賢明なる老婆

 老婆の家はグラッドと同じ町にあった。近くにあるので、すぐに見つかった。

 ベイケたち四人が老婆の家に入っていくと、数人の大人が集まり、わいわい話をしていた。

「本物の聖遺物が盗まれたというのはこの家ですか」

 ベイケがいう。

 老婆と大人たちがベイケに視線を向ける。

「そうじゃ」

 老婆がいう。

「盗まれた聖遺物が本物だという根拠は何ですか」

「ない」

 老婆がいう。

「どうやって手に入れたのですか」

「古い貴族だという知人から譲り受けたものだ」

 老婆がいう。

「盗んで行ったのは誰ですか」

「そんなことを聞いてどうするんだ」

 老婆がいう。

「聖遺物の贋作事件に関わってしまったので、気になるんです」

 ベイケがいう。

「それなら、おまえたち、私が盗まれた聖遺物を取り返してきてくれないか」

 老婆がいう。

「聖遺物を盗んで行ったのは誰なんです」

「盗賊鬼だ。やつらが寝泊まりしている場所はわかっている」

 老婆が答えた。

 盗賊鬼はグラッドの聖遺物を移動させている時に襲撃してきたやつらだな。

 盗賊鬼は聖遺物を好んで盗み出そうとしているのだろうか。

「よし。それなら取り返しに行ってみるか」

 ベイケがいった。

「おい、贋作を命をかけて取り戻しにいくのか」

 ミシアが指摘した。

 それもそうだなあ、とウォブルがいぶかしがる。

「この贋作事件、解決しないとまずい気がする」

 ベイケがいった。

「そうだぞ。よくいった少年。たぶん、贋作のせいで大富豪たちは知らず知らず泡を吹いているぞ」

 ノアミーがいう。

 そして、四人は盗まれた聖遺物を取り返しに行くことが決まったのだった。

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