第18話  聞こえちゃった…… 


「いやー、エイムわっる」


 ということで起きました。時刻はもうお昼。

 空とのこともあってやりづらかったゲームを久々に起動する。

 あの後無事3度寝したおかげで体調は万全。

 

 今日空とゲームをするにあたって、ちょっとはやっておかないと。 最近は色々あってできなかったけど、今日は諸々の問題も落ち着いて、何不自由なくゲームできる!

 そう意気込んでやり始めた。やり始めたんだが…………。


 「ぜんっぜん勝てない!」


 もうね死ぬほど負けている。

 初動(最初に降りた街で戦うこと)が勝てない勝てない。仮に勝っても別のパーティーが来て負ける。


 そんなこんなですでに2時間。

 かなりのポイントを溶かしている。


 このままじゃまずい、大量にキルを取ってポイントを稼がないとまっずい。こんなに落ちてるの見たら馬鹿にされるぅぅぅ。

 ま、まだ3回くらいチャンピオンとれば取り返せる…………ふふふふ。


 

 ピンポーン。


 

 勧誘かな?

 無視しよーっと、何もアマゾンで頼んでないし。


 

 ピンポンピンポンピピポポンン。


 

 もうめっちゃ連打される。

 というか、なんか前もこんなことあった気がするな。


 「はぁ」

 

 しょうがないので、恐る恐る玄関へ。

 チェーンをちゃんと閉めてからドアを開ける。


 「……はーい」


 「あ、よかった生きてた」


 「はい?」


 

 ……なんか俺死んでるんだと思われてたの?


 

 「いやー私と付き合ったことになった直後に死なれたらさすがに目覚めが悪いからね~、さすがに未亡彼女はやだなって」


 「……だからなんで死んだ前提なの?というか未亡彼女って何」


 未亡人の彼女バージョンみたいな感じか?



 「いやーあはは……だって葵君普通に死にそうじゃん?」


 「すごい失礼なこと言うね?!」


 「ご飯はカップ麺で基本過ごしてそうだし、飲み物はエナジードリンクとお酒しか飲まなそうだし、部屋は散らかって…………はなかったか、うんそれに賞味期限切れのご飯とか平気で食べそうだし、食中毒になって悶えてそう」


 「すごい偏見の目で俺を見るじゃん…………まぁ半分当たってるけど」


 エナドリはFPSをやるうえで欠かせないし、ご飯はできあいのもので十分。

 あと1日2日なら賞味期限とか気にしない。

 大事なのは消費期限って進研ゼミで習った。あと頑張れば消費期限1日超えても何とかなる。


 「半分はも言う全部みたいなものだよ! まぁということで…………」


 ということで、まさか、この流れは前回はポトフ、今回も何かーー


 「ーー健康食を食べに、居酒屋いこ!」


 「いかんわ!」


 昼から酒飲みたいだけじゃねーか。


 「えーいかないのー?」


 心底不満そう、というか酒好きか!


 「いかないよ!飲みもなんだかんだお金結構かかるし!」


 お金、といった瞬間、一ノ瀬さんの顔も曇る。


 「確かにそれは一考の余地があるかもしれないわね」


 「逆に一考の余地しかないんじゃないかな」


 「…………」


 「…………」


 「よし、スーパーにいこっか!」


 「…………俺も?」


 「うんもち、二人で材料費買ったら安いし軽いし、しかも葵君は私のおいしい料理食べれるよ?」


 …………それはいい。

 手作りってなぜかうまいし、あと最近コンビニ弁当とカップ麺にも飽きてきている。

 

 「料理のリクエストはしてもよい…………ですか?」


 「一考の余地あり!」


 一ノ瀬さん、そんな異議あり!みたいに言われても。


「よくよく考えたら俺好き嫌いそんなないしいっか、ならご相席させて頂いても?」


「よかろう!」


 なぜそんな上から目線。あと胸を揺らさないで、うれしい。


 軽くジャケットを着て、外へ。

 スーパーまでは家から徒歩10分。ただ春先とは言っても、程々に暖かくなってきている。

 もう既に休みが始まって1ヶ月近く経ったのか。


「……あ、そういえば葵くん」


「はい?」


 マスクをして帽子を被った一ノ瀬さんはもう目元しか見えない。

 それなのに関わらず相変わらず隠し切れない綺麗さはなんなんだろう。


「……どしたの?ぼーっとして、私に見とれちゃってた?」


「うーん、まあぞんなとこさすがマドンナ、さすマドって感じ!」


 まぁ外見+内面であれか。プラスマイナスちょい+くらいか。


「変な造語つくんないのっ! じゃなくてさぁ……あのなんて言うか……」


 なんか一ノ瀬さんが凄い言いずそう。

 なんだろお腹痛い、とかかな?


「あー……遠慮しなくてもいいよ」


 なんなら言わなくてもいい。

 もう俺はちゃんとわかっている。


 一ノ瀬さんがトイレに行きたいことは。


 優しい顔を浮かべよう。行きやすいように。

 マドンナだってするよねトイレ。

 トイレしないアイドルがいたのは昭和までだもん。


 「何変顔してどしたの?」


 「いや緊張をほぐそうか、と」


 「…………?まぁいいや、なんか力抜けちゃった!」


 …………トイレなら踏ん張ってたほうよくない?

 漏れちゃわない?

 え、そういうかんじ?関白宣言ならぬ放尿宣言みたいな?

 もう一回力入れてほしいかもなぁ……。

 

「あのさ、最近ストーカーとかに困ってない?」


「うんいってきていい…………え?…………なんて?」


「だからストーカーとかに困ってるんじゃない?って」


 そうだよね、そういったよね。俺?


「……え、俺が?……なんで?それ一ノ瀬さんの話じゃなくて?」


 それならありそうだけど。

 というかもてたことないのになんでストーカー。

 そしたら普通に付き合うよ!


「まぁ私もこういうのは私の方がされそうだなあっておもったりはするけどね!しがない少年の君にストーカーって物好き、しかもかなりのもの好きだなぁとかは思うけどね? どこがいいんだろうね、ほんとにうーん」


 自分で言ってて悩まないで?今かなり失礼だよ気づいてないかもだけど。

 しかも俺も否定できないし残念ながら。

 もれなく俺に大ダメージだよ今。


「ないと思うけどなぁ…………なんかそう思う原因でもあったん?」


「いや、朝方なんか声が聞こえたんだよね〜」


「声?」


 「そう、声」と一ノ瀬さんは頷く。


「私も寝ぼけてあんまり聞こえてこなかったんだけど、ね?確か【死んでも……ゆ……さない、絶対に】とかだったかな?」


 血の気が引いた。幽霊とか無理なんですけど俺。


「え、それストーカーじゃなくて、幽霊じゃん。怖、呪われてますやん」


「で、でも安心していいよ!」


「な、なにを?」


 あれか。私が一緒にいるとかそういう話か。

 心強いかどうかは別としてもなんて優しい。

 さすが大学のマドンナ。性格もやっぱり……


「足ちゃんと生えてたから実在してると思う!」


「いやてことは生霊か実在するやつじゃん!え……なんか恨まれるようなことしたかな?」


 というか朝は空がいたはずなんだけどなぁ。

 空のこといってる?


「かなり玄関を睨みつけてた気がするよ、まぁ寝ぼけてたしコンタクト入れてなかったからあれだけど、すごい念を感じた」


 ……ほな空とは違うかぁ。

 あいつに俺を睨みつけるほど恨まれた覚えは無いしな。


「ま、まぁ大丈夫でしょう実害は無いので今の所。家に鍵ちゃんとチェーンまでかけとくようにしますし…………まぁ全く関係ないですけどこのあと神社行きません?全く関係ないですけどね?なんか唐突にお参りしたいなぁって。あと塩でも買いますか、いやー1キロくらい盛りたいなぁ」


「あ、じゃあついでにニンニク入れる?ニンニクの匂いって幽霊を寄せつけないっぽくね?」


「……それ吸血鬼とかじゃ」


「まぁ吸血鬼も幽霊も同じようなもんしょ! いやぁにしても意外だわァ私の彼氏ってバレてからこういう問題は起きると思ってたのに、ストーカーとか闇討ちとか。まさかこんなに早く来るとはよっ人気者!」


 なんかすごい物騒な言葉出てきたな。


「……これお守りで何とかなりますかね?」


 一ノ瀬さんはうーんとひとつ悩み、


「……有名な神社のならワンチャンある……かも?」


「いま絶対テキトーにこたえたでしょ」 


「そんなひどい、1秒くらい考えた!」


 はぁ、まぁ気にしても仕方ない。

 いざとなれば隣の家に駆け込もっと。


 ちなみに昼ごはんはペペロンチーノだった。

 ……これ夜に食べた方良かったんでは?

 



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