遺跡の調理室
ベイケは順番に教会遺跡のドアを開けていった。最初のドアは、控室。二番目のドアは、食堂。三番目のドアは調理室。四番目のドアは接客室になっていた。
四人は調理室に入った。食材と料理器具が棚に置いてある。大勢の来客用だろうか大鍋がある。
「何か食うか」
ベイケがいうと、ミシアは
「腐っているんじゃないの」
といった。
「食べてみなければわからないだろ」
とベイケはいい、
「お弁当は持ってきてないぞ」
とミシアはいう。
「やっぱり、食べるしかないだろう」
ベイケが調理室の食材を棚から出して、料理を始めた。さまざまな食材を包丁で切りさばいたり、油を使ったり、フライパンで焼いた。そして、とろみのあるスープを作っていく。米は油で炒めて、ぱさぱさしたライスにする。
ベイケの料理はなかなか手際がいいが、こんなところで料理を張り切ってどうするんだろう。ベイケの行動の意図が見えない。
「本当に食べるの」
ノアミーが驚くと、
「おれの毒毒料理がすぐに完成するぞ」
とベイケがいった。
ミシアとノアミーとウォブルは、この遺跡調査でいちばんの難所はこの料理だなと予想し始めた。三千年間も腐敗していた食材が美味しい料理になるわけがない。
それから、二十分。ベイケが四人分の料理を完成させた。ライスにどろっとしたスープがかけてある。
「食え」
ベイケが偉そうにいう。
「これは誰か味見がいるでしょ。食べたら死ぬんじゃない」
ミシアが嫌がる。
「ウォブル」
ノアミーが促す。ノアミーは不利な役は他人に任せる。
「しかたがないな」
ウォブルがスプーンを持つ。ウォブルがどうするのかみんなが注目した。
そしたらなんと、ウォブルは食べた。
「おおお」
女たちが拍手をする。この料理を最初に食べることができるものはただものではない。これはそう簡単に真似することができることではない。
「どうだ、味は」
料理人ベイケが聞くと、ウォブルは、
「なかなか、美味しいんじゃない」
と得意げだ。
「だろ」
「だな」
ベイケとウォブルは視線で了解する。料理人ベイケは、自分の料理を味わう者がいて満足だ。
「どうも、食べられるらしいな」
「そうだね」
とミシアとノアミーが食べ始めた。
ベイケも、自分の皿の分を食べる。
ベイケは毒魔術で腐敗した食材を食べられる食材に変えることができるのだ。
四人は毒毒料理を味わった。その料理が美味しかったことはみんなが認めることとなった。
食べ終わると、ちゃんと食器を洗ってもとの棚に戻した。
教会遺跡の調理室での出来事だった。
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