報酬
ベイケたち四人は、賢明なる老婆に贋作工場を壊滅させたことを報告した。役人もそれを認めて、人類の政府にそれを報告した。
「いやあ、命があってよかったですよ」
同行した役人はそういった。ベイケたち四人の強さは確かなものだと役人はいっていた。
ベイケはさらに大富豪グラッドにも、贋作事件について報告した。贋作工場が十日で三個の贋作を作り、売りさばいていたことを伝えた。大富豪グラッドの落胆は大きかった。
大量に出まわった聖遺物『ギルベキスタの盾』の贋作の中に、はたして本物の聖遺物があるのかどうか、それは誰にもわからなかった。
たぶん、本物は一個もないだろうな、とベイケは推理した。
しかし、贋作工場を壊滅させたことを大富豪グラッドは大きく喜び、ベイケたち四人に高額の報酬を支払った。四人はそれによってかなり裕福な資産を手に入れた。
贋作事件は上流階級や魔術師たちの間で評判になり、贋作を作っていたのが魔族だったことは聴衆に衝撃を与えた。
大富豪グラッドも、贋作事件が良い話題になることから、贋作でもいいから聖遺物を手元に残すことにしたようだ。
聖遺物の真贋を見極めることのできる鑑定士が現れることが期待されたが、いつ誰がどのようにそんな技術を習得できるのか人々は予想ができなかった。
四人は、武器屋イエニックを訪れ、装甲狼や液体生物や盗賊鬼やオークや魔族の素材を売った。イエニックは四人の魔術師が面白い素材を売りに来ることをとても楽しんだ。
四人が贋作工場を壊滅させた話を聞くと、
「素晴らしい。世界経済のひとつの逸話ではないですか。このまま、いつか世界政治の黒幕にたどりつくことを期待していますよ。彼らがどんな武具を身に着けているのか興味があるんです」
とイエニックはいう。
ミシアはグラッドからもらった報酬で、以前から欲しがっていた専門家向けの樫の杖を買った。
「とうとう手に入れた」
とミシアがいっている。
ノアミーは魔力を高める首飾りを買っている。ノアミーがそれを見つけて買うと、他の三人も欲しくなり、四人みんなで購入して身に着けた。
魔術師的な買い物をする客だなとイエニックは思った。客のほとんどは剣を買う戦士たちなのだ。
「おれは何を買おうかなあ」
ベイケは悩んでいる。
「ウォブル、その使わない剣は買い替えないのか」
とベイケがいうと、
「買い替えないぞ。この剣は気に入っているからな」
とウォブルが答えた。
「イエニックさんは聖遺物『ギルベキスタの盾』が本物かどうかの鑑定ってできる」
ベイケが聞くと、
「できませんよ。うちもいつ贋作を買わされるかわからないから、とても感謝していますよ」
とイエニックは答えた。
うむ。今回の四人は良いことをしたのだ。贋作工場を壊滅させたのは良いことだったのだ。イエニックさんの武器屋が助かるなら、そうだろう。と四人は思った。
ギルベキスタの盾って戦闘で使うと強いのかなあ、とベイケは気になった。ギルベキスタは戦闘でその盾を使っていたから聖遺物として残っているのだろう。世界魔術師ギルベキスタが戦闘に使うほどの盾なのだ。それは凄い重要な装備なのだろう。ギルベキスタの盾は装飾品でも芸術品でもなく、武具なのだ。
贋作の盾をそれぞれの兵士に持たせて、戦いが明らかに有利になる盾があったら、それがギルベキスタの盾かもしれない。そんなことをすれば、本物か偽物か確かめられるかもしれないなあとベイケは思った。
四人は、その後、疲れを癒すために宿で一泊して夜をすごした。
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