第14話しらべものです



「お姉様行っちゃいましたね……」



「行っちゃいましたねぇ。んー…どうしましょうか?」



伸びをして体をほぐしつついろはに話しかける。

いやね、殺気が多すぎてずっと戦闘態勢でいたから固まっちゃったんだよね…(自業自得だけど)



「そうですね…言われた通り情報収集と装備更新しますか?」



「といっても、装備更新できるほどのお金ありましたっけねぇ……」



「アイツらはお金持ってなかったんですか?」



「そうですねぇ、なんかやたらと悪趣味な鎧とか剣とかはゲットできたんですけどお金は合計で7万くらいですかねぇ……」



「どれくらいかかるかわからないので、何とも言えませんが装備を売っぱらえばどうにかなるんじゃないでしょうか?」



いろはは結構ドライだね…

いやアイツらが買い戻せる機会を作ったから優しいのか?あ、街入れないんだった。どんまい(ざまあ笑)



「そうしましょうか。とりあえず調べ物ですかねぇ……」



とは言っても広すぎてお目当ての資料を見つけるには大分かかりそう………と思っていると



「お前たち、探しものか?」



声の主の方に振り返った…が、見当たらない。



「お前たちどこを見ている。ここだぞ、本棚の4段目だ。」



注意深く言われた通り本棚の4段目をみてみると



「…蜘蛛?」



「そうだ。私はお母様の創り出した眷属なのだ。この図書館の司書としての役割を担っているのだぞ。」



うん、間違いなく蜘蛛が喋ってるな…そして蜘蛛なのにドヤってるのがなんか伝わるな。

蜘蛛だけど意外とかわいいかも?



「では、蜘蛛さん。クイーンラットの生態とキングラットの巣穴の詳細が乗っている本を探しているのですが、どこにあるか知ってますか?」



「もちろんわかるのだぞ!着いてくるといいのだ!」



すごく嬉しそうな様子でぴょこぴょこと飛び跳ねるように案内してくれる蜘蛛さん。もしかして頼られて嬉しいのかな?



「ここなのだ!!!」



「ありがとうございます蜘蛛さん。」



感謝の言葉を告げると、当然だと言わんばかりに仰け反って…ひっくり返った。かわっ

直してあげると恥ずかしかったみたいで、無言でそそくさと本棚の隙間に入って逃げちゃった…残念



「かわいい司書さんがいなくなっちゃった……」



「ゆらさん、落ち込んでないでさっさと調査しましょ!」



なんかいろはが冷たい…ショック…………?


蜘蛛さんがいる時は一言も喋ってなかったのにいきなり急かすなんて…もしかして?


可愛いなぁっ思ってによによ見てると



「何ぼーっとしてるんですか。さっさと調べますよ!」



「そだね。蜘蛛さんが帰ってくる前にね?」



「なっっ!?そんな訳じゃないですか。蜘蛛が苦手なんてそんな事……」



必死に誤魔化すいろは…からかいがいあるなぁ



「ふうん……まあ調べよっかぁ」



もっとからかって遊びたいところだけど急いでるしこれくらいにしてあげよっかな



「そ、そうですねっ!」



しばらくの間無言で、蜘蛛さんが勧めてくれた3冊の本を読んでいく。クイーンラットから学ぶ美学、ラット族に学ぶ家庭円満の秘訣、キングラットの巣穴の構造とラット族の分布………最初のふたつは誰が書いたんだこれ?


タイトルからまともな内容か疑わしかった上記の2冊は意外にもクイーンラットの持つ行動原理や、ラット全体の生態が詳しく書いてあり、参考になる点は多かった。


いろはもキングラットの巣穴の構造とラット族の分布を読み終わったらしく、情報のすり合わせを行うことになった。



「ゆらさん読むの早いですね…なにか役に立つ情報少しはありましたか?」



「そうですね。結構ありましたよ。クイーンラットは多産であり1回に100以上の子を産むこと、愛情深いため子供を殺されると怒り状態になり通常以上の力を発揮すること。また、子供もクイーンラットを守るために全力を尽くすため、クイーンラット討伐は至難の業…らしいです。他にも、ラットの種類別でそれぞれの性格が詳しく書いてあって面白かったです。」



「そ、そんな情報が……本はタイトルによらないものですね………」



気持ちは凄くわかる。このタイトルなんでつけたんだろ…結構役に立つ内容なのにタイトルで損してる気が………



「私の本は、地型と生息域についての説明だったので簡単な地図と分布図を描いてみたんです。基本は一本道らしいので、迷うことはないかと……」



いろはが優秀すぎる…



「ありがとうございます〜いろはは凄いですねぇ」



わしゃわしゃーと流れでいろはの頭を撫でる

うわっサラッサラ、髪質綺麗で羨ましいなぁ。夢中で撫でていると



「わわっ?なんですか?」



いろはが困惑して動けなくなってる。その隙にいっぱい撫でておく。うん、満足。



「じゃあ、装備買いに行きましょうかぁ」



「は、はい。そうですね?」



図書館を出ようとしたとき、気配を感じてふと後ろを振り返ると受付のカウンター上で必死に手を振って見送る蜘蛛さんが……


こっそり手を振り返すとぴょんぴょん跳ねた。かわいいな蜘蛛さん。


後ろ髪を引かれつつ外に出る。


さあ、装備を探しに行きますか。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


蜘蛛さんから一言

ひさびさに人と話せて嬉しかったのだぞ!お母様も最近相手してくれないから、寂しかったのだ……

張り切りすぎて、ひっくり返っちゃったのは反省なのだ……また来ないかな……………

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る