第19話ねずみの天敵はにゃんこです!



おネェ様が時間を稼いでいる間に攻略法を考える。

いろはを恐れているように魔法を打ち続けるということは鑑定されたくないってことかな?


となると、いろはが鑑定できる隙を作らなきゃな。そのためには、キングラットに魔法を使わせない方法か……


ってそれが弱点では?手探りでやるしかないのか…



「ゆ、ゆらさん!猫になればいいんですよっ!鼠なら猫でイチコロですっ!!!」



いろはも錯乱してるなぁ。

まあ、突然のことで発動してなかったし使うかぁ…


と、なんの気なしに巫女の力を使うと



「「ヂュアッッッ!?」」



ん?一瞬怯んだ?もしや…こいつら猫にがっ!?



「「ヂュブラァァァァッッッッ!!!!!!!!」」



って、うわっ!?



「えっっ、なんで急に攻撃が苛烈に!?てか、魔法も物理もはきついんですけどっっっ!???」



鼠の天敵って言うなら、普通逃げるとか怯えるのでは……?



「ゆらは馬鹿なのかしらっっ!?天敵を見つけた動物なら巣に入りこまれた時点で全力で殺す思考になるに決まってるじゃない!!!ましてや、上位個体ならある程度以上の知能があるんだからっ!ほら、カバーしてあげるからこっちにいらっしゃい!!!」



おネェ様に怒涛のツッコミを受けて気づく。あー……そっか、王に女王だもんね。守る立場なら尚更か……

モンスターだからって舐めてたかも、反省しなきゃ。



「鑑定できましたよっ!!!!!キングラットの弱点は…ない?意味不明な詳細だし…これじゃあ鑑定できても意味ないじゃないですか…」



ネズミ共が攻撃を全部私に向けて来るため、自由になったいろはが鑑定結果を伝えてくれる。



「詳細もおねがいっ!」



絶対になにか隠したいものがあるはずなんだよね…

あのネズミ共頭いいから、何もないわけないと思うんだよな。特にあのキングラット小賢しいし。



「えぇ…?名前はクロノス、我はかの賢き者の生まれ変わりなり!だそうですよ?」



あー…そりゃぁいろはも気づかないよね。本当に悪質だなあ………

このネズミが恐れているのはそっちだったんだねぇ。クイーンラットの弱点がお腹だからってお腹ボコボコにしてたらやばかったのかな?

やっぱりキングラットは原作通りに小心者なんだねぇ。


……これ知らなかったら多分魔法と物理で一定以上攻められなかっただろうしお腹にいるものにもまず気づかないから、鑑定通らなかったら詰みだったかもね……



「おネェ様!クイーンのお腹を割きたいので、どうにか5秒時間稼いで貰ってもいいですか?」



「ふんっ、いいわよぉ!5秒できちんと掴み取りなさいっ!!《女帝覇気》!!!」



「はいっ!!!」



おネェ様から溢れ出る気迫に身がすくみそうになる。でも、この5秒を無駄にするわけにはいかない。


おネェ様の横を抜け、クイーンラットの下を潜る。

お腹を守るように戦ってたからこそ私が滑り込む隙間があったって結構皮肉だね。

そしてっと、お腹の部分に来たらナイフを突き刺して…切り裂く。


わかってたけど結構返り血浴びちゃったな……?

うん、ローブが血をどんどん吸収しているのは見なかったことにしよう。


そして中身を回収して、すぐさまおネェ様の元に避難する。



「ありがとうございます!」



「お礼はいいから早く戦略考えなさいっ!ここまでやったのにやっぱりできませんでした…なぁんて許さないんだからね?」



すごく綺麗な笑顔なのに殺気がすごいよ……スキル使ってた時より、覇気を感じる…………



「はいっ!ほら、いろは鑑定!」



「は、はいっ!種族は雷鼠!食べたものに天空の神の力の一端を与える……と!ってかやっぱり私の扱い雑じゃないですかっ?」



…………これ食べなきゃだめなの?



「この子が自主的に戦ってくれるとかないんですか?」



「仮死状態って表記がありますので無理かと…」



えー……これをかぁ

どう見てもドブネズミだし、電気がパチパチしてるししかも顔くらいの大きさなんですけど……



「ゆらぁ……?ま・だ・か・し・ら?」



あ、食べますっ。背に腹はかえられないもんね……

まだ死にたくないから仕方ない。うぅ……


うぇぇっ………生暖かいし、血なまぐさいしまずいよぉっっっ………………

噛まないと飲み込めない大きさだから味が口いっぱいに広がるし拷問すぎるんだけど。おぇっぷ……

トラウマになりそう…………



「えぇ……ゆらさんってそれ食べれるんですね?」



うるさい。お前の口の中にも突っ込んだろか?

いろはに初めて本気で殺意を覚えつつ、なんとか完食する。途中で足がピクピク痙攣したのリアルすぎて気持ち悪いんだけど…………



「うぇ……お、ネェ様、クイーンラットから離れてください………………」



「あんたよくやったわねぇ……それでこそこの私の弟子よ!」



褒められたけど、全く嬉しくない。ちょっとおネェ様引き気味だし…



「《稲妻のつるぎ》」



クイーンラットがおネェ様という壁がいなくなったことで一目散に私のもとに突撃してくる。

あっ、頭の上のキングラットが私の持っているものに気づいて逃げようとしてる。でも、飛び降りるより先にクイーンラットの方が早く辿り着き……



轟音と共にキングラットが切り裂かれた。

やったねっ!そう油断した瞬間に私の体は宙に舞っていた……


お腹がぶち抜かれる程の衝撃とともに、血を吐きつつ

地面に叩きつけられる。



「本当につめが甘い子なんだから…いろは治療してあげなさい。」



霞ゆく意識の中で薄っすらと見えたのは、おネェ様のダンプカーを背負っていそうな背中だった。



……もう大丈夫だね



安心して意識を手放す。








「ドブネズミの分際で女王を名乗るなら、この私を超えてみせなさいな?」



ふふっ……おネェ様はやっぱり美人だなぁ……………



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


クロノス


ギリシャ神話の農耕の神。父神ウラノスを追放した時に、子供に権力を奪われると予言を受ける。その子供の1人が雷と稲妻を扱う後の最高神ゼウスであり、予言通り倒された。


《注意事項》本編に出てくる雷鼠はゼウスではない。

子供に倒される部分だけ同じって感じです。そもそもあのキングラットにクロノス程の格ないしね。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る