依頼主への報告

 四人は宿で一泊して夜をすごした。

 そして、次の日になると、大富豪グラッドの屋敷に向かった。

 大富豪グラッドは、ベイケたちがギリニーの領主の聖遺物を見てきたが、それは贋作の可能性が高いことを聞くと、動揺を隠せないようだった。

「やはり、複数の聖遺物が出まわっているんだな」

 口には出さないものの、大富豪グラッドが落札した聖遺物は贋作の可能性が高い。競売場に問い合わせているが、競売場はこれ以上の対応はできないとしぶっている。

 大富豪グラッドは顔を両手で覆い、悩んでいる。

「まだ、私の聖遺物が真作なんだという可能性を感じている。みんなはどうせ贋作だと笑っているようだがね。だから、私の聖遺物を手放す気はないんだ。私の聖遺物を盗もうとする者もいるようだ」

 大富豪グラッドがいう。

「例え贋作でも、面白いので聖遺物はぜひ手元に置いておくべきですよ」

 ベイケがいう。

「はははははっ、そうだな。贋作でも聖遺物が置いてあるのは面白いかもしれん」

 グラッドがいう。

 すでに三つの聖遺物を確認した。少なくとも、そのうち二つは贋作だということになる。これだけたくさんの聖遺物が出まわっているということは、おそらく、誰かが贋作を意図的に作っているのだ。

「ご主人さま、ぜひお知らせしたいことがあります」

 使用人がやってきて告げた。顔に汗をかいている。

 四人はその報告に嫌な予感がした。

「なんだ」

 グラッドが答える。

 使用人は、そわそわしながら次のことばをいった。

「本物の聖遺物を所持していた賢明なる老婆が、聖遺物を盗まれたといううわさがたっています」

 それを聞いたものは、みんな、胸がつぶれる思いだった。

 グラッドは顔をふさいだ両手を離さない。

「その老婆の聖遺物が本物だという根拠は何だ」

 グラッドはいう。

「私は知りません」

 使用人が答える。

「贋作がひとつ増えたということだな」

「そうです」

 グラッドと使用人が話す。

「その老婆のところへ行ってみよう」

 ベイケがいった。

 大富豪グラッドは、老婆が持っていた聖遺物が本物かどうか気になったが、自分の聖遺物も盗まれるかもしれないという可能性も気になった。贋作を買わせ、それを盗むところまでが贋作商人たちの計画なのかもしれない。贋作であっても盗まれたくはないものだ。贋作に愛着がわいてきたのか。バカな、それではいけない。あくまでも本物の聖遺物を手に入れ、守るのだ。大富豪グラッドはそんなことを考えた。

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