奇妙なひとり

 新しく世界級の魔術師になったベイケを、他の世界魔術師たちは快く迎えた。魔術師ダイツア、魔術師ドービー、魔術師グルダヤ、魔術師アギリジアがである。

 魔術師ギルベキスタは死んだわけではなく、まだ生存中であり、この地域の一部を魔術師ベイケに譲り渡し、その地域を魔術師ベイケの物質の掌握に任せるようになった。

 ベイケの領土は、毒の支配する土地といわれて人々に恐れられたが、世界魔術師たちはそれくらいの特徴があった方が面白いといって支持した。

 ベイケによって、毒栄養という分野の研究が急速に進むのも面白かった。

 ベイケは、これからおれは新しく魔術師になる者の契約相手に選ばれることもあるのだろうと思い、そんなことがうまくできる自信がなくて悩んだ。しかし、すぐには無理でも、少しずつ世界を掌握することに慣れていけば、魔術の契約相手になることもできるかもしれないと気楽に考えることにした。

 ギルベキスタとちがい、ベイケは毒魔術の契約相手しか務まらないので、それでいいのかすごく疑問だ。しかし、ギルベキスタは、毒魔術の契約しかできない世界魔術師も充分に面白いので気にするなという。

 そして、ベイケは、世界魔術師になるのに必要なのは、契約魔術ではなく、個人魔術であったことを強く心に刻みたいと思っていた。おれはまちがっていなかった、そう思いたかった。


 ベイケは、ミシア、ノアミー、ウォブルたちとこれまでと同じように仲間として行動するつもりだった。

 四人は、いつものように武器屋イエニックにより、手に入れた素材を売却した。邪霊の素材、巨大ガニの素材だ。

 武器屋イエニックは、四人の旅が順調に進んでいるのを見て取って、面白がった。

 そして、武器屋イエニックは、ベイケがこれまでにない迫力のある気配を放っていることに気付いた。いったい、この数日でベイケに何があったのか。武器屋イエニックにはわからないことだった。

「おれ、教会滅亡後世界のことがだいぶわかってきたよ」

 ベイケはイエニックにそう告げた。

「ほう、それは凄いですね。私なんかは武器屋をやっていても、なかなかわからないですよ」

「とうとう、三千年前に教会を滅ぼしたやつに会った」

 それを聞くと、イエニックは大きく驚いた。

 イエニックは、魔術師のことをほとんど知らないが、魔術師が存在して、武器屋に売買に来ることはわかっているのだ。

「どんな人でしたか」

「おっかないやつだったよ。すげえ強くてさ」

 ベイケはいう。

 武器屋イエニックは、この四人は相当に凄い若者たちだぞ、と感嘆した。

 ベイケたちは、武器屋の品物を見てまわり、最近、魔術師向けの装備が少し増えてきたような気がしたことが興味深かった。

 四人は、今日も、疲れを癒すために宿で一泊して、夜をすごした。

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