第35話 偽彼女の好きなところ


 【ほらほらはやくいえ~】


 【そうだぞ~早くげろっちゃえ~】


 偽彼女と幼馴染に好きなところを聞かれ、詰められる俺。

 なんだよこの2人。初対面なんじゃないのかよ。めっちゃ仲いいじゃん!

 どうなってんのマジで?!


 【ほらほらー】


 【いえいえー】


 しかも無駄に息ピッタリだし。

 くっそやっぱり二人ともおっぱいがでかいから、息が合うのか。


 【で、どこが好きなの~?】

 

 【だからおっぱい!】


 【もう~照れ隠しするんだから。あ、またダウンした】


 くっそぅ、俺は無力だぁぁ。

 これが女性か、数の暴力だぁぁ


 てか、ん?

 この喋り方、もしかして一ノ瀬さん……


 【……もしかして、呑んでる?】


 【【え、もちろん】】


 お前もかよ空、そこも一緒かよ!

 ほんと似たもの同士だね。


 【……だって大学のマドンナこと夢先輩と一緒にゲームするんだよ?そりゃ緊張して飲んじゃうでしょ】


 【えー何それ空ちゃんめっちゃ可愛いじゃーん、すきすきすきらぶーーーー!……私と一緒だぁぁぁ】


 【おいそこ嘘をつくな、絶対一ノ瀬さんはいつも通りお酒を飲んでるだけでしょ?】


 【……いつも?もういつもっていう仲なんだ、見せつけてくれやがってぇぇえ!】


 みせつけてないみせつけてない、通常運転だからこれぇぇ。


 【いつもなんて飲んでないしぃ、ストレスかかった時とかマドンナを演じた時とかあとは彼氏マウント取られた時とかゲームで負けがこんだときとか、まぁそれぐらいだし~】


 それぐらいって、一ノ瀬さんそれさぁーー


 【ーーほぼ毎日じゃないの?】


 【……まぁそうともいうかなぁ?】


 【また2人でいちゃいちゃするじゃーん、私もかまえ―】


 【かまってるかまってる!】


 【かまってないわー!】


 あ、二人してダウンした。

 やっぱり仲いいんじゃない?


 というか敵全部こっち来たんだけど。

 ふっここはおれがきれいに決めて、この話を俺がヒーローになるぞォォ。

 このまま何とかうやむやに、うぉぉぉぉぉぉ。


 

 【え、この果汁杯めっちゃうまーい。というかストロング系の話聞いたー?】


 【ちょあおおこしてよー、というかお酒無くなったからちってこよー】


 おいお前ら自由過ぎないか?!

 俺めっちゃ必死に戦ってるんだけど?

 誰も気にしてないじゃん、有耶無耶にできてよく張るけど、でもこれはこれで悲しいっていうかぁ。


 あ、待ってそんな殺意高いワンパン武器を俺に撃ってこないで??

 俺は君たち第4のなかーま…………嘘だよバーカ俺は敵……ですよねぇぇ?



 うん、無理2パにはさまれたらそりゃ死ぬよね、うん。


 というか。


 【めっちゃ頑張ったねー、ごくごく】


 【ねー、めっちゃ逃げ回っててくさ、ごくごくぁぁぁうまぁぁぁ】


 二人してもう酒をごくごく飲んでいらっしゃる。

 なんなんですかもう、俺ものもうかなもう。

 

 【…………んで?】


 【…………それで?】


 【…………それで、とは?】


 【【だから夢先輩】の好きなところ!】


 有耶無耶になってないじゃん!!


 空はまだわかる、幼馴染だしね?

 幼馴染の恋愛関係気になっちゃうっていうのも。

 親戚が恋人出来た子供を冷やかす的な、ね?


 空に限ってはまぁそれで納得できる。

 散々俺のことオナニストって煽ってきたしな。


 でもさぁ一ノ瀬さんあんたは違うだろ。

 あんた俺と一緒に偽関係やってる本人じゃないか。

 なんであんたが秘密を共有するはずの俺を後ろから撃ってんねん!!

 後ろから味方に撃たれてるんだけど??

 これってフレンドリーファイア(味方を後方から誤って撃つこと)ってやつじゃないですか?

 しかも故意的な!


 より悪質なやつじゃん!

 なんで後方味方面して、敵に速攻寝返ってんねん!


 しかも絶対逃がさないぞって感じがするし。


 【あ、おっぱいと顔はなしね!知ってるから!】


 知ってるから、ってなかなか強気な発言じゃん。まぁ一ノ瀬さんだから当然だけどさぁ。

 でもさぁ…………


 【…………え、その2つとられたらもういうところはないんだけど?】


 【それは私に失礼でしょ!!】


 【なんでこの2人付き合ってるんだろ】


 【ほら空ちゃんが困惑してるんでしょ、照れ隠ししてないで早くいえー!じゃないと…………】


 【じゃないと…………?】



 ドン!!!

 


 【…………え?】


 【RAと料理抜きだよ??】


 RA……絶対これ空にはわかんないだろ。

 俺は今やられたからわかるけど、これあれだ。

 RA…………リアルアタックだ。

 

 だけどそれはいい。

 よくないけどそれは100歩譲ってそれはいい。


 でも料理お前はだめだ。

 

 

 【やだなぁ、夢のいいところなんていっぱいあるに決まってるでしょ?】


 【ちょっやめてよぉ、呼び捨てなんて恥ずかしい~…………ぷっ】


 何笑ってんねん。

 こっちは本気でやってるねん。

 

 【…………なんかいきなりいちゃこらはじめたんだけど…………殺意】


 【それでー私のすきなところはー?】

 

 もう絶対言わせる気だな。このマドンナ。

 あぁそうですか、なた。


 【身体面はもう言ったから夢のあふれ出る内面の魅力についてだよね】


 【普通に言って、嘘っぽいから】


 【はい】


 でもこんなテンションじゃないと、好きなところというか一ノ瀬さんおいいところなんて言えないんだよね。

 思い出す。一ノ瀬先輩との1か月を。


 お酒飲んで飯食って、お酒飲んでお酒飲んでお酒飲んで公園でだまされてお酒飲んで…………。

 …………お酒しか飲んでないなぁ。


 ふっ、でも俺の頭はさえわたっている、俺の中の石田〇一を呼び覚ませ。


 【でもやっぱ一個目は面白いところだよねユーモアのセンスがすごい!特にお酒飲んでるときなんて男が喜びそうな冗談とか言ってすごいうれしい】


 まぁ下ネタのことだけど。

 あと時たまおっぱいの誘惑してくれるし。

 すごくうれしい、言わないけど。


 【ほ、ほう、あとは?】

 

 【2つ目はやっぱ安牌ではあるけど優しいところだよね~、俺の食生活を心配して料理作りに来てくれたり、テストやばいときには教えてくれたりするし】


 猫耳で2日間ともテスト範囲教えてくれたのはマジで神だったよね。

 あとどんな理由で、たとえ偽彼氏の件を続けてもらうためといっても料理は最高だった。


 【……テストの件は甘やかしちゃだめですよ夢先輩】


 【それもそうだね~次回からなしで!それが本当のやさしさか…………】


 【…………そんな殺生な】


 それは本当に困る。

 楽単をまだ体は欲してるのに…………。


 【あとは…………あふれ出るカリスマ性?外と内で見せる2面生がいいよね】


 マドンナの時には見せない緩さを俺の前で見せてくれるからいい。

 なんというかお得感がある。

 ほかの人には見せないマドンナの裏の姿って。


 …………売れないかな?


 【…………それほめてる?2重人格って言ってない?】


 【ほめてるよ!あとは――】


 【――す、ストップ!これ以上は心のダメージが…………というかいちゃいちゃでげろ吐きそう】


 空のそれは只の飲みすぎなんじゃ…………・


 【げろはきそう!?砂糖じゃなくて?】


 でも止めてくれてよかった。

 ここからはどんどんひねり出さなきゃいけなかったから。俺のキャパ超えるところだった。

 あとメンタルも。


 【ふーんまぁまぁかな?でももっと精進したまえ!】


 俺はいったい何を精進するんでしょうねぇ。

 というかあんたは2つしか言ってないからね??


 【…………ま、これで空ちゃんも満足よね?じゃあこっからは私からのお願い】


 【……夢先輩からのおねがい?】


 いやな予感がする。

 なんか喜色に富んでいる気がするその声に。


 【じゃあ葵君から空ちゃんのいいところを教えて?――】


 え、俺が幼馴染のいいところ?

 彼女でもないのに。

 なぜに?!


 【え、私のことを?あおが?】


 ほら空ももう困惑してるじゃん。

 でも一ノ瀬さんの言葉はそこで終わってなかった。


 【ーー生で】


 …………うん?

 え?


 【【生で?!】】 


 【うん】


 この日一番の、うなずきが出た。

 ちなみにその瞬間全員死んだ。


 【【まじ?!】】


 3人でのお出かけが決まった。

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