『ローズ・デイルの話②』
あの二人――マリー・アルメイダとジール・カンタレラを目撃してから、数日が経ったある日のこと。またまた風の噂で聞いた話だが、マリー・アルメイダとジール・カンタレラは別れたらしい。……なんでも、マリー・アルメイダが浮気したとか何とか……
そして今現在、マリー・アルメイダは破滅状態にあるらしく、令嬢たちの格好の餌食になっているらしい。……まぁ、別に可哀想だとか思わないし、関係ないんだけどね。
だけども、私はほっとした。何にほっとしたのだろうか。自分にも良く分からなかった。……ただ、一つ言えることは、私の中にあったドス黒い何かが消えたことだけだった。
性格が悪い、と言われるかもしれないがスッキリしたし。だからといって、ざまあみろ、なんて気持ちは全くない。だって、所詮他人だし。なら、何故こんなにホッとしているのだろう。……やっぱりよく分からない。
そして今日もまた、いつものように中庭を歩いている時のことだった。
「ジール様。お疲れ様です」
中庭からそんな声が聞こえ、思わず私は透明魔法を発動させた。無意識のうちに発動していた。……所謂、バニッシュというやつだ。
透明になった私は、そっと茂みに隠れて様子を見る。そこには、ジール・カンタレラと――。
「(………彼女は確か……カトリーヌ・エルノー?……あぁ、そういう事か)」
そう。そこに居たのは、レオナルド・オルコットの元婚約者であるカトリーヌ・エルノーとジール・カンタレラ。二人は楽しそうに会話をしていた。その光景にまたチクリと胸が痛んで――。
「なにあいつら……近寄りすぎじゃ……はっ!違う!あんな女のことなんて……!」
そんな男の声が聞こえてくる。ふと見れば、そこには一人の男子生徒が立っていた。確か……この男は……
「(クラウス・ファンタナーだっけ?)」
よく知らないし、興味もないのだが、マリー・アルメイダの元婚約者ということを聞いたことがある。それ以上は知らない。だって興味ないし。
しかし、
「(…………やっぱりまだモヤモヤする……)」
この気持ちは、一体何なのだろう。彼が誰かと一緒にいたらモヤモヤするし、彼の周りにいる女子たちが彼を見ていたり話しかけていたりするのを見るとイラつく。
どうしてこんな気持ちになるのだろう?……よく分からない。でも、誰かに相談する人なんて誰もいない。めちゃくちゃ悲しいことを言っているのは自覚しているが、本当に誰にも相談できないのだ。
「(このモヤモヤとイラつきってなんなんだろ……?)」
そう思って頭を抱えながら悶々と考えていく。でも、何もわからなくて。結局気づいた時にはジール・カンタレラも、クラウス・ファンタナーも、カトリーヌ・エルノーもいなくなっていた。
どうやら、バニッシュをしてから大分、時間が経っていたらしく。もうすぐで午後の授業が始まる時間だ。
私は透明魔法を解いて、慌てて教室へ戻った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます