世界級の魔術師

 ベイケの魔力がこの地域の世界を掌握している。

 ベイケの魔力とギルベキスタの魔力がこの地域の世界の物質をどちらが掌握するのかを競っている。

 ベイケは世界の物質を掌握して、世界がどのようにできているのかを認識しようとしている。気になるところはたくさんあるものの、ベイケの理解力が世界を的確に認識するには相当な時間がかかりそうだ。

 五人の世界級の魔術師は新しく増えた世界級の魔術師ベイケを歓迎していた。

「彼はなかなかたいしたものじゃないかな。確かに、一代で世界級の魔術師になった」

 魔術師ダイツアが評す。

「毒魔術で世界級の魔術師になったことは、実に興味深いことだ。今まで、毒魔術で世界級の魔術師になったものはいないのだから」

 魔術師ドービーがいう。

「彼は、毒魔術で世界を解釈して、世界を作り変えるのだろう」

 魔術師グルダヤがいう。

「観察に来た意味は大きくあった。この場面を見逃さなかったのは上出来な出来事だった」

 魔術師アギリジアがいう。

 魔術師ベイケはこの世界魔術師に自分が互角になったとはまだとても思えず、今は、逃げだして、じっくり世界の把握を検討したい気分だ。

 どうすればよいのか。

 これからどうなるのか。

「まだわたしとの戦いは終わってないぞ」

 魔術師ギルベキスタがいった。

 ベイケは冷や汗を流す。

 ここからは、世界級の魔術師同士の戦いだということになる。

 戦えば、ベイケが不利だ。ベイケは新しく認識した世界の広大さに次々と知識を吸収していて、世界がどのようにできていたのかを理解するのに強い混乱を感じている。

「新人つぶしはいただけないな、ギルベキスタよ」

 魔術師ドービーがいう。

 他の世界魔術師たちがベイケに同情的だ。このまま、戦いをやりすごしてしまいたい。

「それなら、もし私が戦いに勝利して魔術師ベイケを倒したとしても、その後で私みずからがベイケを蘇生することを約束しよう」

 ギルベキスタがいう。

「おれも、もしおれが戦いに勝利して魔術師ギルベキスタを倒したとしても、その後でおれみずからがギルベキスタを蘇生することを約束するぞ」

 ベイケがいう。

 しかし、その発言は大きくギルベキスタの機嫌を損ねた。

「おまえが世界魔術師ギルベキスタを理解するのに数十年はかかるだろう。わたしを理解できないおまえが的確にわたしを蘇生させることはおそらくできないだろうな」

 ギルベキスタがいう。

 ベイケは、自分がまだ毒栄養で若い体を数百年も保ちつづけることができはしないだろうことを認識する。まだ、他の世界魔術師たちには大きく差を付けられている。

「そして、わたしとの戦いはまだ終わっていないぞ」

 ギルベキスタは小さな雷撃をベイケに放つ。ベイケは毒電撃でそれを打ち消す。この小さな雷撃は戦闘の継続を知らせるためにギルベキスタが手加減して放ってきたものだ。

 はたして、4000年を生きた凄腕魔術師にベイケは勝てるだろうか。かなり厳しい。ベイケはギルベキスタとの戦いが継続することに焦りを感じた。

 世界級の魔術師になったというのに、前途多難だ。

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