『カトリーヌ・エルノーの話④』
王宮の一室に移動した私たち。
部屋の中に入ると、そこはまるで会議室のような部屋だった。机と椅子が置かれており、窓際にソファーが置かれている。……なんだか緊張して来た。
エール様は私の向かい側の席に座ると、
「ねぇ、カトリーヌちゃん。私がいなくても平気?寂しくない?」
「え……急にどうしたんですか?」
「だってぇ~?私たち結構一緒にいたじゃない?今更上司が変わって大丈夫かなぁって」
エール様は不安そうな表情で私を見つめる。まぁ、私は人見知りだし、知らない人と話すのは苦手だけれど……。でも、
「大丈夫です。確かに寂しいですけど、エール様の将来を邪魔するようなことはしたくないですから……」
そう言うと、エール様は少し驚いたような顔をして、すぐに笑顔になった。そして私の頭を撫でながら言った。
「……そう……なら、結婚しちゃおっかなぁ……王太子嫌いじゃないし。カトリーヌちゃんが大丈夫なら行き遅れとかしたくないしね!」
「……行き遅れ……そうですよね……」
社交界に生きていくためには、やはり結婚相手を見つける必要があるし、貴族の娘として生まれた以上それは避けられないことだし。私だって、早く結婚したいと思うし。
「フールには感謝しないとねぇ。私もそろそろ結婚したかったし。フールに会ったらエール・バイエルは感謝しています!って伝えておいてね」
そう言ってエール様は去っていく。……確か、この仕事をした後は好きに過ごしていいって言っていたよね。……なら、家に帰ろうと……
「(何というか……どっと疲れたし……)」
たかが、一時間ぐらいしか経ってない上に資料を渡しただけなのに……何故こんなに疲れたのだろうか……運動不足なのだろうか?そんなことを考えながら私は王宮を後にしようとすると――。
「………おや。カトリーヌ嬢ではありませんか」
聞き覚えのある声がして、私は思わず振り返るとそこには――。
「あ……ジール様……!」
なんと、ジール様と遭遇してしまった。私が驚きの声を上げると、ジール様は微笑みを浮かべて、
「お久しぶりです。元気にしていましたか?」
「元気にしていましたわよ。ジール様」
「おー。何だ何だ!この子、ジールとどんな関係?」
私がそう言うのと同時に後ろにいたチャラ男が現れて、興味津々と言った様子で私とジール様を見ている。何だこのチャラとした茶髪男……。
「スティブーン。彼女は私の知人だからな?だからナンパはするんじゃねーぞ、俺の友人に怒られるからな」
「ええー!?何も言ってねーじゃん、第一、今は仕事中だし」
「あ……そうですわね。お邪魔しましたわ。それでは失礼しますね」
私はそう言って去っていく。そうだよね……ジール様たちは仕事中なわけだし、私が邪魔をしたら駄目だよね……
「……ああ。ではまた機会に会おう」
そう言ってジール様たちは去っていったのを見届けながら……
「……帰ろう……」
明日は仕事休みだし、家でゆっくり過ごそう。そう思いながら私は家路についたのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます