第3話 ほろ酔い女に絡まれる
春休み。
大学生にとって最高に楽しい時間。
最高に怠惰な日々。
バイトと遊びに行く以外、家から出ず、エアコンの効いた快適な部屋で過ごす毎日。
スマホゲームをしたり、映画を見たり。
「最高過ぎる、端的に言って一生春休みだったらいいのに」
『……何バカなこと言ってんの? 日常があるから休みが映えるのよ。ずっと休みなのはそれはそれで辛いものだよ、聞いた話だけど』
返答してきたのは、幼馴染の空。
「って聞いた話かよ!それにしかもそんなの1個人の感想でしょ?」
『絶賛自宅警備員中の我が愚兄からの一言だから信用度高いよ?』
幼馴染の空には一人兄がいる。
もう10年以上引きこもっているのに、なぜかお金は定期的に家に入れているという不思議な兄上。
俺の予想では多分株とかやっていると思う、昔から無駄に天才だったし。
「それは確かに」
『あ、即答したねいっとこーっと。それよりも敵どこにいるの』
「ぜーんぜん分からん」
今俺は空と共に、最近流行りのFPSゲームAPE○をやっている。
俺も空も、無駄にやりこんでいるので、結構強い。
結構やっているおかげで、いつもマスターというランクまではまずいく。
1時期はプレデターという全世界で750人しか入れないランクで2桁にもなっていたが、時間がきつすぎてやるのをやめた。
今は3人楽しくエンジョイ勢。
いつもはもう一人一緒にやっている人もいるけど生憎と今日はいないので二人で回っている。
『ってうわ、敵地のど真ん中に入っちゃった、
ちょっと俺より先にマップの先の方にいっていた幼馴染のいきなりの悲鳴。
俺も慌てて、
空のことを撃っている敵を気絶させ、別パーティーにもちょっかいをかけてアーマーを削る。
ここまでやれば、空も回復できるはず。
『ないカバ、せんきゅっ、chu♡』
「おえっ」
『ぶっ○すぞこの野郎……あ』
「なんだその不穏な声」
『敵全部、そっち行った……かも?』
「……は?」
空の声で言われて、撃った敵の方向を見れば一目散にみなこちらへ向かってきている。
どうやらヘイトが全部こっち向いたらしい。
ちょうど別パーティー同士、射線がちょうどよく切れたため、うざい俺をやりに来た模様。
まぁ持ってた武器、ちょうど相手にダメージを数ドットは確実に与えて、しかもちゃんと当たるとまぁまぁうざいという悪名だかき、チャージライフルだからなぁ。
まぁそれはそれとして……
「カバー、カバーplzぅぅぅぅう」
とりあえずヘルプミー!!!
なのに……
「ごめん無理」
即答かよおい。 俺は頑張って助けたのにぃぃぃぃ。
総勢、6人による俺への集中フォーカス。
それでも何とか倒そうと必死に立ち回るが、
「俺のキャラそもそもデブキャラで立ち回れねぇぇぇんだよぉぉ、というかチーミングじゃね?変な連携見せないで貰っていいですかねぇ???」
チーミング、本来敵同士のはずなのに、お互いに協力して、一人の敵を倒したりする害悪プレイ。まぁ今回は違うと思うだけど。
2-3人きぜつを取り、他キャラもアルティメットという必殺技の爆撃でアーマーを割るもあえなく俺も気絶。
俺をやったあと、敵もお互いやりあいはじめるだろうから、空が来ればなんとか倒し切って、俺は何とか生きられ……ってぇぇぇ。
「確殺厨かよぉぉぉ」
なので、俺あえなく死亡。気絶中にさらに打たれるとゲームでは死んでしまう。
「……後はまかしとき?」
疲弊している相手を全部綺麗に平らげていく空。
さすがプレ2桁。
蘇生された敵も合わせて美味しく奴が頂いていく。
そしてすべてを取り切り、一言。
『うんまぁぁぁぁっ』
多分彼女アドレナリンドバドバ出ていると思う。
【それはそれとして、チャーライ持ってるからヘイト向くんだよ。ちくちくするから】
まぁそれは事実だ。
プレイヤーからは嫌われてるし、俺も撃たれたらいらつく。
でも自分が打つときは最高に気持ちいいんだよなぁこれ。
【だから彼女出来ないんだぞ?】
「おっとそれは喧嘩かな?戦争かな?……というかお前だっていないじゃん」
「えーでもわたしまぁまぁ可愛いし……控えめに言って。だからいないけど告白はされてる。つまり私は選択的ソロプレイ。そしてあんたは非選択的ソロプレイ、オナニスト。おーけー?」
「のっとおっけ!!」
控えめに言ってそれかよ。
まぁ美形なのは事実なんだけどさ。
性格男っぽいけど。
「いや過程は大事じゃない!大事なのは結果!恋人なしという結果のみ!」
「ふっ、まぁまぁそういうことにしときましょうかぁぁぁぁぁぁぁあああああああああっ!くそきもぼけかすぅぅぅぅぅぅ!!」
空は調子に乗ってたから、チャーライ3本に殺されて、空様無事発狂。
ふっ天罰だ。
「あ、エナドリ切れた。俺ちょいエナドリ買いにコンビニいってくるわ」
『りょ』
そう言って一旦落ち、軽く身だしなみを整え、部屋を出る。
「うーさっむ」
エレベータを待っていると、すぐに下からくる。
どうやら誰か乗っているらしい。
ちょうど俺の階で止まる。
出てくる人が外に出やすいように脇によけ、スマホで見ていく。
が、一向に目の前の気配はエレベーターを降りた後、動く気配がない。
不思議に思って目を前に向けると、こちらを見やる女性の顔。
「よっ!」
「……えっ」
誰?
こんなきらきらギャルみたいな人知らないんだけど。
「……ども」
うわこわ絡まれないようにしよ。
多分会話してあげたから1万くれとか言われるんだ、そんなことあったと友達が言っていた。
よしはやくエレベーターに乗ろう。
ギャルの横をすり抜け……ようとして。
「どーこいくの?」
おっぱいブロックされた。
どん、と。
もにゅんとした感触。
「……こ、ここコンビニですけど?」
一瞬どもったけど、即座に切返す。
けしておっパイにドギマギした訳では無い。
「そっかそっかちょどいいね、じゃあ私もいこっと」
「な、なんで?」
ほんと何で?
「私もさっきまで友達と飲んでたんだけど、みんな彼氏のとこ行くーって言って、飲み足りないからやけ酒?のためのお酒とか買い足したかったのよ?」
「そうなんですね、じゃじゃあどうぞ?」
とりあえずエレベーターにのせ下へ。
「てかこないだのテストどうだった?大丈夫だとは思うけど……?」
テスト?
テストってなに?なんのはなし?
「え?」
「いやだからこの間見せたノートとか!のはなし!大丈夫だた?ちょっと心配だったんだよねぇ自分が酔った状態で教えたやつだったから、チルタイムだったから若干、というか結構ふわってしてたし」
テストを教えた?
……え?まって?
「もしかして……お隣の名無しの猫耳ギャル?……さん?」
「どんな覚え方されてんの私!ウケる」
あははとお腹を抱えて笑う。
その拍子に軽くフラッとよろけたのを肩を抑える。
だ、大丈夫だよね?セクハラにならないよね?
人命救助だよね?
あれ?でも昨今の世の中は、心肺蘇生のために、服を開いたらつかまったりもしたような……
「ありがとー、お酒のせいでちょっとよろけちゃった?」
「ちゃんと立ってくださいねぇ」
しゃんと立たせ、出来る限り早く手を放す。
離そうとしたんだが……
「にひっ、つーかまえた」
酔っ払いに腕をつかまれた。
離してほしくてもにもなかなか力が強い。
あれ?これ逆にセクハラで行けるか?
嫌だめだ!世間の小うるさいやつらはダブルスタンダードで女性にだけ優しい。
この状態からでも、セクハラにされるはず!(確信)
だめだ、迂闊に離せない!
「コンビニ一緒にいこっか、方面一緒だし」
「離す気ないじゃないですか」
「んじゃはなそっと」
お、素直にはなしてくれた。
ならこのまま別の方向に。
「テスト教えてあげた人の誘いは、ふつう〜断らないよねぇ?」
エレベーターを出て反対方向に行こうとしてた俺に、後ろから無視できない声。
「ギャルな私は悲しいなぁ……私の努力がにじむ、年月の結晶ともいうノートも貸してあげたのになぁ……」
うぐっ。
よよよと袖口で涙を見せる鳴きまねまでしておられる。
「どうせ私は使い捨てられるのね、やり捨てられるのね……うぅぅ」
と物騒なことまで言い始める始末。
「うぐっ……いきましょう……か?」
「なんでそんなに苦虫をつぶしたような顔してるの?大丈夫本当にただコンビニ行くだけだから!」
なにその飲み行くだけだから!みたいな嘘っぽい言葉は。
こ、これはギャルに襲われる…的な奴か?
「ほら、いこー?」
不覚にもその屈託のない笑みにどきりとしたのは内緒だ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます