『マリー・アルメイダのその後の話②』
恋というのは、本当に突然やってくる。
……私は、クリストフくんに恋をしている。プライドなんてちっぽけなものなんて捨てて、彼に告白してしまいたい。そう思ってしまうくらい、私は彼を好きになってしまった。
それは決して奢ってもらった、とかそんなのではない。……優しさや、彼との何気ない日常で、私は彼に惹かれていったのだ。
……彼のことを思うと心が温かくなる。今までの心地いい時間とはまた違う感覚に、私は戸惑いを覚えると同時に、どこか嬉しくなっていた。
学生時代に悪女として振る舞っていたことが嘘のように、今の私は恋する乙女化としている。
……でも、それは決して嫌な気分ではない。むしろ、私はこれからの未来に期待で胸がいっぱいだ。
嘘をつき、婚約破棄をされた女のことを笑っていたら、復讐され、婚約破棄をされた挙句、慰謝料まで払わされたし。
今思えばバカなことをしたな、と思う。…当時は、逆恨みをしていたけど、よく考えなくても、私が悪い、とそう思うぐらいには。
学生時代の自分が見たらきっと滑稽だと笑うだろう。……だって、あのときの私は控えめに言ってクズだった、と自負している。だからこそ、こうしてクリストフくんと出会って、恋を出来たのは、運が良かった。
「告白、したら……」
きっと、クリストフくんは告白を承諾してくれるだろう。……笑顔で受け入れてくれる未来があると思う。………多分。
「どうして、こんなに臆病になったのでしょう……?」
私の名前は、マリー・アルメイダ。学生時代に、レオナルド殿下やクラウスを騙した女よ!今更、庶民を虜にするなんて、造作もないことよ!
「……そうよ。私の美貌を持ってすれば……!」
自画自賛になるけれど、私は間違いなく美人だ。美しいと何度も褒められたし、自分でも自覚しているし。……ジール様は落とせなかったけども、クリストフくんは落としてみせる。……とゆうか、あの反応で私に惚れてない方が可笑しい話だ。
……故に私が告白したらきっと、クリストフくんは嬉しそうに頷いてくれる――と思う。…………うん。多分、きっと大丈夫なはず……大丈夫だよね?不安と期待で胸がドキドキする。……この私が、今更こんな気持ちになるなんて想像もしてなかったわ……。
「待っていなさい。クリストフくん……!必ず、必ず落としてみせますわ……!」
そう意気込み、私は早速行動を開始した。
△▼△▼
「いいところだね!マリーさん!」
笑顔のクリストフくんを見る。……私は今、クリストフくんと海にいる。告白するには、ロマンチックなスポットだとそう思ったから。
「そう――ですね」
クリストフくんに同意をしつつ、私は考える。……さて、どうやって告白しよう?さりげなく?それとも、ロマンチックに?……それとも――。
候補はたくさん上がってくる。……だけど、私は最終的にどう告白するか決めた。……ちょっと、ズルいけど……仕方ないわ!だって、ロマンチックな告白なんて私には出来そうにないもの! 海を眺めながら、私は覚悟を決めてクリストフくんの方を見る。
そして、口を開き――。
――ザブーーンッ!!!と、盛大な水飛沫が目の前から上がってきた。……へ?と唖然とする私に、目の前の人物はニコニコと笑いながら口を開く。
「冷たいねぇ!マリーさん!」
「え……あ、はい……そ、そうですね……」
「さぁ!泳ぐぞー!!」
「……え?」
私は目をパチクリとさせた。今、クリストフくん何て言った……?聞き間違いでなければ、遊ぶとかどうとか……いや、海なんだから遊ぶのは当たり前。……でも、遊ぶって……とゆうか……
「あの……水着は?!」
「俺は加護があるから必要ないよ!」
「加護って……!?」
加護って神に愛されたものしか与えられないものなのよね?!貴族でも、一部の人にしか与えられない……そう聞いたわ! じゃあ、クリストフくんはその〝一部の人〟に入っていると?
とゆうか、加護なんて、百年ぐらい見つけてないし。――水着なしで泳げる加護って何なの?変じゃない?
「……水避けの加護が付いているんだ」
不意に、クリストフくんがそう言った。……水避けの加護って何?文字通り水がクリストフくんを避ける加護ってこと?何それ……?
「ま、そんなもん、どうでもいいんだよ。俺の手を取って」
そう言ってクリストフくんは手を伸ばす。……私に向かって。戸惑った。だって、この手を取ったら――。
「ぬ、濡れますよね?私……その加護持ってないし」
「大丈夫!俺の手を繋いだら濡れないから!」
そう言って私の手を握るクリストフくん。それに対し、私は……
「う……わ、わかった……」
と、答え、私はクリストフくんの手を握った。
△▼△▼
――結果として。加護は本当だった。
……水避けの加護というのはクリストフくんの周りが水で覆われないようにする加護だった。
そして触れた相手も、濡れないというよく解らない加護だが、水難事故にあっても、溺れないという加護と水圧で死ぬことがない……こと?
……そう考えると、役に立っている……と言えなくもないのかしら……? そして、クリストフくんはとても泳ぎが上手だった。私が息継ぎで水面に顔を出すと、私が溺れないように近付きながらでも、すいすいと泳いでいた。
多分、水に愛されているのだろう。……羨ましい、とは思うが、そもそも溺れることがないというのは羨ましい。
私は泳ぎは得意ではないから。
「…はーー。疲れたわ……そろそろ帰ろっか?マリーさん」
クリストフくんの声に私はハッとする。……確かに、もう太陽は傾き始めていた。……そういえば泳ぎとかで忘れていたけど……
「(私告白しに来たんだった!)」
クリストフくんに告白しに来たのにそれを忘れるとか何やってるのよ!私!と、私が一人で恥ずかしくなっていると、クリストフくんが不思議そうな顔をしている。
「ど、どうしたの?クリストフくん」
「……なんか、顔赤いけど大丈夫?」
その言葉に私はますます恥ずかしくなって、顔が赤くなる。……だが、ここまで来て告白しないのは女が廃るし、それに何より――。
「(ここで告白しなかったらここに来た意味がなくなる!)」
そう、そこが問題である。告白するぞ、と意気込んでいたのにクリストフくんの加護とかで忘れてしまっていた。……本当に、何やってるのよ私! でも、やるしかない。私は一度目をぎゅっと瞑ると、目を開いた。
「クリストフくん!」
「わ!びっくりした!どうしたの?」
私が急に大きな声を出したせいだろう。クリストフくんが驚いている。でも、そんなこと気にかけてる余裕は今の私にはない。
……だから、私は胸に手を当てて、一度大きく息を吸う。
そして、その勢いのまま言葉を続けた。
「私、あなたの事が好きなの!」
言った。言ってしまった。もう引き返せない。これで、振られたとしても。私は後悔はしない。
クリストフくんがどんな反応を示すのか。私は身構えながら待った。……だが、いつまで経っても何も起こらない。
不思議に思った私は恐る恐る目を開けて――。
「………え?」
呆然と。驚いたように目を見開くクリストフくんと目が合う。
…怖い。何を言われるんだろう……?
「……えーと。俺も、マリーさんのこと、好き、だよ?......友達としてだけど……」
「あ……」
その時点で。私の心が崩れていくのを感じた。
△▼△▼
――振られた。私は、クリストフくんに振られたのだ。
「友達として……なんて」
そんなのでは、意味はない。クリストフくんは好きにさせなかったら、私に存在価値などはない。
「振られた……」
こんな屈辱は、ジール様以来である。失恋という屈辱を二度もされた。悔しい。
「もう……最悪!」
マリー・アルメイダは誰もが虜になる女だった筈なのに。こんなのでは駄目だ。私は……。
「こんなの、会うのが気まずくなるんじゃないの……!最悪!」
ドンっ!と。机に拳をぶつける。八つ当たりなのは、分かっているが八つ当たりしなかったらやってられない、とは正にこのことである。
「……クリストフくん」
顔を赤らめて、彼を思う。振られた相手を思い浮かべるのなんて滑稽だとは思う。でも、しょうがないじゃないか。
だって、初めて――では、ないけど、二度目の本気の恋だったし。
「……友達じゃ意味がないのに」
恋人になりたい。彼と一緒に笑い合って、抱き合って、キスをして。その先だって。
……彼にならいいと思えた。彼が欲しいと思った。
でも、クリストフくんはそうは思っていなかったみたいだ。私のことなんて、友達としてしかみてくれてなかった。
こんなに、私はあなたのことを思っているのに。
「酷い。酷いわ。酷い!」
何が酷いのか。自分のことなのに、分からない。
分かるのは、私は彼が欲しいということ。でも、彼はもう私を見てくれないだろうということ。
失恋なんて、初めてした。恋をして振られたことなんてなかった。
こんなにも辛いのなら、恋なんてしない方がいいのではないだろうか。
でも、クリストフくんへの想いは抑えられない。彼が欲しい。もっともっと彼で頭の中を満たしたい。
だから、私は決めたのだ。
△▼△▼
私は、もう止められなかった。クリストフくんに振られたと思っていたけども、よくよく考えたら――。
「友達として好きだというのなら……まだ遅くない。まだ、可能性は残っているわ。……だから」
諦めない。彼を諦めるなんてこと、私には出来ないのだから。だって、まだ私は彼に恋をしている。
恋は盲目とは言うけれども、本当にその通りだと思う。クリストフくんしか見えない。彼しかいらない。彼を好きでいたい。
なら、やるべき事は一つしかない。私は彼に振り向いて貰えるように頑張るのだ。
故に――。
「クリストフくん!」
もう、戻れない。私――マリー・アルメイダは恋に堕ちてしまった。もう、彼を諦められない。
「あ、あの……マリーさん、近くない?ちょっと……」
クリストフくんは私に抱きつかれて、顔を赤くしている。自分で言うのもなんだけど私は、胸がでかい。自慢ではないが、Dカップだ。
美貌もそうだが、この胸も武器に成り得る。使えるものはとことん利用していくのは間違ってはいない。男なんて、所詮胸だ。胸で落とせる。
クリストフくんは、私の胸を押し付けられて、顔を赤くしている。
ふふ、と私は笑うのを堪えながら、クリストフくんに言う。
この恋は――絶対に諦めない。
私はそう決めたのだった……
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