気づいたら大学のマドンナを染めた男になっていた件

第26話 姉の葛藤

　「帰りたくなーいいぃぃぃ」

　「いや帰れ、というかいけ」

　「んー、でもぉ……もっと夢ちゃんと話したーい」

　「一ノ瀬さんはもう帰ったわとっくに、始発で帰ったよ」

　本当は隣の家に、だけど。

　「…………え？もういないの？」

　どんだけ飲んだんだこの姉は、初対面の人の前で。

　もうこの女が何を言うか心配しすぎて、お酒を飲んでいたっていうのに全く酔えなかった。

　…………あれ？待って。

　最近でお酒で意識飛ばしていないのって初めてじゃない？

　もしかしてだけど俺とうとうお酒に強いとき来た？お酒体制出来てきた？

　「何よにやけてきもちわるい」

　いきなり風香が俺の顔を罵倒して来たんだけど。

　なにこれ。

　「いやとうとう俺もお酒強くなったんだなぁって」

　「なってないわよあほ、あんたのはアルコール少なくしてあったのよ」

　「え？」

　な、なんですと？

　「あんた夢ちゃんに感謝しなさいよー。　夢ちゃんがね、あんたはお酒そんな強くないからアルコール弱くしましょうって、ほとんどジュースにしてたのよ」

　う、嘘だろ。

　おれ序盤から楽しく歌ってたきがするんだけど。

　酔ってきたよぉぉぉ、とか言って。

　…………もしかして苦笑いされていたのはそういうこと？

　「ぬぐぅぅぅおぉぉぉぉ」

　「今更悶絶してどうするのよ、というかほとんど素面で酔えるのもすごいわよね」

　「いや自分では酔ってると思ってたし、ハイテンションになるのもしょうがないかなーって思うよ！」

　悪くないよねうん。

　酔ってたらハイテンションになるし。

　「まぁ私たちしかいないし別にいいけどさぁ」

　風香は二日酔いなのか重そうに頭を振る。

　「でもあの子すごくいい子だよねぇ」

　なんか風香が水を飲みながらしみじみとしたことを言い出した。

　「なんかおばさんくさっーーぐふっ」

　秒でチョップされた。

　やばいお酒が口から…………ジュースか。

　「私まだぴちぴちの21ですが？　お前もぴちぴちだと思うよなぁ、そうだよなぁぁ？？」

　なんかこのぴちぴちさんめっちゃ圧かけてくる。

　何なら肩に置かれた手からも圧を感じる。

　「ぜんっぜんピッチピチだよ。何なら２５歳以降じゃないと成熟しないって言われてるらしい方、その意味でも全然若いよ！」

　「その若いはまた別の意味じゃない？　その若いってガキみたいな意味じゃん」

　「まぁそうだけど、そういう意味で知ってほしいのかなって」

　「どこ見ていった、どこ見て　。ぶちころしてやろうかしらこのくそ弟（童貞）」

　ちなみにわが姉はスタイルがいい。

　たいへんよろしい。

　上から下まで、スラっとしている。モデル体型。

　…………つまりそういうことである。

　「はは」

　「なに鼻で笑ってるねん、こっちはこっちで需要あんねん！」

　「だよね！」

　「ふん！！」

　ブチ切れられたのは言うまでもない。

　「それにしても夢ちゃん、めちゃくちゃいい子だねぇ」

　話戻ったな。

　俺をぼこぼこにしたあと、落ち着いてコーヒーを飲んだ風香がそんなことを言う。

　賢者タイムかな？

　「…………まぁそうだね」

　あの人猫かぶってるけど。

　ほんとはめっちゃめんどくさいけど、酒飲みだけやにカスだし、とつってくるけど。

　「何その渋い返事は」

　「いやーねぇ？」

　なんてたって偽装彼女だから。

　「あと料理がうまい」

　「いやそれは違う！」

　「え？」

　全く違う、間違っている。

　一ノ瀬さんの料理は…………

　「うまいじゃない、もうめっちゃうまい、隔絶にうまい！！そこらの料理じゃ全く満足できないから位にはうまい！」

　「めちゃくちゃ胃袋つかまれてるじゃないあんた」

　「一ノ瀬さんの料理は絶品だからね、料理の奴隷にもなるよ！」

　「もう狂信者じゃないあんた」

　「そう、俺は一ノ瀬さんの（料理）の奴隷」

　「かっこをつけるなかっこを…………まぁそんな話はどうでもいいけど」

　どうでもいいんだ。…………姉からしたらどうでもいいか。

　「あの子のこと、ちゃんと大事にしてあげな…………ちょっと待って？」

　うん？

　「今回私は空に彼女ができたっていうから様子を見に来たわけでしょ、それで壺を買わされていたら返品をするっていう役目をおってきたわけで」

　壺のやつ冗談じゃなかったんだ。

　本当に俺が買ってると思ってたんだ。

　「で、実際に会ってみたら夢ちゃんはめちゃくちゃいい子で、まぁ少し複雑そうだし、大変そうだけど、身も心もマドンナだったわけで…………」

　「いや体はマドンナじゃなくて、ギャルだったわね」

　そこそんなに重要かなぁ？

　「うーん、私としては…………複雑だわぁ…………どっちもしってるからこそより複雑だ！」

　な、なにがそんなに複雑か？

　恋愛的な？

　でもどっちもそんな関係じゃないしなぁ…………

　マドンナは偽装彼女だし、空は幼馴染だし。

　…………でもそっか、俺らの関係をちゃんと把握できてるのは俺しかいないわけか。

　「うーんどっちを応援…………ちょっと待って？！」

　２回目の待って、きたんだけど？

　「なんで私が弟のことでこんなに考えないといけないの？！私は彼氏に振られて絶賛傷心中だっていうのに。」

　「振られたって言ってもまだ付き合って２月もたってなかったじゃん」

　「うっさい」

　逆にそれで完璧人間ていわれるこの人どうなってんだよ。

　「私がこれ悩む必要はないわね、本来は空ちゃんを応援するはずだったけど、夢ちゃんもいい子だし…………うん決めた！悩んだときは両方を手に入れる、そういう生き方をしてきたわ。私は私でどっちも応援することにしましょう、そうしましょう！」

　「え、何そのどっちも応援って」

　不穏でしかないんだけど。

　というかそういう生き方が、強いって言われる要員なんじゃ…………

　「よし、葵！」

　「うん？」

　「あんたとりあえず幸せにしなさい！」

　「は？」

　「もうあんたが幸せにすればこの問題は解決するわね」

　「…………？」

　「絶対に二人を泣かせないように！姉からは以上！じゃ行ってくるから！」

　な、泣かせないようにも何も俺何もないけど。

　まぁ女の子を泣かせたりは普通にないけど…………。

　それより

　「企業説明会？」

　「は、何言ってんの？まだ9時よ…………トイレに決まってるでしょ」

　「あ」

　見れば顔色が青い。

　そのまま風香はトイレへと駆け込み、虹の橋を造った。

　「はぁ」

　掃除するの俺なんだけどなぁ…………。

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