第37話いろはふぁいと!!!




ひとり寂しくご飯を食べつつ、いろはの歓声やおネェ様の野太い応援を聞きつづけている……


あ、このジャーキーうま。うま、うま、うま。



「あー!?ゆらさん私の幸福ぶっ飛びジャーキー食べましたぁっ!??」



「このジャーキーそんな名前なんですね。美味しく食べました。」



「まさかの完食ですぅ!?ぬぬぬ……特別なジャーキーとか言うので10個しか手に入らなかったのにぃ……」



「私のことを放っておいて観戦に夢中になってるのが悪いんですよ。」



「ぐぅ……仕方ないです。」



やった、勝った!!!



「ほら、くだらない言い争いしてないのぉ。大人しく観戦してなさい。」



……くぅ。おネェ様いつの間に首に手刀を……?



「はい……」



「はぁい……」



「あら、次の試合いろはじゃない。」



「え!本当ですかっ!?さっき見たときはまだあと三戦余裕があったはずでは!??」



「なんかドーピング薬の摘発が行われたらしくて、何人かが運ばれていったそうよ?キセルを吸った謎の美人がいたーとか世迷いごとをのたまう輩がいたらしわよ。ぺっ」



あぁ……霞さんか。もしかしてこのためにいたのかな?



「そうなんですねっ!じゃあ行ってきます!!!って、あれどうやって行くんでしたっけ……?」



「はぁ……その時間になれば闘技場に直接転送されるって説明があったでしょう。」



「そうでしたっけ……?じゃあゆっくり待ってよーっと。」



呑気だなぁ、いろはは。でも、そのメンタルは見習いたいかも……



「あ、もう時間みたいですね。わぁ体が透けていくのって不思議な感じしますねぇ。じゃあ、いってきます!!!」



「はぁい。頑張ってらっしゃい!!!」



「いってらっしゃい。」



って言っても観戦できないんだよなぁ。せっかくだからリアルタイムで応援したかったな……

やっぱりこういうときは目の見えない辛さを感じるなぁ。



「おう。噂には聞いていたけどけったいなものつけてるな。いや、意外と今の流行りだったりするのか……?最近の若者のセンスはわからないからな。」



おやおやおや?このクールな淡々としたお声は……



「あら!ぴったりのタイミングじゃないラーネ!!!もしかして、もうできたのかしら!?」



「うむ。意外と簡単だったぞ。ドブネズミサンドバッグの原理を応用するだけだったしな。ただなぁ、これ人間の脳みそに直接接続しないといけないんだよな。その際に情報量の合わない生物間だと激痛が走るんだよな。具体的には体を動かすのに支障が出るほどの激痛だな。この場合は私の眷属の視界になるぞ。だから人間の使用はおすすめしないが……」



んーおネェ様がもしかしてラーネさんに周りが見れる器具とかをお願いしてくれたのかな?まあ今のままだとちょっと寂しいからな……



「あぁ、問題ないわ。ゆらなら大丈夫よ。」



「……即答は酷いと思います。」



「……ふむ?あ、一応この契約書にサインはしてもらうぞ。責任問題はこりごりだからな。内容の音読はアイン、頼むぞ。」



なになに……

おネェ様に読んでもらった内容をざっくりまとめると

【この製品を使用するにあたり問題がおこった場合、製作者に一切の責任の追求を行わないことを誓います。また、製作者に対しこの件に関してクレームや営業妨害を行った場合には、実力を全力で行使されることを許可します。】って感じかな?



「魔道契約書だから、守らない場合は即神罰が下るからな!安心しろ。」



ひぇー、そんなものがあるんだ。

……ちょっと怖いけどこの世界便利だねぇ。



「よし、サインお願いするわね。」



おネェ様にペンを握らされ、契約書の記名欄のところに手を置かれる。

……どうでもいいけど、これはたから見たら脅されてヤバい契約させられてる人に見えるな。


そんなことを考えつつサインを終える。



「うむ。契約は結ばれた。さて使用……と行きたいところなんだが、この製品…いや眷属の糸によって直接脳みそに接続することになる。あと、脳への負荷を考えて使用は1日3時間まで、また眷属を失いたくはないので戦闘時の使用は禁止だ。本当にいいんだな?」



「はい……このいろはの試合だけでも観戦したいので。」



「わかった。その意気やよし!眷属…頼むぞ。」



「うむ!わかったのだ!!」



何かが頭に乗る感触と伴に耳から糸のようなものが入ってくる。

うがぁっ!?いだっ!!!おえっ……

脳みそが痺れるような激痛と耳から異物が入ってくる気持ち悪さに思わず倒れそうになるのを必死に堪える。


永遠にも思える激痛に耐え、なんとか少しづつ慣れていく。


そんなこんなで痛みに耐え、ひたすら堪えていると少しづつノイズ混じりではあるが周囲の映像が入ってきた……?


うわ、何これめっちゃ歪んでる。え、全方位見れるって待って!情報量が多すぎて、処理が追いつかないんだけど!?


視界の混濁と、激痛に苛まれつつなんとか情報を整理していく。



「……あっ、いろはの試合ちょうど始まるとこなんですね。よかったです。」



よかったぁ。ギリギリ始まる前に把握できた。

色が少し薄いことと見れる範囲の処理がきついことを除けば普通の視界……かな?



……あ、ダメかも。なんか熱出てきた……



「蜘蛛さん、ちょっと目を2個しか開けないってできませんか?」



「わかったのだ!」



あ、だいぶ視界がスッキリした。これで落ち着いて見れるね。



「……慣れるの早すぎないか?というかなんで普通に喋れるんだ!?この子人間じゃないぞ。」



「あら、この程度はまだ序の口よ。この子が人外なのは今に始まったことじゃないわ。」



なんか後ろで言われてる……




なんも聞こえてませんからねー!!!



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【蜘蛛の糸(感覚共有)】

とっても不思議な蜘蛛の糸。透き通っている極細の糸だが、強度はそこそこ。感覚を共有する特徴を持つがそれを繋ぐには知恵の神の加護が必要。故に巫女が希少な現代では基本使い道は無い。

もし、これを人体に繋ぐ暴挙をするやつがいるなら痛みや情報量の多さから耐えられるはずもないだろう。耐えられるやつがいたらどうなるか……まあ人間ではないことは確かだろう。

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