地下

 地上の一階に聖遺物が見当たらなかったので、地下一階へ降りた。

「てめえら、人類がおれたちの縄張りを荒らしている」

「どうするんでえ、親分」

「当然、排除だ」

 盗賊鬼の親方が仲間を引き連れて襲ってきた。

 地下一階には武器が置いてなかったので、盗賊鬼たちはみんな素手による格闘技で襲いかかってきた。隠れ家を襲撃されて驚いているのだろう。地上一階の仲間が侵入者はすべて倒してしまうだろうと予測していたのだろう。

 盗賊鬼の拳と蹴りをベイケは先制攻撃して毒魔術で倒したが、心にうずくところがあった。

 おれの自分の格闘技を試したい。ベイケはそう思ってしまったのだ。どっちにする。格闘技を試すか、広範囲の魔術を試すか。

 ベイケは盗賊鬼を一度、素手で殴ってみた。まったく効き目がなかった。盗賊鬼の体は人類とちがってものすごく堅いようだ。格闘技で盗賊鬼を倒すことはベイケにはできそうにない。

 魔術師ギルベキスタは、魔術は得意だったのだろうが、格闘技はどれくらいの強さだったのだろうか。

 冷静になれ。おれが目指しているのは世界級の魔術師だ。ここは広範囲魔術の練習だろう。

 そして、ベイケは個人魔術で毒魔術を使い、素手の盗賊鬼たちを攻撃した。

 毒魔術を受けた盗賊鬼はそれでも一体も倒れない。

 うまくいかねえ。

 そこで、ノアミーの雷撃。

 さらに、ウォブルの重力操作。

 ミシアの乱れ斬り。

 親分はミシアが倒してしまった。ミシアの黒色に赤色が混じった髪がなびく。

 親分がやられても、盗賊鬼は襲いかかってきたが、冷静に戦い、四人は地下一階の盗賊鬼を倒すことができた。


 地下一階にも、聖遺物はない。本当にこの盗賊鬼が聖遺物を盗んだのだろうか。ひょっとしたら、盗んだ聖遺物をすでに売り払ってしまったのかもしれない。

 地下二階へ行くしかない。


 地下二階に降りると、そこには武装した盗賊鬼が五体たむろしていた。そして、部屋の中を見ると聖遺物があった。盾が五個置いてある。すべて贋作だろうか。贋作を取り返してどうするんだろう。

 盗賊鬼たちは何を考えて聖遺物を盗んでいるのだろうか。本物が欲しいのか。贋作が欲しいのか。お金儲けのためか。まったくわからない。

 ベイケが速攻で盗賊鬼に毒魔術で攻撃して一体を仕留める。他の三人も、それぞれいつもの技で盗賊鬼を仕留めた。

 ミシアが杖の斬撃魔術(物理属性)で斬り倒す。

 ノアミーが契約魔術の雷撃で一体を倒す。

 ウォブルが重力操作で一体を倒す。

 残りの一体はベイケが毒魔術で倒す。

 短い戦闘だったが、盗賊鬼にはいつ負けるかもしれない威圧感を感じて、油断ができなかった。盗賊鬼の剣は強い。

 盗賊鬼たちがみんな倒されたのを確認すると、四人はようやく緊張感を解くことができた。

「あのおばあちゃんが盗まれた聖遺物がどれかわからないな」

「ぜんぶ持っていこう」

「仕方ない。全部持っていくか」

 そして、ベイケたちは盗賊鬼の隠れ家にあった『ギルベキスタの盾』を個持っていくことにした。重い。ちょっと運ぶのはたいへんなことになりそうだ。ミシアは杖を持っていて、盾は持ちはこべないので、ベイケとウォブルが盾を二個ずつ持つことにした。ノアミーが一個の盾を持つ。

 盾を二個持つ魔術師が二人。ちょっと変わった様子になってしまった。


 地下三階には財宝が積んであった。金塊や銀塊、宝石類や美術品がある。ここの盗賊鬼たちは誰を相手に盗品を売りさばいていたのだろうか。人類相手に売りさばいていたのか。盗品を買う連中もろくなやつらではないのだろう。

 盗品を手に入れても勝手に売ってはいってはいけないので、役人に引き渡すしかない。

 そして、四人は盗賊鬼との戦いの疲れをとるために宿で一泊して夜をすごした。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る