあえず、無難に答えよ。

「ミントさんだっけ?クウは白いドラゴンですよ。種族名は知らないですね」

「はぁ!アンタ!ああ、すまん。ソラシスさん、白いドラゴンは、エンシェントフェアリードラゴンしかいないぜ!」

「大陸を焼き尽くした後に、神の住まう世界に帰ったと、伝わってますわよ・・・」

「お兄さん。おとぎ話で有名やよ~?」

「えぇっ!そうなの・・・おとぎ話、読んだことない・・・・・」

いや、知らねえよ・・・・・マジかよ。


「お兄さんは、どこの国の出身なの~?」

「コラァ!ミント!出身を聞くのは、マナー違反だぞ」

ゴルドがミントに大声で注意した。

「ごめんなさい」

ソラシスに頭を下げ、謝罪するミント。

「いやぁ、別にいいですよ。問題ないので、頭を上げてください。ミントさん。」

なるほど。出身を相手に聞くのは、マナー違反なのね。

「お兄さん。ありがとう~ウチのことは、呼び捨てでええよ。」

「なら、俺も呼び捨てで大丈夫です」

「オレたちも、呼び捨てで構わない」



「実は自分が、どこの国の出身か分からないんですよ。自分が二歳の時に行商人をしていた両親が亡くなったと、育ててくれた祖母から聞きました。祖母は元冒険者だったらしいのですが、仲間に裏切られて、祖父を殺されたらしく、かなりの人間不信に陥り・・・人里離れた、かなりの山奥で、祖母と二人で暮らしていたんですよ。なので困ったことに、自分も他人と喋るのが、これで二回目なんです。正直言って、常識がよく分からない・・・祖母の事が心配で、ずっと一緒に暮らしていたのですが、祖母も半年目に老衰で亡くなったので、心機一転、クウと旅に出てきたんです。」


ソラシスは一旦、話を止めて、

「クウ!スキルを解除して、こっちに来てくれ!」

「キュー!」

ソラシスに呼ばれたクウは、スキルを解除して、ソラシスの頭に着地したのだ。

「重い・・・」

ソラシスはクウを頭から降ろして、抱き抱えたのだ。

「きゃー、かわいい~!」

ローズが叫び!

「お兄さん。うちにも、さわらせてぇ~」

やはり、白いモフモフは正義なのかぁ・・・・・


ソラシスは・・・何となく、ミントの隣にいる、黒いモフモフのおっさんを見た。

かわいいは正義らしいと、心の中で思ったソラシスであった。


「クウ、あの二人がクウを触りたいらしい、どーする?」

「キュキュ」

「別に構わないと、クウは言っているよ。やさしく触るならいいよ!」

その言葉を聞いた二人は・・・

「「きゃー!!!やったー!」」

同時に同じ言葉を叫んだのだ・・・・・。


ソラシスは、いちばん近くに居た、ミントに近づいて、クウを手渡したのだ。

「きゃー!モフモフやわ~気持ちええよ~」

ミントは、だらしない顔でクウを撫でまわしていた。

「ミント!ずるいわよ!ワタシにも代わってよぉ~」

そんなミントの顔を見た、ローズは待ちきれなくなったらしい。

ローズはミントに抱っこされているクウの頭を、やさしく撫でたのだった。

「す、すごいわ~モフモフ・・・・・」

自分の世界に旅立ったローズであった。


ゴルドはクウを触りたいのか・・・・・チラチラとクウを見ている。

クマキチは、動物の本能かぁ?クウが近くに来て、固まっている。


ソラシスは、そんな森と盾のメンバーたちを見て、

「話が進まないので、このまま話しますね。」

「メンバーたちが、すまんな。」

「別に構いませんよ。祖母が亡くなる少し前に、自分にこれをくれたんです。」

そう言って、ソラシスは右手を掲げて、指にはめている指輪を見せたのだ。


指輪を見せながら、話を続けるソラシス。

「指輪を自分に手渡すと、祖母は亡くなりました。そして、この指輪の中にタマゴが入っていて、最初は食べようとしたんだけど、殻が硬くて割れず、食べるのを止めて、なんとなく温めてみたら、タマゴが動いたので、しばらくの間、温めていたんです。そしたらクウが生まれたんですよ!!!なぁ、クウ!」

「キュー!」

ソラシスの言葉に答えるクウ。

「きゃー、かわいい~!!!」

クウはミントの手から離れ、ソラシスの元に戻って行った。

「ああ、」

「クウちゃん・・・」

残念がるローズとミント


「まぁ、俺とクウの説明は、こんな感じですね・・・」

架空の祖母ストーリーを思い付きで、作り上げたソラシスであった。






  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る