抵抗軍

 四人は、異端審査機関と戦っている抵抗軍の基地にたどり着いた。ここに居れば、抵抗軍に守ってもらえるかもしれない。

 抵抗軍にはさまざまな異端者が集まっていた。魔術を知らない大衆の中で、あえて魔術を探求することを選んだ魔術師たちである。魔術師たちは、その多くが芝草人形によって異端とされ、迫害されていた。

 それで、異端の魔術師たちは芝草人形と戦う抵抗軍を作ったのだ。抵抗軍の基地は、何度も攻め寄せて来る芝草人形を撃退して存続していた。

 逃亡生活を終わらせるためには、異端審査機関を倒すしかない。芝草人形はものすごく数が多く、異端の魔術師たちを攻め立てて来る。どうやって異端審査機関を倒すか、抵抗軍みんなで話し合っている。


 またすぐに芝草人形の異端討伐隊が襲ってくるだろう。それを撃退しなければ、異端とされた魔術師たちに生きるすべはない。

 ベイケたちは、学校でも新聞でも存在を教えられない魔術師が何千人と抵抗軍にいることをとても喜んだ。魔術師たちはここにいたんだ。教師エンドラルド以外の大人の魔術師に会うことはめったにない。

「おれたちが異端の魔術師なら、正統な魔術師はどこにいるんだ」

 ベイケは疑問に思った。

「人類は数少なくしか存在せず、魔術師はその中でも数少なくしか存在せず、そのほとんどが異端の魔術師だ。正統と認められる魔術師はさらに少ない」

 と抵抗軍の男がいう。

「正統な魔術師に会いたい」

「無理だ。正統教義は失われて久しいと聞く。現代では、正統な魔術師は、一人も存在しないのかもしれない」

 別の抵抗軍の男がいう。

「たぶん、正統な魔術師ってのはギルベキスタのことをいうんだろうな」

「ああ、そんなものになれるわけないのにな」

 抵抗軍の男たちが話し合っている。

 ギルベキスタが魔術で世界を掌握した時、芝草人形たちはとても強い畏怖を覚え、ギルベキスタの教えに従うことにした。ギルベキスタの教えに従えないものは異端だとして、芝草人形が取り締まっている。奇妙な世界だ。

「ひょっとして、芝草人形は火炎魔術が使えれば、簡単に倒せるのか」

 ベイケが質問すると、

「芝草人形は火炎魔術でよく燃える。しかし、炎に包まれた体で突っ込んでくるぞ」

 と抵抗軍の男は答えた。

 芝草人形と戦うしかない。

 あの膨大な数がいる芝草人形をすべて滅ぼしてしまわなければ、異端審問は終わらないのだろうか。

「芝草人形の中にも魔術師はいるのか」

「いる。時々、魔術を使ってくる芝草人形に出会う。芝草人形の魔術師たちは異端だとはされていないようだな」

「正統な魔術は人類からは失われたが、芝草人形の間では受け継がれているということになるね。芝草人形は奇妙な種族だな」

「まったくだ。あの芝草人形が命を持って動くことからしておれには不思議だが、そのうえ、知性と文化を持ち、人類の文化に干渉してくる。芝草人形というものが、おれにはいまだに見当もつかないよ」

 芝草人形がギルベキスタの正統教義を伝えているというのか。ギルベキスタの正統教義が見つかれば、それはとんでもない大発見になる。ベイケはそのことに強く思い留めようとした。

「抵抗軍には、芝草人形を倒す作戦があるのか」

 ベイケが聞く。

「芝草の都を攻め落とすしかないね。芝草の都は芝草人形の首都だ」

「それで異端裁判はなくなるのか」

「大きな効果があるだろうね」

「いったい芝草人形はどうやって生まれるんだ」

「それがわからないんだよな。芝草人形が芝草と袋で芝草人形を作っているとしか考えられないんだよ。その作られた芝草人形は命を持って動くんだ。そして、動くと人類の異端裁判を行う」

 迷惑だが、面白い種族だなとベイケは思った。


 抵抗軍の基地には、厳重に守られた水源と、三年分の食料の備蓄があり、数千人が暮らせる住宅街があった。それらが囲いによって守られている。常に交替で見張りが立ち、芝草人形が攻め込んでくると、門を開けて討って出て戦闘して撃退していた。

 抵抗軍の魔術師たちは芝草人形より強いようだ。しかし、芝草人形は数があまりにも多く、すべてを撃退することができない。

 四人が抵抗軍の基地で一泊した翌日には、すぐに芝草人形が基地に攻め寄せてきた。抵抗軍の魔術師たちがすぐにそれと戦っている。ベイケたちはその様子を見ていた。抵抗軍が手際よく芝草人形たちを倒していく。

 抵抗軍の火炎魔術で芝草人形が燃えている。燃える芝草人形は命が尽きるまで走りまわって、まわりをかく乱していた。

 剣や槍や斧を使う魔術師もいた。武器で芝草人形を倒していく。芝草人形は剣でよく斬れる。芝草人形は剣で斬られるとすぐにやられてしまう。

 数時間の戦闘で、芝草人形はすべて撃退され、抵抗軍の基地は守られた。防衛戦に勝利した。異端の魔術師の拠点であるこの地を再び抵抗軍は守り通したのだ。

 こんな戦いが数日に一回はあるという。

 ベイケたちは、芝草人形と戦うために抵抗軍に協力することを決めた。抵抗軍の正規兵になるのではなく、同盟軍として協力するなら、特に行動を束縛したりしないという約束をとりつけた。抵抗軍がどのような組織なのかまだわからないが、芝草人形と戦う仲間であることは確かである。

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