気づいたら大学のマドンナを染めた男になっていた件

第24話 大学のマドンナと姉

　玄関で目を輝かせた一ノ瀬さんと、寝起きの俺と風香の二人。

　「修羅場きちゃ？！」

　一ノ瀬さんにそういわれ、寝ぼけた頭でだんだんと状況が見えてくる。

　寝起きの俺。

　彼シャツ状態の姉。

　昼まで寝てる。

　二人とも明らかに寝起き。

　そして一ノ瀬さんは俺の姉、風香の顔を見たことない。

　まぁつまりぱっと見事後に見えないこともない。

　姉弟だからそんなことは絶対にありえないけど。

　普通にキモイ。キモイんだけど。

　「ど、どうしよう。ここはクールに【その女はだれよ！】とかいうべきかしら、それとも【何をしているの？】とかで詰めていく感じかな？　それともぽろっと泣く？いやでもそういうのは私のイメージ的にないなぁ、うわぁこまっちゃうどうしよ～。あ、【私に飽きたってこと？！】っていうセリフもいいなぁ」

　なんか目の前でめっちゃ葛藤しているんだけど。

　「…………あおいー」

　「わぉ下の名前だぁ。こ、これは親密度がわかる、私の名推理によるとまぁまぁこれは仲いいね、はっ？！」

　まぁそりゃ家族だしね。

　でも一ノ瀬さんの暴走はまだ止まらない。

　「ま、まさかこれ私が2番目の女パターン？！　いわゆる私が浮気相手だった感じもあるのか！まだ私も呼び捨てではないし、葵君も親しげな感じしているし」

　それも家族だからね。

　「これ私が彼女としてか、2番目の女か、その役割どっちを選ぶかで緊迫感が出るか、一気に間の抜けた感になるか変わってくるわ」

　真剣そうに何を言ってるのか、酔っているのか。

　というかどっちの選択肢でもすでに間抜けだと思うんですよね。

　「あの一ノ瀬さん」

　「待って！　今、今週一番の決断をしているから！」

　今週一番ってなんだよ、初めて聞いたよそんな単語。

　せめて年単位じゃないかな？

　「よし決めた！」

　決めちゃったらしい。

　「やっぱり私はマドンナ！2番目なわけがない！それに葵君がそんなプレイボーイとも思えない！」

　一ノ瀬さん自信満々に俺の傷つくこと言ってくるじゃん。

　泣いちゃうよ？

　もう布団にもどりたいレベルだ。

　「葵君、いったいその女はだ――」

　「――姉です」

　「れ…………姉？」

　「そ、姉」

　「阿部じゃなくて？」

　「阿部って誰だよいったい。というか、一ノ瀬さんわかってやってるでしょ？」

　さっきから明らかに茶番じみてるし、声も風香に聞かれないように気を使ってか、小さくしている。

　中ものぞこうとしない。

　「……まったく癇のいいガキだね、来ここにて女性の声が聞こえて名前を呼んだ瞬間にはわかったね」

　さすがに観念したのか、てへぺろと舌を出る。

　「ですよねぇ…………」

　さすがに寝起き過ぎて突っ込めんかったけど。

　「…………それで私出直した方いいかな？　ってか出直した方いいよね？ただご飯作りに来ただけだし…………」

　後ろの姉さんの姿を見てみる。

　寝ぼけてたらまた今度、と思ったけど。

　うわぁばっちり目が開いている。

　というかこっちに来いと手招きしている、高速で。

　「ちょ、ちょっと行ってくるね、寒いから玄関入ってていいよ」

　「はーい」

　そのままリビングの扉に隠れている風香のもとへ。

　「なに、どしたの？」

　「どしたの、じゃないよ。だれだれあの超絶の美人のギャル」

　「え？」

　「なんでマドンナと付き合っててしかも別のギャルが来るのよ、あんた本当にプレイボーイになったの？！」

　めちゃくちゃ風香が混乱している。

　あーそっか。風香は別の大学だし、マドンナがギャル化した状態を知らないのかぁ。

　「こんなプレイボーイ化した葵を、今の空ちゃんが見たら卒倒しちゃう」

　「空とは風香よりも多くあってるし、俺がプレイボーイになってないことも知ってるよ」

というか、最近は空のほうが変わった気がする。

　「え、知ってるの？！……成長したなぁ空ちゃんも」

　風香はどこで空の成長を感じてるんだよ。

　「というか、あの人がマドンナだよ？」

　「…………？」

　そんな残念そうな顔で弟を見ないで。

　大丈夫、目いかれちゃった？みたいな目やめて。

　「はぁ知ってる？　マドンナは黒髪清楚系で間違ってもミニスカートとかロック系の服なんて着ないの、あと網網のタイツとかはかないの。あの子もめっちゃ可愛いけど、昔見たマドンとは似ても似つかないでしょ？」

　ふっ、情報が古いなあんた。

　「知らないのか？大学のマドンナは変わったんだよ、清楚系だった髪はミルクティー色に」

　「最近毛先に寒色入れるか悩んでます！」

　「メイクは派手になった！…………詳しくはわからないけど」

　「清楚系はやめました！最近の気分じゃないので！嫌いではないです！」

　「服装はかっこいいのも着るように…………詳しくはわからないけど」

　「いろんな服を楽しみたいなって思ってます、前の服も好きですけど！」

　俺の解説に、一ノ瀬さんが解説を加えてくれる。

　というか本人だからね。

　「…………それで後ろの子は？」

　「だからマドンナだって」

　こそこそっと耳打ちする。

　「嘘だぁ」

　どうやらまだ信じられないらしい。

　しょうがない。

　「…………あれ？マドンナの証明ってどうしたらいいんだ？」

　過去にマドンナであった証明なんて難しすぎる。

　「いや何言ってるの、葵君とうとう頭まで童貞になっちゃった？」

　「いや頭まで童貞ってなに、どゆこと？」

　「ぷっ、ギャルに童貞って煽られてやんの、うける」

　「風香俺はなにも面白くはないよ？」

　「お姉さんにも言われてるんですか？童貞って」

　「よく言ってるわね、ふふふ」

　「そうなんですかふふふ」

　「「あははは」」

　何二人で人の童貞でわろてんねん。

　「あっ、ご挨拶遅れました。私一ノ瀬です、一ノ瀬夢と申します。一応大学では、マドンナとか恥ずかしい名前で呼ばれることもありました」

　「今も呼ばれてるけどね」

　俺の言葉は二人ともスルー。

　「えっ、あの童貞が言ってること本当なの？！」

　「はい、あっこれ学生証です」

　一ノ瀬さんは俺を手招きすると玄関に置いておく。

　それを俺が受けて姉さんに渡す。

　そして姉さんは驚きながらも受け取り、「ほんとだ、マドンナの顔だ！」とはしゃいでいる。

　一方、一ノ瀬さんは一ノ瀬さんでそんなに盛れてないから恥ずかしい、とか言っている。

　「ちょっと私も用事ありますし、また改めてご対面させて下さい」

　これは風香に向けて、かな？

　「いや全然いまでもだいじょーーひっ」

　二人から一気ににらまれ、ついでに風香にははたかれる。さっきはスルーされたのに。

　「だから童貞なのよ！」

　「葵君、ステイ！」

　二人からは散々な言われよう。

　「じゃあまたあとで連絡させるわ」

　「はい、じゃあまた」

　風香が笑顔で見送る。

　扉が閉まると同時、風香がゆっくりとこちらを向く。

　鬼だった。

　般若だった。

　「あーおーいー？」

　学んだ。

　女性のすっぴんは他人様に後悔してはいけないのだ…………。

　一ノ瀬さんは俺に最初から見せてたけどなうーん。

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この作品まともな人がいねぇ…………

なぜだ…………

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