『ジールとローズの話②』
あれからスティブーンとローズ・デイルと別れ、俺らはとある部屋に入っていた。部屋に入った途端、
「(エロい雰囲気が充満している……!)」
そう、エロい雰囲気が漂っているのだ。俺はこんな状況にも関わらず、胸を高鳴らせてしまっていた。
女性は妖艶な笑みを浮かべた後、俺の耳元に口を近づけてきた。吐息が耳にかかり、ゾクゾクするような感覚に襲われる。
「ふふ……かわいい♡それでね、坊や。私といいことしない?」
「いいこと……?」
「ええ♡とっても気持ちいいことよ♡」
美しい笑み。しかしその笑みはどこか淫靡で、見ていると吸い込まれそうになる。クラクラする。
俺はゴクリと唾を飲み込んだ。女性がさらに体を密着させ、耳元から囁きかける。
ゾクゾクッ!! 体が震えるような感覚。頭がボーッとしてくる……
そして耳元で囁いたあと、女性は俺の股間に手を伸ばした瞬間――。
「あのさぁ……エール。俺の友人に色仕掛けはやめてくれないかな?」
呆れた表情で俺たちの間に乱入してきたのは――
「ノリが悪いわよ。クラウス~~」
頬を含まらせ、つまらなそうに唇を尖らせる女性。しかし、俺からしたら急な展開でなにがなにやら……
困惑する俺をクラウスはため息を吐き、
「ジールもジールだぜ。なんでこんなやつに食いつくんだよ……」
呆れた口調のクラウスに俺は、何も言えずにただ呆然と立ち尽くすことしかできなかった。
「……ま、いいじゃない。それだけ私の色気が凄かったってことなんだから♪」
「はあ……そういうことにしといてやるよ」
ちょっと待ってくれ。俺を置いて話を進めないでくれ。
俺は困惑していたが、だが、この2人の会話に割って入る勇気なんてものはなく。ただ、2人の会話に耳を傾けていたが……
「ま、いいや。俺はジールに話したいことがあるから、エールはもういいから」
「えー、もっと坊やと遊びたいんだけど?」
ブーブーと不満を漏らしているエールと言われた女性に、再びため息を吐くクラウス。そして、俺に視線を向ける。
俺はクラウスがなにを言いたいのかわからず、ただ立ち尽くしていた。
「話をしよう。ジール」
真剣な瞳。その目は俺を捉えて離さなかった。一体、何を言われるのだろう。俺はクラウスの目を見ることができなかった。
心臓の鼓動が早まる。手に汗がじんわりと滲んでいく。俺はゴクリと唾を飲み込んだ後に……
「ああ……」
覚悟を決めた。何を言われるかは全くわからないが……。
「ま、いいわ。私は退散するわ」
そう言ってエールさんは去っていく。その去り際、エールさんは意味深な笑みを浮かべた。俺はそれが気になったが、今はクラウスと話をする方が大事だ。
俺とクラウスは2人きりになる。
部屋に沈黙が流れる。だが、その沈黙も長くは続かなかった。何故なら……
「あのさ。ジール。話があるんだ。言ってもいいか?俺の本音を」
クラウスは真剣な表情で俺を見つめた。そして俺は覚悟を決めたように静かに頷いた。
「そうか……ジール、俺さー、結婚するわ。あいつと」
「……そうか……って……はぁ?!?!?」
俺はクラウスが何を言ったのかよくわからなかった。いや、理解するのを拒んだと言った方が正しいか。
「今……なんて……?」
「だ・か・ら!俺、結婚することになったわ!」
笑顔でそう言ってくるクラウス。俺は今、どんな表情をしているのかわからなかったが……
「相手は……カトリーヌ嬢だろう?」
冷静を装い、そう問いかける。クラウスは頷く。その表情は恥ずかしそうな、しかし、嬉しそうな表情をしていた。
「そうか……おめでとう。……でも、何でこんなことを?普通に言えばよかったじゃないか?」
あんな色気プンプンの人に俺を誘惑してまで言うことか? 俺が問いかけると、クラウスは不満そうに、
「エールには普通にジールを呼び出すように頼んだの!俺は仕事で忙しかったから!そしたら勝手にあんなことになって……」
クラウスは思い出したのか、イライラしたように頭をかいた。そして一息吐くと、
「ま、話はそれだけ。あとは久しぶりに話そうぜ、親友」
ニヤリ、と笑みを浮かべたクラウスに俺は呆気に取られたけども……
「ああ……」
そう呟いて俺は微笑んだ。
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なんか、『ジールとクラウスの話』みたいになっていますが、次回はローズ視線の話をします
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