第18話ねずみ講って元締めをやれば鳴かなくなるらしいですよ?



西門に着くと、すでに多くの冒険者や商人などで簡易拠点が作られていた。鍛冶屋やアイテム屋も出張しておりそこかしこで怒号や呼び込みの声が飛び交っている。



「わぁ…まだアナウンスからそんなに時間が経ってないのにもう人が集まってるんですね!」



「できる商人や冒険者っていうのはねぇ、アナウンスの前から準備しているものなのよぉ。大方私が神殿に行ったのを見てもう準備を始めてるはずよ。」



そういうものなんだ…最初の街の住民は弱いなんて限らないんだねぇ。おネェ様みたいなのがゴロゴロいたり…?怖い(ブルッ)



「じゃあ私達は先に行くわよ。」



「えっ?皆さんと一緒に行かないんですか?」



「何言ってんのよぉ。私達がクイーンと戦ってる間に溢れ出る鼠の軍勢を冒険者共に処理して貰うのよ♡」



え、でも普通私達が入った瞬間に物量で押し切られるのでは?不思議に思っておネェ様の方を見ていると



「なんか心配してるみたいだけどぉ、私だって何も考えて無いわけじゃないのよ?いいから着いてきなさいな。」



おネェ様が大丈夫って言うなら大丈夫なのかなぁ……?

なんか嫌な予感するんだけど気のせいだよね?


不安に思いつつ着いて行っていると、キングラットの巣穴の入口が見えた。そして、通り過ぎた…???



「ちょちょちょ、ちょっと待ってくだい!!!お姉様巣穴通り過ぎてますよ!?」



うん、やっぱりそうだったよね。私の見間違いかと思ったよ。いろはがいるとツッコミに困らないね。



「いいから早く行くわよ!!!」



おネェ様は話す気ないんだねぇ。ますます嫌な予感が…


その後も15分くらい歩き続けると、おネェ様が唐突に立ち止まった。



「いろはぁ、ここの土鑑定してご覧なさいな?」



「あ、はい。えーーっと、キングラットの寝所の壁……?」



あ、やばい



「助かったわ。じゃあ久々に派手に行っちゃうわよぉーーーーーー!!!」



そう言って、おネェ様は杵を取り出して振りかぶると………思いっきり地面に叩きつけた。

轟音と共に衝撃波が横を通り抜け、そして私たちの足元にヒビが入ったかと思うと一気に崩れ落ちた。



「あー……そうですよねぇ。」



「な、なんでそんな冷静なんですかーーー!って、きゃーーーーっっ!?」



少しの間の浮遊感を味わったあと、私達は瓦礫と共に地面に叩きつけられた。かと思いきや、おネェ様が私達を空中で抱え華麗に着地していた。



「もぉーあなた達は本当に騒がしいんだからぁ。こういう時は、受け身をとるようにしなきゃだめよ?」



理不尽……



「無、無理ですよぉ。お姉様が凄すぎるだけですよ…」



そーだそーだ!いろはの言う通りだー!


いろはのその言葉に気分良さそうにしつつ、おネェ様はポケットから毛糸玉のようなものを取り出した。



「ふぅ…仕方ないわねぇ。そろそろ雑魚どもがやってくる頃かしらね。ゆらそっちの端持ってくれるかしら?」



毛糸玉の端を持つとおネェ様はどんどん糸を出し、大きな円を描くように広げていく。そして部屋全てを覆い私の持つ端と繋げた瞬間、毛糸玉がひとりでに動き出し蜘蛛の巣のように広がっていき、ドーム状にこの部屋を隔離した。



「これってなんですか?」



「ラーネ特製の結界糸よ。ラーネが1年かけて作ったものだから、そんじょそこらの衝撃じゃ壊れないから安心していいわ。」



用意周到……教えてくれてもよかったのでは?

私のジト目を無視しておネェ様は瓦礫の下を睨んでいる。下にまだ何かいるのかな……?さすがに死んでるんじゃないかな?


そんな事考えたのが良くなかったのかもね……

瓦礫が震えたかと思うと



「ヂュアアアアアアアアアアッッッッッッ!!!」



鼠にしては随分醜悪な化け物が飛び出してきた。



「ゆら達、行くわよっ!」



「きゅ、急にですか!?勘弁してください……」



「意外とあの図体ですばしっこいですね……行きましょうかぁ。」



楽しそうだね♪


何気にモンスターと戦うのは初めてだなぁ。返り血はどんな味がするのかな……?わくわく。



「いろは、鑑定お願いしますね。」



「あっ、そうでした!えっと、種族は《狂乱の》クイーンラットで弱点部位は、腹部の辺りですかね……?あれ?」



おネェ様がクイーンラットの攻撃をいなしつつこっちに攻撃が来ないよう時間稼ぎをしてくれている。


私だとあの攻撃避けてられるか怪しいから、迂闊に参加できない……



「どうかしましたか?」



「いえ、見間違えかもしれませんが、クイーンラットの頭上に小さく文字が見えた気が?」



「ふむ…」



んーわかんないし適当に………



「ヂュッ!?」



刺さらなかったかぁ……でも、明らかにクイーンラットじゃない声あったねぇ。



「あっ、見えました!!!種族は《賢き》キングラット、弱点は……きゃっ!」



急に光球が飛んできた?でも、クイーンラットに動きはないし…ってそういうことか……



「おネェ様!頭上のキングラットは魔法型です!そのままひきつけお願いします!!!いろはは……頑張って逃げて。」



「温度差すごくないですかぁ!?」



いろはの声を無視しつつ、私は準備を始める。



さぁ、2体ネームド討伐と行きましょうかぁ。


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ラーネ結界糸

アイテム名:結界装置

ラーネが丹精込めて作った糸玉。現在では3個しか存在しておらず、とても貴重。起動すれば3日間は破られることは無いという。

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