芝草の都で
抵抗軍はとうとう芝草の都にたどりついた。芝草人形たちの首都だ。ここから四人を異端討伐するための芝草兵士たちが派遣されてきたのだ。
芝草の都は、城壁などなく、木の柵で囲われていただけなので、抵抗軍は木の柵を押し倒して、いっきに都の中へ攻め込んだ。
四人も芝草の都の中に入る。芝草兵士がたくさんいて、槍や棍棒で攻撃してくる。四人は目の前の芝草兵士を瞬殺する。
四人は芝草司令官がいそうな建物を狙って襲撃した。芝草兵士の命令系統がどうなっているのかわからない。司令官を倒さなければならない。
まだベイケが倒した芝草兵士の数は千体にはとても届かない。まだ一騎当千ではない。一騎当千の武者は、こんな戦いをもっとたくさん潜り抜けて勝ちつづけたのだ。
ベイケが毒魔術で芝草兵士を倒す。
ミシアが杖の斬撃(物理魔術)で芝草兵士を倒す。
ノアミーが雷撃で芝草兵士を倒す。
ウォブルが重力操作で芝草兵士を倒す。
四人は建物に押し入り、中を確認していく。この都を攻め落とすには、この都を理解しなければならない。抵抗軍の司令部に、どの建物が中に入ったらどんな建物だったかを次々と報告していく。
どこを攻め落としたらいいんだ。指示をくれ。ベイケは抵抗軍の司令部に心の中で問いかけた。
芝草の都は広い。いざ敵の都にたどりつくと、どうしてよいのかわからず、焦燥感にかられた。
「大丈夫だ。敵の急所はすぐに判明する。時間の問題だ。この都は攻め落とせる」
抵抗軍の魔術師が話している。
芝草人形はいつ頃から人類を支配してきたのだろうか。教会がまだあった頃から、異端審査機関として人類を支配してきたのではないだろうか。ギルベキスタは教会を滅ぼしたが、異端審査機関は滅ぼさなかったのだ。いったい何があったのだろうか。
芝草人形の中には魔術を使えるものがいる。芝草人形の魔術師は存在する。ひょっとしたら、芝草人形の世界魔術師もいるかもしれない。芝草人形も生き物なのだから、それぞれの個体が魔力を持っているはずだ。それが成長したら、世界魔術師になる可能性も存在する。
世界魔術師たちはなぜ芝草人形を滅ぼさなかったのだろうか。あのくだらない異端裁判で何が決まるというのか。
ベイケは槍を持った芝草兵士を毒魔術で倒した。ミシアも、ノアミーも、ウォブルも、芝草兵士と戦っている。まだ、四人は無傷だ。
体力をかなり消耗して、魔力が限界まで疲労しているが、まだ無傷だ。
ベイケが毒魔術で三体の芝草兵士を一度に倒した。
ミシアが杖の斬撃(物理魔術)で三体の芝草兵士を一度に倒した。
ノアミーが雷撃で三体の芝草兵士を一度に倒した。
ウォブルが重力操作で三体の芝草兵士を一度に倒した。
芝草人形の家に押し入り、芝草人形が横たわっているのを見た。順番に芝草人形の家を見てまわり、芝草兵士が根城にしていそうな拠点を探した。
芝草兵士を見つけたら、手当たり次第に倒していく。油断はできない。槍を突いてくる芝草兵士をベイケが毒魔術で倒す。
大きな建物は気になってしまうので、優先的に侵入していった。建物の中を見てまわるのに一時間以上かかることもあった。
どこに芝草司令官がいるんだ。
四人が困っていると、抵抗軍の司令部から芝草兵士の兵舎を見つけたと知らせがあり、そこを攻めることにした。
芝草兵士の兵舎に行く途中で、別の芝草兵士と戦闘になり、ベイケは毒魔術で倒した。
兵舎に着くと、すでに他の抵抗軍の魔術師が戦っているところだった。人と芝草兵士が入り乱れているので、味方を攻撃しないように慎重に狙いを定めるのが難しかった。狙いすまして、ベイケは毒魔術を放ったが、こんな支援でよいのか心配になってしまった。だが、味方を信頼して落ち着いているしかない。
ベイケは、兵舎で時々、毒魔術を放つだけで数時間をすごした。兵舎の戦いは長いことつづいた。
ベイケは、毒栄養で抵抗軍の魔術師の傷を治療した。
「この兵舎から抵抗軍の基地まで攻めてきていたのか」
「そういうことだろうな」
それなら、戦いの勝利も近いかもしれない。ベイケの胸に熱いものが感じられる。気が付くと、顔に汗が流れている。
しかし、この兵舎に芝草司令官がいるのだろうか。司令部は別の場所にあるのではないか。
火炎魔術や氷結魔術で芝草兵士と戦っている抵抗軍の魔術師の支援で、毒魔術を放ったり、毒栄養で治療したりしていた。建物の中で一度に攻め込めない。
「ようし、壁をぶっ壊すぞ」
ウォブルがそういって、重力操作で建物を壊し始めた。芝草兵士が隠れている部屋の壁がうまく壊れて、そこをいっきに抵抗軍が攻めた。ベイケも毒魔術を放った。
兵舎の戦いがひと区切りつきそうになってきた。
ベイケは次に狙う建物はどこか見まわしてみた。いくつかの建物で戦いが起きているのが見える。
「あっちの建物の壁もウォブルにぶっ壊してもらえばいいんじゃないか」
ミシアがいうと、
「よしきた」
とウォブルが引き受けて、ウォブルは壁ぶっ壊し役になり、活躍した。
「おれも壁をぶっ壊すぜえ」
とベイケが毒魔術で壁を腐食してぶっ壊した。
芝草兵士はまだまだ襲って来て、戦いはつづいた。
槍を持って芝草兵士がたくさん歩いている。こちらに気付くと襲ってくる。何万体といるのだ。芝草兵士をすべて倒すまで相当な時間がかかる。
ベイケたちは芝草兵士と出くわすたびに戦い、魔術を使って倒した。いったいこれで何体の芝草兵士を倒したのか、数がわかったら教えてほしいとベイケは思った。
ベイケたちの攻撃に、芝草兵士は総出の戦いを準備して、総出で襲ってきている。ベイケたちは負けるわけにはいかない。異端裁判を押し付けた権力者である芝草人形を根幹から倒してしまわなければ、ベイケたちに安住の地はないのだ。
芝草兵士たちは何を考えて、人類の魔術師を異端裁判にかけていたのだろうか。正統か異端かが別の種族によって決められることに驚異を感じずにはいられない。
芝草兵士たちが、人類の知らない正統な教義を守るために、人類の魔術師すべてを異端だと裁いて襲ってくる。人類と芝草兵士の長い長い戦いはまだ続く。
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