第31話 マッチョとジム


 

 おでんを食べてから数日。

 俺はマッチョと向かい合っていた。

 

 「まだまだイケルわよー!ほら自分の筋肉をいじめぬきなさーい、ほらワンツーワンツー、大胸筋がひびいてるー!」


 「ぜぇ、はぁはぁ」


 何言ってんだこのマッチョハゲは。

 一ノ瀬さんの紹介でジムに来た。来たんだけど、何だこのマッチョハゲは。

 キャラが濃すぎる。

  

 ……休みとは早いものであっという間に過ぎていく。

 なんでほんとに長期休みってすぐ溶けていくんだろう。 終わってほしくなんてないのに…………

 なんて考えてたのにでもはやくこの時間は終わってほしい…………。

 

  「まだまだよー!あなたの前腕二頭筋はそんなもんじゃないわー!もっと輝かせてあげてーー!ほらがんばれがんばれ前腕二頭筋がんばれがんばれ前腕二頭筋!」


 やばいあまりの光景に思わず現実逃避してた。

 

 というか腕は輝かないと思う…………。

 あ、だからって自分の腕を見せつけるのはやめてください、そんな感じにもりっとなるのは特殊な訓練を受けた人しかなりません。

 つらい。もう色々辛い。

 あと歯が綺麗。


 ……ついこないだ長期休みに入ったばかりだと思ったら、気づいたらもうあと2ー3週間しかない。

 マジで早すぎる。早すぎて時代についていけない。

 ついでにこのマッチョはげの指導にもついていけそうにない。


 そんな風に自己逃避のために、過去に思いをはせていると、


「最初なのによく頑張ったわねえ、えらーいえらーいご褒美上げるわ、ちゅ!」


「おえっ」


 なんか投げキッス飛んできた。ついでにウインク付き。

 え、なんかデスビーム飛んできたんですけど。


 こわ。直撃食らうところだったわ。


 とはいえ、俺もなんだかんだあの日からちゃんと行動した、身の安全のために。

 まずジムとかを探し始めた。……まあ結局よく分からなくて、一ノ瀬さん行きつけのジムを体験して見ることにしたんだが。


 なんか知り合いがやっているジムらしく、格安で入れてくれるそう。


 そうして来た結果………………このデスビームだ。

 

 「ナイス反射神経! でももう少し体全体で動いた方がいいわよ、でも葵きゅんにはまだその動きは速いわ」


 なんだまだその動きは速いって、首だけで投げキッスを回避しただけなんだけど。

 全力でよけろ、ということか。


 …………じゃあそもそも投げキッスやめてもらっていいですかね?

 あとあおいきゅんってのやめてください、なんか背筋が凍るんで。


 体験を初めてからもう30分以上たっている。

 今日は初体験ということもあり、ほどほどにしてると思うよーって一ノ瀬さんも言っていた。

 ………これがほどほど、か。


 ちなみにこのジム。

 一ノ瀬さんと来たけど、パーソナルジムで、男女エリアは別でやってるらしい。

 だから一ノ瀬さんの姿は見えない。


 男性は男性トレーナー、女性は女性トレーナーらしい。

 この人本当に男なのかな。

 いや男らしいっちゃ男らしいけど、なんか言動が。ねぇ?


 ……ジムって大変なんだなぁ。

 非力な大学生にはきつい…………よし疲労回復のためにことあとがっつりと次郎系ラーメンでも食べよう、あとお酒も。うん、そうしよう。

 そうして疲労回復だ(迷走)


 そんな風に考えていたら、俺のジムトレーナー本名田中健さんが手をぱんぱんとたたく


 「それじゃあ準備体操は終わりー!じゃあそろそろ本番いきましょー!」


 え、まだ準備運動なの?

 準備運動からそのテンションなの!?

 俺本番終わったら死んじゃうよ、そのテンションのまま行かれると。


「安心してあおいきゅん」


 だから葵きゅんやめてもろて。

 怖いから、めっちゃ怖いから。


 「いつもは3分間サンドバックを全力で殴ってもらうことをするんだけど~…………」


 確かにそれはきつそう。

 でも3分か。


 まぁカップラーメンができる時間だし、まぁ頑張れば行けそう。

 ウルトラマ〇の限界値も3分だから、いけるはず。


 「その合間に私が手取り足取りフォームを指導するからねん!」


 「手、手取り足取り?」

 

 「そ、あ、安心して!ちゃんとさぼってなければ口頭で注意するようにするからー!あ、でも私に触れられたかったら全然手を抜いちゃってくれてもいいのよーん」

 

 「ちゃんとやります!」


 決意をした。

 俺はちゃんと戦う。このマッチョハゲと。


 「あらあらい・け・ず♡きつかったらいつでもリタイアしてくれても大丈夫だからねん、初心者さんだし無理しちゃいがちだからね~」


 まぁ俺は自分の限界をちゃんとわかっている人間だからね、きちんと適切なタイミングで休ませていただくけどね?


 「…………あ、でも夢ちゃんは今までなんだかんだリタイアしたことはないなー」


 思い出したようにそんなことをのたまうこのマッチョ禿もとい田中健。


 その情報いるかな。

 本当にその情報いるかな?


 にっこりとこのはげ、笑ってやがる。

 暗に言っている。

 あの非力そうなマドンナでもできたのに、その紹介で入ってきたお前がリタイアすんの?

 え、え、?お前本当にゴールデンボールついてんのか?

 よくこの頭のことを3個目のゴールデンボールとか言ってくるやつもいるが、お前にはそもそもついいてないのか?!


 って。


 そういっている気がする、あの笑顔が。


 はっははは。

 やってやろうじゃないか。

 その挑戦受けて立ちましょう。


 これでも高校では体育の成績4もとったことあるんだぞ?

 なめてもらっちゃ困るって話よ。


 「じゃあ改めて紹介するわね~、3分間サンドバックをワンツーで殴って頂戴、それで30秒休んでまた全力で殴る」


 …………また全力で殴、る?

 

 「あれ、それ1回きりじゃないの?」

 

 「まさか1回なわけないじゃない、そんなんじゃ全く自分の筋肉は満足しないわよ?」


 …………筋肉は主張しないと思う、


 「…………それともきつそうだからやめておく?やっぱ初心者さんだしね、優しめのコースに──」


 「──いえやらせていただきます!」


 その挑戦的な感じなめられたら俺は真の玉無し男になってしまう。

 なんかそんなことを言われている気がする、第3の金の球を持つ男、もとい加藤健から。


 「ふっ、その意気やよし!どこまでできるか見せてもらおうじゃない! あおいきゅんのがんなりはちゃんと夢ちゃんにも伝えるからね」


 な、なおさらまけられねぇ!!

 すぐへばったら絶対馬鹿にされる。

 一部の界隈の人にはご褒美かもしれないけど、生憎と俺に罵られて喜ぶ趣味はないから。


 

 「じゃ、12セット!! 頑張っていきまっしょ!!」


 「12セット?!」


 ちょっと待ってそれは話が違う。

 そんな量だとは聞いてない!


 というか、これで軽い量って…………絶望。



 「…………ぜぇぜぇひ、ひぬぅ」


 「あらら健さん見事に葵君死んでるねぇ」


 上には一ノ瀬さんがスポーティーな姿で汗を拭いている。


 「頑張ってたんだけどねぇ、普段あんまり動いてなさそうなのにへばりながらも最後までパンチうってたわ」


 「お、頑張ったじゃん」


 一ノ瀬さんが優しく微笑む。

 

 「ふっ」


 「絶対今話せないからせめて格好つけようと笑ってるんだよね、たぶん。でも四つん這いで死んでる姿でやってもかっこつかないよ」


 だよね、知ってた!


 今四つん這いでしか動けない…………肺が肺がぁぁぁ・

 俺、無事、5セット目で死亡しました。

 む、無念…………。


 俺はウルトラ〇ンじゃなかった。

 なんも鍛えてない人にそんな動きは無理だった……。



  ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 3話目!

 新ヒロイン!…………じゃなかった新キャラマッチョ笑


 次回とうとうマドンナと幼馴染が…………


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