『レオナルド・オルコットの話①』
――俺は選ばれた人間だ。
何故、俺――レオナルド・オルコットが選ばれた人間と言うのには訳がある。まず、俺は成績優秀で容姿端麗。スポーツも万能と来たものだ。
自分で言うのも何だけど……と謙遜するというのは失礼だろう。
そして、俺は家柄も良い。次期国王として申し分ないだけの能力もある。
そう、俺は選ばれし者。この国の未来を背負う存在なのだ。
……だというのに、婚約者がパッとしない。婚約者の名前はカトリーヌ・エルノーラという令嬢。
まぁ、顔はそこそこ整っていると思う。だが、それだけだ。
頭も良くないし、運動神経だって並程度。しかも、自分から何か行動を起こそうとする気概もない。
正直、こんな女と結婚するなんて冗談じゃないと思っている。
王妃としての資質は無いに等しいし、政略結婚だから仕方ないと割り切るにしても……もう少しマシな相手はいなかったのか? そう思ってしまうほどに、彼女は普通だった。
どうして俺と婚約者になれたのか……それこそ不思議なくらいに、彼女は普通だったのだ。恐らく、親のコネ?とかいうやつを使ったと思われていたが、それでもないだろうし……。まぁ、どっちでもいいや……
とにかく、そんな彼女に魅力を感じる事はなかった。むしろ、イラついていたと言ってもいいかもしれない。
だって意見もなくて、いつも主観。ただ言われた事を鵜呑みにするだけの存在。
はっきり言って、こんな奴と結婚したくない。だから、俺は彼女を冷遇した。
だってあんな奴と結婚すれば、将来俺まで同じ目で見られるじゃないか。
そんなの絶対に嫌だ。だから、俺は彼女を見下していた。
そして――俺は女遊びに明け暮れるようになった。俺は次期国王になる男である。国王になるのだから、愛人の一人二人いても問題はないはずだ。それに、俺は顔が良いんだからモテるに決まっている。その証拠に何人もの女と関係を持った。
でも、どれもこれもパッとしなくてすぐに飽きてしまった。やっぱり、俺には相応しい女性はいないようだ。
そんなある日の事。俺は運命の人に出会った。それは――。
「初めまして、マリー・アルメイダです」
そう挨拶をした少女は可愛らしかった。俺よりも一才年下――つまり、カトリーヌ・エルノーと同い年。しかし、彼女の方が断然魅力的だった。顔立ちも綺麗だし、スタイルも抜群だし。
だから彼女に近づき、俺たちは愛し合った。あんな婚約者より、よっぽど魅力的で素晴らしいと思ったからだ。
彼女と過ごしている内に、俺はどんどん惹かれていった。
だからカトリーヌ・エルノーとは婚約破棄をして、マリー・アルメイダを婚約者にした。親も賛成してくれたし。正に、幸せ絶頂の日々を送っていたのだが……
しかし、付き合っているうちに彼女の本性が見えてきた。我儘で傲慢。自分が一番じゃないと気が済まない性格をしていた。その上、嫉妬深いときたものだから手に負えない。俺が他の女と話すだけで不機嫌になるし、正直言ってウザい。
カトリーヌ・エルノーは魅力がない、と思っていたがこのマリー・アルメイダを見ていると……
「(婚約破棄したの間違いだったかも………)」
と、俺は後悔した。
△▼△▼
――マリー・アルメイダと付き合った事を、俺は激しく後悔していた。これではカトリーヌ・エルノーが婚約者だった方がマシだ。あの女は俺が浮気したとしても何も言わないだろうし、何なら興味もなく、浮気相手に嫉妬するような事もしないだろう。
それに引き換え、マリー・アルメイダは嫉妬深くて束縛してくるし、俺が他の女と話せばヒステリックに叫んで暴れるし、すぐに泣いて喚いて、まるで子供みたいだ。
これでは燃えた恋心も冷めるというものである。だから俺は、マリー・アルメイダとの婚約破棄を考えていたのだが、カトリーヌ・エルノーと婚約破棄をしたすぐ後にマリー・アルメイダに婚約破棄をするというのは、どう考えてもよくない。下手すれば俺が批判される事になる。
それに、マリー・アルメイダは表向きはいい女を演じているし。束縛してくる、と言っても周りから見たら些細な事らしい。つまり、俺が我慢すればいいだけ……という事だ。
俺は仕方なく、マリー・アルメイダと婚約破棄するのは先延ばしにした。
だけど――それを後悔することになるとは、この時の俺は思っていなかった……
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