第29話 色気よりも食い意地

 

 一ノ瀬さんが空をゲームに誘ってることをしゃあなし、空に報告してみた。


 sky:【ほぉ、あおの彼女である、マドンナがそんなことを言ってきたんだ…………よかろうその挑戦受けてたとうじゃないか!くっくく】


 実家に帰省中の空に連絡したら、秒でそんな返事が返ってきた。

 なんかテンションがおかしかった気がするけど、なんか嫌なことでもあったのかな?


 たぶん実家が何もなくて悲しかったんだろうな。

 長野は山と自然と城とかしかないから…………。


 まぁとりあえず3人でゲームはできるのか……できちゃうのかぁ。

 なんとも気が重い。


 ただ空に聞いた手前一ノ瀬さんに報告しなきゃと思い報告したら、


 【やったぁ巨乳幼馴染だぁぁえへへぇ】


 マドンナは大変興奮されていらっしゃった。

 その次に送られてきた文章だと……


 【祝い酒だ祝い酒~、あータバコもおいしー!】


 めっちゃマドンナらしからぬことも言い始めた。

 しかもそのまま変なテンションになってしまい……


 【おぬしもちこうよれちこうよれ】


 悪徳代官みたいなことまで言い始める始末、しかも電話で。


 「ちこうよれって俺今家なんですけど……あなたの近くにいないんですが」


 【わしも家じゃ!】


 なぜに武士言葉?

 そして案外近くにいた。


 「…………しゃべり方どうしたの?」


 【気分じゃ!!】


 気分かぁ…………気分ならしょうがない。

 

 「…………切っていい?」


 【いーよー、じゃあ5分後にベランダで!】

 

 「えぅっ」


 直接話したいから電話切りたいみたいなそういう乙女チックなこと言いたいんじゃないんだけど?!一ノ瀬さんのダルがらみを避けたいだけなんだけど?!


 【あははすっごい声でたねぇ】


 「…………いや驚きのあまり」


 【え、うれしさのあまり?!】


 「おどろき!」


 どんな聞き間違いしてるんだよ。

 なんでベランダに出るのがそんなうれしいんだよ。 寒いだけじゃん!


 【…………なんで驚き?】


 「いやー普通にいきなり家とかじゃなくて、ベランダで会おうって言われたらびっくりしない?!」


 【だっていきなり家とか…………エッチじゃない?】


 えっちじゃない?

 エッチじゃない?


 【…………おーい】


 「はっ?!意識飛んで!」


 脳内で【エッチじゃない?】の木霊がまだ響いている。


 「もう一回!」


 【…………やだよ、なんか言動がいやらしい】


 ちっ、聞きたかったのに。

 

 というか今まで何回も家にきて料理してご飯食べていませんでしたっけ?今更じゃない?

 言おうとしてやめた…………これ絶対深い意味はないし、一ノ瀬さんだし。

 

 【というか早くベランダで話しながら、お酒飲もうよ!】


 「えーだって寒いし…………寒いし」


 【理由それだけじゃん】


 「俺、寒いって立派な理由だと思うんだよね」


 だって寒いと風邪ひいちゃうかもしれんし。あと普通に凍える。


 【寒くても大丈夫じゃん、だって葵君童貞じゃん葵君の認識の中では!】


 …………

 ……………………ん?

 うんん???


 「いや100歩譲って馬鹿とかならわかるよ? 馬鹿とかならね?……いやおれ馬鹿じゃないけど、普通だけど? でもそれならわかるよ。ことわざかなんかもあるからね【馬鹿は風邪ひかない】、みたいなさ! ……でも童貞にはないよ? 童貞は風邪ちゃんとひくよ!」


 【じゃあ試してみよう】


 「サイコパスかよ!その場合被害どっちにしても俺じゃん!」


 【でもさ考えてみて? 童貞なんだよ…………】


 「…………うん?」


 【ということは女性のおっぱいがチラ見えしてたら目で凝視しちゃう生物なんだよ童貞って!】


 そんな連呼しなくてもいいんじゃないかな童貞って。

 童貞だけどさ、俺シュレディンガーの童貞だけどさ!


 一ノ瀬さんはもう、童貞研究科か何かなのか?


 【だから単純だと思うよ童貞って!違う?】


 童貞が単純か単純じゃないか…………そんなの女性相手に対しては簡単である。


 「ちがく……ないっす…………たぶん」


 【葵君知ってる? 世の中にはこんな言葉があるんだよ?『単細胞バカ』って言葉が】


 「…………ありますねぇ」


 【ということは単純=ばかって成り立つわけよ、つまり童貞=単純だから、童貞=馬鹿も成り立つわけよ!】


 a=b,b=c,a=cみたいな話?


 す、数学は嫌だ!!

 

 な、なんか違う気もするけど、上手く言い返せない!!

 くぅぅ、負けたぁぁぁ、数学アレルギーがぁぁぁぁっ?!


 「…………ふっ」


 【なにも言えないからってニヒルな感じ出すのやめて?…………しょうがないなぁ、そんなに渋る君をやる気にさせる言葉を与えましょう】


 「ほぅ…………」


 それは期待できる。


 【わたしいま……………………】


 めっちゃ貯めるな。

 なんかドキドキしてきた。


 「猫耳つけてるよ?」


 ……………………ほぉ?


 「わ、悪くないねぇ」


 いい。

 すごくいい、見たい、そのまま出てきてほしい。


 でも待って。ここで我慢したらもっとすごいもの出てくるんじゃない?


 【あれ?思ったより反応薄いね?!】


 「……いや十分驚いてるよ、外に出ようかなぁってベランダに出ようかなって半分くらい思ったよ」


 【まじ?! 葵君目が肥えてきたんじゃないの】


 猫耳一回見たけどめちゃよかったし!見たいけど!

 あの時はギャルだって思ってたけど、マドンナと知った今、また違った良さがあるよね、うん。


 「まぁ慣れはあるかもしれない、普段マドンナを見てるんで!」


 【贅沢な悩みだねぇ…………慣れってこわっ】


 「ふっ、俺も成長するから…………」


 いつまでもおっぱいチラ見せされて、興奮しっぱなしの俺じゃないってことだよね。


 【うーん、じゃあおっぱいチラ見せでももう興奮しないかぁ…………どうしよ】


 これは一ノ瀬さんの独り言。

 でもちょっと聞き逃せない言葉があった。


 普通におっぱいチラ見せでもそれは大興奮だよ?

 全然ウェルカムで、そんなえっちぃ感じで来るならもう全然ベランダにいくらでも出るけど?

 いや待てここは気遣ってるふりして紳士の振りもしとこう!


 「…………いやそんなふしだらな格好で来るのはよくない!一ノ瀬さんが風邪ひいては元も子もないよ?」


 【これは全然まだまだいけそうだね、頑張って紳士ぶって虚勢を張っている感じがする】


 なんでそんなに俺の心情をこの言葉から把握できるの?!

 普通にポーカーフェイスしてるんだけどなぁ……まぁ顔すら見えないけど。


 【うーん、だったらどうしようかなぁ…………あ】


 なんか名案を思い付いたらしい。


 【おでん作ってあるんだけど、寒い中で食べるのは乙なもんじゃない??】


 寒空の中の…………おでん?!


 【さ、さすがにおでんがおっぱいに──】


 「──今から外出ますベランダ行きます、GO NOW!」


 【うぇ?!】


 「一分が名残惜しい、ちょうどお腹空いてたんですよね!」


 【自分で言っててなんだけどさ、ちょっとそれはどうかと思うよ? 猫耳がおでんに負けるなんて】


 なんか一ノ瀬さんが無駄に敗北感を味わっている。

 まぁでもそんなことはどうでもいい。


 「寒空の中で、熱々のおでんをお酒と一緒にきれいな夜景とともに食べる、最高じゃないか!」


 【うわ出た、葵君の無駄にロマンチストなところ。…………まぁいいやじゃあ外出るね】


 「はやく!」


 おでんおでんおでん♪

 熱々で食べるお・で・ん♪


 何気ない春休みが最高になったなぁ……。


 意気揚々と外に出る。

 でもそれはそれとしてうわ寒っ…………。


 「…………あれ?」


 ちょっと待てよ?

 俺今おでんにつられて、意気揚々と出てきたけどあれ?俺着替えてなくね?

 ふつうに寒くね?


 まだ一ノ瀬さんも出てきてなさそうだし、今ならまだ気づかれずに、


 「うわぁさっむ!」


 と思ったら出てきたぁぁぁぁ。


 「葵くーんいるぅ?というかいるよねぇ?だって窓開ける音うっすら聞こえたもん!」


 そんな生活音聞こえるの?!


 「…………いまーす」


 「おっけおっけ、非常扉越しだけど乾杯しよーよ乾杯、さすがに熱燗はないからビールだけどね~」


 「…………ういっす」


 しぶしぶ、俺は一ノ瀬さんの近くに。

 うぅミスったぁ。


 「じゃ、かんぱー…………ちょっと待って」


 「はい?」


 「え、なんで半袖なの? さっき風邪がどうのとか言ってたのに何で半袖なの? 一応まだ3月なんですけど…………えぇ」


 一ノ瀬さんが珍しくドン引きしている。


 「ちょ、ちょっと言い訳させて!」


 さすがにその認識は訂正したい。

 俺は非常に、どうしようもなく、限りなく合理的な理由を懇切丁寧に伝えた。

 なのに一ノ瀬さんは…………


 「え、つまりおでんが楽しみでうきうきして出てきちゃったってことじゃん?やっぱバカじゃね?」


 「ね、猫耳が楽しみかもしれないじゃん!」


 「…………それどっちが目的でも結局は目的のものが変わっただけで、うきうきして何も考えてなかったのはほとんど変わらなくない?」


 …………確かに。


 「つまりあれだ、葵君は馬鹿なんかじゃなかったってわけだ」


 「…………ん?」


 「超単細胞だったってわけだね!」


 ぐふっ。

 それ超馬鹿ってことじゃん。

 

 「ほんとにいるんだね、色気より食い気の人って」


 「ありがと」


 なんかいきなり褒められたんだけど。

 

 「いや葵君の場合はまんまだけどね、ことわざの意味じゃなくて言葉通り、ほめてないよ? 一応言っておくけど」


 食い意地が張っているということですかそうですか。


 「俺どっちもあるよ」


 性欲もちゃんとある、おっぱいすきおしりもすき、全部好き。


 「はいはい、いいから服着てきな。見てるこっちが寒くなっちゃうからさ!それまでおでんはお預けね?」


 「今すぐ行ってくる!」


 「…………本当に食い気じゃん!」


 そんな声が後ろから聞こえてきたけど、関係ない。

 だって後ろには一ノ瀬さんのおでんが待っているんだから。


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 今日カクヨムコン最終日のため、連投します!

 じゃあまず1話目!


 おでんがおいしい時期…………


 お疲れ様です!

 お読みいただきありがとうございます!もし良ければ、下の☆ボタンで評価していただけたら幸いです。

 レビューとか来たらうれしいな…………|д゚)

 冗談です笑


 あと沢山のフォローと応援ありがとうございます。お気軽にコメントしてください。酒かすヒロイン草、やにカスヒロインらぶとかでも全然うれしいです!


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タイトルは

「正妻戦争~ハーレム嫌いの俺が悪役令嬢、ドS美人教師、腹黒同級生……etc.という超癖ありハーレムを創る羽目になった訳」


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 ではでは。

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