魔術の家への道

 西の町を探索すると、観測台で見た景色を見つけた。そこにひとつの家が建っている。魔術の家だ。

 四人は意を決して西の町の魔術の家に向かった。そこにギルベキスタが住んでいるのだ。四千年を生きた魔術師だ。現代でも大きな影響力を持つ魔術師たちの契約相手である。

 それだけではない。世界級の魔術師なのだ。そんなものに会うのは、かなり危険なことだ。


 四人は魔術の家に向かって歩き始めた。そこで不思議なことが起きた。なぜか、魔術の家に向かう道がとても長く感じられ、簡単にたどりつけそうにないのだ。

 ギルベキスタの家にたどりつくための心理的な長さを体験しているのかもしれない。それはものすごく遠い道のようだ。

 それとも、これはとてもありえる話だが、ギルベキスタの家に向かう道は、普通の町の中の普通の道でまちがいないのだが、ギルベキスタに会いに行こうとしているものだけが、ギルベキスタの住む魔術の家に行くための道がとても長い道になるということである。

 西の町の魔術の家にたどりつくまでの道がとても長く感じられるのだ。あまりにも遠く、あまりにもたどりつくことが困難な道なのである。

 この道を西の町の魔術の家にたどりつくまで歩いていかなければならない。それができなければ、魔術師ギルベキスタには会えないのだ。

 四人がのんびりと道を歩いていく。

 すると、邪霊が四人を襲ってきた。

 邪霊が攻撃性を持つ生き物だと気付くのが遅れたため、ミシアが邪霊の攻撃をくらった。ノアミーがすぐに回復魔術で治療する。

 ベイケが毒魔術で邪霊を攻撃する。邪霊がいったいどんな生き物なのかわからない。気体分子生命体だろうか。それとも、霧状生命体だろうか。

 それとも、物質を存在の根拠としないという意味の霊なのだろうか。魔術師の作り出した幻想概念だろうか。邪霊とは何だ。

 幸いにも、邪霊はベイケの毒魔術一撃で倒されてしまったため、邪霊がどのような生き物なのか、あまり強く注目して深く考えることにはならなかった。

 しかし、そんなベイケの思いとは関係なく、邪霊がたくさん集まってきて、ベイケたちを襲い始めた。

 ベイケの毒魔術は邪霊に効く。

 ミシアの杖の斬撃(物理魔術)も邪霊に効く。

 ノアミーの雷撃も邪霊に効く。

 ウォブルの重力操作も邪霊に効く。

 これらのことから、邪霊はただの物質でできたものだ、とベイケは考えた。

 そしてすぐに、ベイケが毒魔術で邪霊を倒した。

 魔術の家に行くための道で、邪霊が次々と襲ってくるのはなぜなんだ。ギルベキスタが邪霊を使役して、魔術の家にたどり着くのを妨害しているのだろうか。

 魔術の家まで、物理的な距離ではなく、魔力的な距離が遠い。はたして、四人は世界魔術師ギルベキスタのいる場所にたどりつくことができるのだろうか。

 一体、また次の一体、というふうに邪霊を少しずつ倒していき、四人は道を歩いて進む。

 ベイケは邪霊の攻撃も先取って毒魔術で攻撃することができる。

 ベイケが契約魔術で毒魔術を使い、邪霊を攻撃した。契約魔術の契約相手はギルベキスタだ。ベイケたちが魔術の家につくのを妨害しているのがギルベキスタなら、契約魔術を許可しないのではないだろうか。それをベイケは確かめたかった。しかし、普通に契約魔術は発動して、ギルベキスタの魔力を利用して、邪霊を攻撃する。そのまま、邪霊を一体倒してしまった。

 ベイケたちは邪霊を倒しながら、道を歩いて進んだ。

 ギルベキスタが道を進むのを邪魔ために生息するわけでもない邪霊は、なぜ、こんなところに大群で集まって、住んで襲ってくるのか。はなはだしく迷惑な怪物である。


 さらに、道の途中でなぜか巨大ガニが出て来て、四人に襲ってきた。西の町の魔術の家にたどりつくのはたいへんそうである。

 ベイケが毒魔術で巨大ガニを攻撃したが、巨大ガニはそれだけでは倒れなかった。

 反撃として巨大ガニが火炎魔術でベイケを攻撃しようとする。ベイケは巨大ガニに毒時間を挿入して、時間を壊しながら攻撃を先取り、巨大ガニに毒魔術を当てる。濃度の濃い毒魔術に巨大ガニは倒れる。

 ミシアが杖を大振りして特大の斬撃(物理魔術)で巨大ガニをぶった斬った。

「この巨大ガニ、強いぞ」

 全力で巨大ガニを倒したミシアがいう。

「じゃんけんなら勝てる相手なのにな」

 ベイケがいう。


 魔術の家への道はまだつづく。

「ギルベキスタが世界級の魔術師だときみに聞いたことがあったな。あの時のわたしはまだ、自分が魔術の契約をした相手のギルベキスタの話をきみがしているのだとは気が付かなかった。その時のわたしには、魔術の契約相手と、ベイケが教えてくれた世界魔術師という存在が同じものだと考えようとしていなかった」

 ミシアが道を歩きながら話す。

「この道はギルベキスタの家につづいている。魔術師の契約相手に会いに行くのは緊張するな」

「そうだな。ギルベキスタとの決戦はおれひとりでやる。安心していてくれ」

 ベイケが答える。

「わたしはまだ世界級の魔術師を相手に戦うような覚悟はない。きみの無謀さには尊敬の念を感じるよ」

「夢だからな。計画していたし」

「わたしから見ても、正直、きみに勝ち目はないぞ。ひょっとしたら、きみは今日か明日、ギルベキスタと戦って死んでしまうのかもしれない。そう思うと悲しいな」

 ミシアがいう。

「大丈夫だ。ギルベキスタと戦っても生きのびる。ミシアに会えなくなると悲しいからな」

 ベイケがいう。

「少年よ、わたしを忘れているぞ」

「もちろん、ノアミーに会えなくなるのも悲しいからな」

「そうだろ。少年、よくわかっているな」

 そのまま道を歩いていると、また巨大ガニが近付いてきた。襲いかかってくるようだ。

 ベイケが巨大ガニの火炎魔術を毒魔術で打ち消して、さらに攻撃を先取り二撃目の毒魔術で倒した。

「この道の進みづらさがギルベキスタの嫌がらせだと思うと、ギルベキスタに怒りがわいてくるな」

 ベイケがいう。

「それだけ、ギルベキスタがベイケとの戦いを避けたがっているのさ」

 ウォブルがいう。

 道の通りには家々が立ち並び、街灯もあった。道の通りの家で暮している人たちは、ギルベキスタの家に行こうとしていないので、短時間でこの道を移動しているのだ。ギルベキスタの家に行こうとする者だけが長い時間をかけて進まなければならない道なのだ。

 四人は道を歩きつづける。

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