第13話ほうれんそうは大事!



たどり着いたそこは神殿というよりは図書館というのにふさわしい姿だった。

赤レンガの大きな建物で、唯一神殿らしいものとしては女神像が飾ってあるのみだった。



「おネェ様。ここが知恵の女神アテナの神殿なんですか?」



「そうよぉ〜ここがファースト中心部であり、街を管理する役割を持ってるの。ここの巫女は堅苦しいけど、その知識はピカイチよぉ。もしゆらが困った時は神殿に行けばどうにかなると思うわぁ。」



「私が…ですか?」



いろはがいるのに私だけに限定することに違和感を覚えていると



「巫女っていうのはそれだけ特別なものなのよぉ。だから、じゃんじゃん利用しちゃいなさい!」



パチーンとお茶目にウインクを決めるおネェ様。

ヘスティア様………そんな気軽に渡しちゃいけないものなのでは?

おネェ様がつかつかと歩み寄り扉を開けると、そこには壁が全て本で埋まっている空間があった。

中に入ると少しカビたような本独特の匂いが鼻をぬけてきた。



「わぁ、意外と人が少ないんですね?」



いろはが目を丸くしてキョロキョロしてる。なんだろうな…ミーアキャット?



「知恵の女神の巫女は外で研究する人が多いのよぉ。ここに居るのは名前持ちの巫女が1人と見習いだけねぇ。」



「そうなんですね…巫女と言っても神殿にいる訳じゃないんですね」



「そうよぉ。だって私だって美の女神の巫女だけど随分神殿に帰ってないもの。」



神殿…ヘスティア様のもあるのかな?

事が落ち着いたら聞いてみよっかなぁ


おネェ様は初めての場所に戸惑う私達を他所に、階段を登り奥へと進んでいく。そして、本棚の影に隠れるようにある扉を開けて



「ラーネ来たわよ!!!」



そこにはボサボサの髪の毛に大きな眼鏡をした女性がいた。少し大きめの白衣を羽織っていて、全体的にどこかぼやけた印象だ。



「なんだ、アイン。騒がしい。ここは図書館だぞ。静かにしろ。あと禁書庫に部外者を連れ込むなと何度言ったらいいんだ………」



気だるげに口を開くラーネさんだが、言っているほど嫌がっているようには見えない。なんだかんだこの2人仲良いんだろうな。



「この子達の件で来たのよ!というか、あんた神獣の核である宝珠を盗まれるなんてどういうことよ!?」



そうおネェ様が言った瞬間、ラーネさんから一気に殺気のようなものが纏わりつくのを感じた。



「なんで、お前がそのことを知ってるんだ?どこまで知っている。場合によっては殺す」



「もーお、あんたはいい加減短気なのを直しなさいよ!この子達が神獣に異変がおこってることを伝えてくれなかったら危うく異常繁殖スタンピードが起こるとこだったのよ。いいからこの殺気をやめなさいなっ!」



その言葉に納得したのか、ラーネさんは落ち着きを取り戻した。



「スタンピードが起きる予兆があったのか……だが、私にはどうすることもできない。宝珠が帰らぬ限り、私はこの神殿から動くことが出来ないからな……」



「そういえばそうだったわねぇ。宝珠って神殿を守る結界の核だからなくなると、私達みたいな上位巫女が神殿を守らないとなのよねぇ。」



おネェ様簡単に言ってるけど、結界の代わりができるってとんでもないのでは………



「うむ。だから私は当分ここを動けないのだ。せめて宝珠が帰ってくれば、やりようはあるが……」



宝珠…確か炎くん達が盗んだってやつだよね。アイツらどこに隠し持ってたんだ……?



「あのぉ、もしかしてのもしかしてなんですがね?」



いろはが急に耳打ちしてきたので少し構えながら話を聞く。



「どうしたんですか、いろは?」



「本当にもしかしてなんですがゆらさんが持ってたり………?」



まさかまさか、そんなわけないじゃないですかとアイテムボックスの中をあさってみる。



……あったわ



無言でおネェ様とラーネさんの前に宝珠を差し出す。



「なっ、どこでそれを!?」



アイテムボックスの整理忘れてたぁ………

炎くんとかその他大勢を殺ったあとなんかいっぱい入ってるなぁって思ってはいたんだけど、まさか宝珠もあるとは……


あ、おネェ様が説明しろって睨んでる。殺気すごい死んじゃう。



「宝珠を盗んだゴミ屑を掃除してる時に、落としたんです…その後ドタバタしていたので今気づきました。すみません…………」



ため息つかれた。おネェ様見捨てないで…



「何はともあれ、君が見つけてくれたのだな?感謝する。詳しい事情を聞きたいとこだが、私は今すぐこの宝珠の浄化にかからねばならない。アイン、あとは任せた。」



そう言うや否や、ラーネさんは部屋の奥へと消えていった。



「全く…結局全部丸投げじゃない……あと、ゆ・ら?さっきの件はこの件が解決したらバッキバキにしばくから覚悟してなさい?」



うう…これに関してはなんの反論もできないよ。

いろはが気づいてなかったら、本気で危なかったんだろうし………



「はい…」



「まあ、今はこの件の解決が優先ね。幸い許可は貰ったし、街にスタンピードのお知らせを出して合同討伐しちゃいましょ。」



「いいんですか?」



許可貰ったっけ……?



「ラーネが任せたって言ったんだから大丈夫よ。私は一足先に戻って冒険者ギルドにお触れを出しておくわ。ゆらといろははこの神殿でクイーンラットの生態と、街で装備を整えときなさい。参加しないなんて許さないわよ?」



「「はい」」



つい気圧されて2人して頷いてしまった。


頑張るかぁ………

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