第2話 ベランダのギャル

 今日のテストが終わった。

 終わった、色々終わった。


 しかし不幸中の幸いにしてお隣さんが教えてくれたところは全部書いたからなんとかはなるはず。

 というかなってくれたのむ!俺はまだ実家に帰りたくない!


 それにしても……


「きっつ」 

  

 何がきつい って、今日がテスト最終日じゃないこと。

 まだあと1日残っている。本音はもう少し休みたい。


 しかも残っているのは、宗教とは何かみたいな話の宗教学や、この絵にはどのような意味が込められている美術史みたいな、当時の感性を再現するもの。


 そして問題なのは、そう言った感性は授業を聞いていないと分からない、ってことだよね。

 レポートは、それなりに、まとめたつもりではあるが、(ぐ〇ぐる先生の解説と、教科書の解説を独自解釈)、いかんせんテストがわからぬ。


 しかし焦ることなかれ。

 俺には最強の幼馴染がいる。


 前期にどちらもSをとったって自慢されたからな。答えを教えてもらうために早速ライン。


 ao:【なぁ、宗教学と、美術史の写真で送った箇所のとこの解釈の仕方を教えてくれ、代わりに近世現代史教えるから!】


 ラインを送ると、すぐに返信が立て続けに来る。

 

 そうだよな、やっぱり頼れるものは幼馴染だよな。

 

 

 LINEの通知には写真とコメント。

 つまり早速写真を送ってくれたわけか。


 持つべきものは幼馴染、ってことやなぁ

 幼馴染居ないみんなざまぁ!

 

 期待を込めて、ラインを開く。

 そこには5人の女性が、某ネズミーランドでいろんな耳をつけて後ろ向き、片手を上げている。

 その姿は某漫画のアラバスタ、最後の俺たちはどこにいても仲間だ、的なポーズ。

 写真に加えて、いえーい✌と楽しそうなラインも。


 ao:【……これつまり??】

 

 多分これ友達同士に送ろうとしたのを間違えて送っちゃった感じだな?

 先週の土日とかのやつかな?

 テスト勉強しないで余裕だなー


 sky:【今夢の国で打ち上げしてるから】


 ao:【……お前も明日テストだろ?】


 sky:【甘いね、大学のテストは今日の午前まで、高校とは違うのだよ高校とは。いつから自分と同じ日程だと勘違いしていた?】


 ao:【なん…………だとっ?!】


 sky:【後ついでに、葵が今季講義受けている講師、私と違うから内容がさっぱりわからんぬ☆やっている内容違うらしいし】


 あれ?

 あれれれぇぇぇx?

 おっかしいぞぉぉぉお?

  

 ☆じゃねぇぇぇぇぇっ!?

 しまった、この授業二人講師がいるのか!!


 思ったんだよ。

 途中、こんな眠くなる講師でSとれるか?って

 講義途中に小話とか入れるって言ってたのに、全然小話入れないぞ?って。

 

 結構、イケおじだよ?って教えてもらったのに、禿デブだったし。

 幼馴染の感性やばいなって、いけてるラインやばいなって思ってたけど、感性は人それぞれだしとか、男の趣味選びなよ?みたいなことをいうかですこし悩んでたけどちがったのかぁぁぁ。

 最終的に深入りしないでおこうって決めたけどあのとき聞くべきだった。


 うわ、あの時それで納得しちゃった俺をぶん殴りてぇぇ。

 ストレスで暴飲暴食しちゃって太って髪抜けたんだな?とか講師を優しい眼で見てたわ!

 ついでに幼馴染にも優しい眼で見てたわくそ!

 

 sky:【私は自由だぁぁぁぁぁぁあ】


 そんな言葉を最後に締めくくりやがったくそが。

 多分奴は、夢の国にさらわれた。


 ao:【夢の国のマンションには、幽霊が出て、最上階で写真映る時に一緒にピースしてくれるらしいよ】


 最後にそんなお得情報を送っておいた。

 なんか鬼のように通知がきてる気がするが、生憎とテスト勉強で忙しいため俺は見れない。

 でも多分奴は俺のお得情報に喜んでいるだろうから感謝のラインだなきっとうん確信。

 

 ちなみに幼馴染は幽霊系マジでダメ。

 今頃は楽しく、夢の国で遊んでいるだろう。

 まぁ別の意味で夢の国になってたりしてあはは。


 「ふぅ、いい仕事したぁ」


 なんか無駄に満足感がある。

 でもひとつ分かった、幼馴染がいてもしょうがな、幼馴染いない人煽ってごめんなさい、わたしは負けました。


 「一旦寝よう」


 まだ、時刻は17時。

 焦るような時間帯じゃない。


 あと、今日のテストで脳の灰色の細胞が疲弊しているから休ませないと。

 うんうん、仮眠仮眠。

 ナップタイムは大事ってなんかの論文にも書いてあった気がす……zzz。


 




 

 起きた。

 俺の感覚でいえば19時。

 全然余裕。

 こっからテスト勉強……おぉぉぉぉぉっ?!


 「……え、い、一時……?」


 目を何度もこすり見直すが目の前の数字は変わらない。

 数字は嘘をつかない、どっかの誰かの声が聞こえてきた。

 憎たらしい。

 

 「今だけは嘘をついてくれっ!!」


 力を込めて念を送ってみても結果は変わらず。

 というか1分が過ぎた。


 「あぁぁ貴重な1分がぁぁぁっ?!」


 ってまた嘆いてたら時間が過ぎる!!


 「とりあえずやらねば! 宗教学と美術史でしょ? 余裕余裕、ノートを見れば……」


 現れる空白のノート。

 なんで?!

 なんで書いてないの?!

 そうだ書いてないから、幼馴染の空に頼ったんだった。


 思い出すのはモーゼが海を割った映画を見た記憶だけ。


 「終わった……」



 絶望感が身体を支配していく。

 


 「くっ、でも安西先生も言っていた、諦めたらそこで試合終了だと」


 反省するにはまだ早い。

 俺の脳細胞は完全休養したおかげで準備万端。

 コンディションは最高。後は思い出すだけ!!

 昨日はジョブスは降りてこなかった訳だが、今日はイーロンが降りて来る気がする。


 きっと俺なら外の星でも眺めればきっといいアイデアが振ってきて、宗教についても思い出すはず。

 多分昔の人もそうして宗教を考えた!


 「うぅ、寝起きに寒空はしみるぅぅっ」


 肌をさすりながら空を眺める。

 そこには満面の星空…………はなくどんよりとした暗雲だけ。


 「なるほど、終わった。 満点の星空が俺にアイデアを下ろしてくれるはずだったし昨日も下ろしてくれたて……いやまだ早い。俺の頭は今さえわたっている!」


 


 コーヒーをふくんで、飲み込もうとした瞬間。



「やっほ!」


 唐突にまた隣のベランダからみゅっと、きれいな顔が乗り出てきた。

 

 

 「ぅんぐふっ?!」

 

 「おっ!すっごい声出た!」


 変なところにコーヒーがはいった。

 しぬしぬぅぅぅっ……



 「ごほごほごほほっ?!がーっはっ?!げほげほっ?!」


 「あはは、だいじょーぶ?」

 

 何か言ってるが返答する余裕もない。

 胸を何度もたたいてようやく息が整ってくる。


 「はぁっはぁっはぁぁぁ、死ぬかとおもた」


 「ごめんごめんそんな驚くと思わなくて……」


 謝ってる割に、笑いは止まっていない。

 あげく、笑いすぎて涙まで出している。

 絶対この人反省してない。


 ひぃって言って笑ってるし


 「そりゃ誰だっていきなりぬって出てきたらこうなりますよ、コーヒー顔面に吹きかけなかっただけ感謝してほしいくらいです」


 「乙女を汚すつもりだったってこと?」


 「語弊がありすぎる、それでいくと自分から汚されに来たでしょ!」


 「人を被虐趣味みたいに言ってくれちゃって!このえっち」


 よよよ、と鳴きまねをする酔っ払い。

 全く付き合ってられない、俺にはやらねばならぬことがあるのだから。

 テストという荒波を乗り越えるために。

 

 「もうなんなんですか、せっかくこっちは美術と宗教テストを乗り切る名アイデアが昨日みたいに降りてきそうだったのに」


 まぁ実際コーヒー飲んでただけだけどね?

 でもいいショートブレイクだった。


 「いや降りてこないでしょう。君しかもサラッと記憶捏造してたけど昨日もおりてきてないからね?私が教えただけだからね?」


「昨日降りて来なかったからと言って、今日降りてこないとは限らないわけでて……」


「はいはい、そう焦んないの、コーヒーを吹き、叫び続けた黒歴史の作成現場を昨日に引き続き見せ続けてくれた君にいいものをみせてあげまっしょう、ちょいまち~」


 そう言って、酔っ払いさんは部屋へと戻ったかと思うと、何かを胸に抱いてすぐに戻ってくる。


 「ほれ、これかしたげる、これで明日は乗り切れるっしょ!」

 

 大学ノートの中身をぱらぱらと見れば、宗教学と美術史それぞれの要点が。

 ノート持ち込みおっけ―だからこれさえあれば乗り切れる。


 「…………」


 「お、お?感動に震えて声も出ないかにゃぁぁぁ?」


 「ありがとうございます!!持つべきものは良き隣人!!あなたは神か!!これで気持ちよく寝れるぅぅぅ」


 俺が感動に打ち震えていると、酔っ払いさんはなぜか尺残としない顔。

 そして今気づいたけど、この先輩今日もなかなかに刺激的な格好をしている気がする……。

 でも今は眠気があるから、なんも思わんけど。


「ノート持ち込み禁止だからそれ覚えないとだよ?」


「え?」


「だから寝れないよ?」


「…………なるほど、ちょっと部屋で今すぐやることを思い出したのでこれにて失礼」


 そそくさと部屋へ戻る。

 まずいこれはまっずいぞ。


 あ。

 

 「……お礼は今度!本当にありがとう名もなき先輩!俺に出来ることならなんでもするから!」


 慌てて部屋の窓を占めて机へ。

 だから俺はお隣さんの言葉が聞こえなかった。

 

 「…………名前あるんだけども……」


 静かな響きだけが場に残った。


 「ほんと、変な子というか昨日と態度違いすぎない??…………でもふーんなんでもしれくれるんだぁ、へぇ」


 そんな風に隣人が妖しく笑ったのは見えなかった。

 

 ちなみにテストはなんとか解けた。

 お隣さんマジ女神。

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 お正月が終わった……今日から仕事……うっ(´;ω;`)

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 それでは!

 また明日!




 



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