第15話おみせさがしです



蜘蛛さんに名残惜しさをを感じつつ別れたはいいものの、私たちは迷っていた。



「装備を整えようと言ったはいいものの…どこに行けば???」



「えっ!?ゆらさん知らないんですか?てっきり知っているのかと…」



この街歩くのも今日が初めてだし…どうしよ?



「んー…こういうときは裏路地にすごいお店があるとどこかの小説で読みました!ということでいろは行きましょうか!!」



このまま迷ってても仕方ないしね。行動あるのみだよ!



「えぇ…」



困惑しているいろはの手を引いて見るからに怪しそうな路地裏に入っていく。大通りから離れるにつれて人通りが少なく静かな重たい空気に変わっていくのを感じる。

なんかちょっとわくわくするなぁ。



「ほ、本当にこんなところにお店なんてあるんですか?帰りましょうよ…」



いろはは怖がりだね~こっそり服の裾つかんでるのかわいいわぁ



「でもですねぇいろは、明らかにカスタマイズされている鎧や武器を売却できるところなんて正規の場所には無理だと思います。取引に応じてくれるのはプレイヤーか裏取引専門のお店くらいじゃないでしょうか?プレイヤーと取引できたら一番よかったんですけど、市場価格がわからないからぼったくられそうですし…」



「そこまで、考えてたんですか…?でもNPCの方との取引でも同じでは?」



「まあ、そうとも言えますけど私の巫女という職が活きることも考えたら非正規NPCのお店が最適かなと思いまして。」



おネェ様が言っている感じだと巫女は重要な役職っぽいし一方的にぼったくられることはないんじゃないかな?希望的観測だけどね…

その後も無言で入り組んだ裏路地を進んで行く。


あー…これは



「あの、ゆらさん?気のせいかもしれませんが迷ってませんか?さっきからずっと同じところをぐるぐるしてるような…」



ギクッ…



「そ、そんなこと…ありますね………」



「だ、だから帰ろうって言ったんですよぉ…」



半泣きでぽかぽか叩いてきてるけど全然痛くないや。かわいいだけだわ。


…あれ?



「いろは。もしかしたら当たりかもですよ?」



「この期に及んでまだ言いますかぁ!」



ほっぺたを膨らませてぷんすこしてるのかわいい…じゃなくて…



「さっきからどこに行っても同じ道になってませんか?」



「え?」



いろはの手を引いて来た道を引き返してみる。うん、やっぱり同じ場所に出るね。



「いろは。この道の鑑定ってできますか?」



いろはは少しの間ぽかんとした顔をしていたけれど



「は、はいわかりました!」



そう言うと、モノクルのようなものを取り出しじっと虚空を見つめだした。



「鑑定できました!ここは陽炎通りだそうです。詳細の欄も見てみたんですけど見えるものが真実とは限らないという説明じゃない説明があるだけですぅ………」



あ、いろはが落ち込んじゃった。いろはをなだめつつ、《見えるものが真実とは限らない》というフレーズが引っかかり、何の気なしに十字路の壁のほうに歩いていき触れてみようとした瞬間



「わわっ!?」



「わぉ…」



私たちはひっそりとたたずむ小さな店の前に放り出されていた。

しばらく逡巡したのち意を決して、ドアをノックすると



「いらっしゃぁい…」



とハスキーな女性の声が聞こえてきた。



「お、お化けですかっ!私は美味しくないですよっ!!!」



いろはが混乱して訳のわからないことを言ってる…

確かに、こじんまりとしてて暗いからお化け屋敷っぽいっちゃぽいけど………



「人のことをお化け扱いたぁ失礼なことだねぇ。久々のお客じゃなきゃ蹴り飛ばしていたところだよ。ほら、さっさと入っておいで。よくないものが入って来たらどうするんだい。」



扉の先へ入っていくとそこには気怠そうな花魁の格好した女性がカウンターの机の上に腰掛けていた。

片目が隠れる程の長い前髪と雑に括ってある後ろ髪。そこから覗く右目は赤く怪しい光を宿していてミステリアスな雰囲気を醸し出している。


美人さんだなぁ

黒色の着物に彼岸花の刺繍が入っててすごく艶やかで美人さんの色気を引き出している。

綺麗だけど絶対裏の世界の人だぁ………



「あーやっと入って来たのかい。」



煙草をふかしながら、その美人さんはこちらに視線を向けてきた。



「お邪魔します。こちらはどのようなお店なんでしょうか?」



そう言うと美人さんは愉しげに目を細め、こちらをしげしげと眺めたあと



「知らないで入ってくるなんて随分だねぇ。そうさね……ここはなんでも屋とでも言おうかねぇ。非合法なことから健全なことまで、なんでも取り扱っている魔法のお店さねぇ」



そう言うとクククッと笑って、こちらに近づいてくる。



「まさか久々の客がこんなに若い小娘達だとはおもわなかったねぇ。まあ、誰からも教わることなくここにたどり着いたんだ。サービスしてあげるかねぇ…………」



随分癖が強そうな人だなぁ。

なんで、こんなに普通じゃなさそうな人に会うのかな?私は普通なのになぁ


永遠の謎だよ………


普通にお買い物できるか不安だけど、交渉頑張りましょうか…

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