第22話 姉のダル絡み


 あれから30分ぐらいして、一ノ瀬さんには部屋から出て行ってもらった。

 一ノ瀬さん提案の、「ベランダから外に出ようか、間男みたいに!」っていう提案は無事お見送りにした。

 というか、どんだけ修羅場が好きなんだよ一ノ瀬さん。



 もしかして、NTRがすき、とか?



 …………いや余計なことを考えるのはやめよ。

 今度一応俺はNTRは嫌いですって言っておこう。


 性癖を暴露するわけではないし、偽装彼女ではあるとはいえ、なんか、ね? 

 そういうことになると、もやっとして大ダメージ受けそうだから。

 前回の彼女も気づいたらなんかいなくなってたしな、あれはNTRとはまた違うけど。


 「気が重いなぁ」


 家に帰りたくなる気持ちを奮い立たせてわが姉がいるロイホへ。

 姉がいるのはなんの因果か前に幼馴染と話したロイホ、なんか知らぬ間に常連になりそう。


 中に入って席を見渡せば、すぐに姉の姿は分かった。

 テーブルいっぱいに料理を食べる女性の姿。

 はぁ変わらないな相変わらず。


 長い髪を一つに束ね、きつめのメイクを顔に施している。

 見るものを威圧するそんな雰囲気が自然と出てる。


 スタイルはよく、きりっとした目鼻立ちで、顔だけ見れば整っている。

 ……今はがっついてご飯を食べているせいで、そんな整った顔立ちも台無しだけど。


 俺はため息をつきながら、席に着く。

 

 「……さすがに食いすぎじゃねぇ、お前」


 「はぁ?待たせておいてそれはないんじゃない?」


 姉はジト目でこちらを睨みながらもエビフライを豪快に一口。


 「待たせたっていっても腹痛はしょうがないだろ、だって腹痛だもん」


 本当は一ノ瀬さんがいたからだけどバカ正直に言うつもりはない。


 「ご飯食べてるときに汚い話すんなっての!」


 「じゃあ聞かないでくれない?!」


 理不尽だ!


 「そりゃ弟がなめたこと言ったらそういうだろ普通!」


 売り言葉に買い言葉。いつも通りの姉との会話。

 ああ言えばこう言う、俺らはお互いに一歩も引かない。

 そんなことでひとしきり罵倒しあったあと……


 「…………そんで?」


 「え、何が?」


 今度はポテトを頬張ってる。揚げ物多くない?

 見てるこっちが胃もたれしそうなんだけど。


 「いやなにがじゃなくてどしたん? 何しに来たん?」


 「え、企業説明会」


 なにを当然のことを、とばかりのわが姉風香の顔。

 ……そっか3月だもんな、説明会とかもるのか。


 にしても──


 「──え、風香が就活?」


 「そりゃそうでしょ、今年大学4年になるわけだし」


 「いやそれはわかっているんだけど…………」


 「じゃあなに」


 パクリ。とハンバーグを一口。


 口でっかいなおい。

 ご飯一皿いつのまにかもうなくなってるし。


 「てっきり自宅でニートをやるか、どっかに嫁として就職するのかと思ってたんだよ。それか起業するか」


 常々働きたくない、金だけほしい、なんて言っているから。

 OLとして誰かの下で働いている姿が想像できない。


 「ばーか、ニートなんてうちの親が許してくれるわけないだろうが。というかせっかく一人暮らしして、親の監視から逃れたと思ったら強制送還ってなによこの仕打ち」


 文句をたれながらもご飯を食う手は止まらない。


 「気づいたら、我が家は葵のものになってるし、私はオンラインのままだし、成績だけはめっちゃよくなっちゃうし。…………彼氏にはふられるし」


 どうやら彼氏にふられたらしい。

 めんどくさくなりそうだし、この話は触れないようにしとこ。


 「じゃあ就活のために来たってこと?」


 「そそ、大規模な企業説明会あるでしょー、幕張で。……それで彼氏に振られたのよ」


 「あーね、じゃあ風香は結構大手のとか受けていく感じになるんだね」


 あーいう大規模な説明会は確か大企業とかしか来ないイメージなんだよな。


 「そんなとこ、内定自体は地元の方ですでに出てて、返事の期限は夏までと比較的良心的な会社だからってのもあるわよ…………それで彼氏に振られた」

 

 「すでに内定取ってるあたり風香って感じだよな。これでなんで単位おとしたのか、遊びつくしててもうまくやりそうなもんなのに」


 実際わが姉ながら能力はめっちゃ高いと思うんだよなぁ、弟目線からして。


 「そりゃ体調悪くならなければなんとかなったわよ、出席それだけ足りなくて…………。 私普段体調悪くなることないからギリギリで生きてたのが裏目に出た。まさか大学生一人で寝込むのがあんなにつらいとは…………。はぁあの時は彼氏にまだ頼れない時期で…………。うぅ振られた」


 さっきから振られた振られたうるさい。しかも振られたのその彼氏じゃないだろ。

 てか死ぬほどめんどくさい。

 控えめに言って、酔ってダルがらみしてきた、一ノ瀬さんの3倍はめんどくさい。


 「…………めんどくせぇ」


 「声に出てる!そろそろちゃんと聞いて!」


 やけ酒ならぬ、やけ食いを披露するわが姉。

 いや、これ酒も飲んでるな。開いたグラス置いてあるし。


 なんで俺の周りには昼から酒飲むやつが多いんだ。


 「誰がめんどくさい話をきかなあかんねん!こちとら病み上がりだぞ!」


 本当は元気だけど全然。

 

 「分かったここのご飯奢ってやるからきいて、慰めて!」


 普段ならそれで全然聞く。聞くんだけどなぁ。

 …………でも今回はなぁ──

 

 「──俺今普通にお腹すいてないけど?」


 「うるさいいいから食べな!というかきけ!」


 もうこのテンション、マジでめんどくさい。泣きたい。


 「…………はぁじゃあステーキ頼むわ」


 「はぁ?あんたばかぁ?お腹壊したんじゃないの?もっと消化いいものにしなさいよ」


 そこだけいきなり、テンション変わるなよ。

 あとアスカやめて。


 「そんな消化いいもの外食にはないだろ」


 「…………これとかましなんじゃない?」


 そういって、風香が指さしたメニュー。


 「キムチチゲうどんとか、お腹に悪すぎるだろキムチが悪さしちゃう!」


 「まぁうどんだから大丈夫!」


 「うどんに信頼おきすぎだから」


 「えー、風邪ひいたときとか発汗してよかったけどなぁ……振られたぁ」


 …………それが風邪の治り遅かった原因では?

 まじでうるさいしこれずっと言うなぁ……長年の経験で分かる、はぁ聞くしかないか。


 「…………で何でふられたの?」


 「【お前は完璧すぎる、何でもでできる、俺なんていなくてもいいだろ】って……」


 「あ~」


 なるほどね、納得。


 「あーってなんだ!納得すな!」


 「いやぁ…………」


 ぶっちゃけ振った男の気持ちも理解できるっていうか。


 「良くも悪くも風香ってあんま隙ないからなぁ…………そりゃそう思われても、って思いまして」


 「元カレに共感すんな!そりゃ相手の前では完璧でかわいい私でいたいじゃん!」


 「まぁその気持ちもわかるけど、なんていうかそういう人といたら肩ひじ張るやん? だからもうちょい隙を見せたほうが、とか?」


 知らんけど。


 「童貞のくせに…………」


 「それはシンプル悪口!」


 「つまりこういうことだ、あえて隙をさらしてのこのこ来たところを、狙い撃ち!みたいな?」


 それはどちらかというと、狩りの手法じゃない?


 「昔みたいに、あの人と付き合ってた時はこんなことなかったんじゃない?」


 「…………ぬぐぅ」


 風香が押し黙る。

 結局彼女の中にはあの人の影が…………


 「そういえば空ちゃんに会ったんだけどさこないだ」


 うわめっちゃ露骨に話変えてきた!

 絶対あの人関連だろ、あの人の妹が空だし。


 「葵彼女できたんだって?どういうことだ空ちゃんを捨てたのか!この二股男!」


 そしかもひどい誤解でダル絡み来た……。

 はぁさっきの元カレの件もっと追求すればよかった。


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 レビューとか来たらうれしいな…………|д゚)

 冗談です笑


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