第20話ねずみいやいやいやー!



気持ち悪い……


頭がガンガンする。今何してたんだっけ……?



「よいしょっ!はぁ意外と重たいわねぇ。」



揺れてる……?


目を開けた瞬間、起きたことを後悔する。



「えーっとこれは……?」



「あら、起きたのねぇ。見てわからないかしら?ネズミ叩きよ。」



「えっと、なんで私が杵に括りつけられて血を浴びてるのかの説明がほしいんですがっ!?」



そう、視界に広がるネズミの群れ、飛び散る肉片。揺れる体、かかる血しぶき、そして極め付きは地面に向かって落ちていく気持ち悪さ。全てが最悪だった。



「そうねぇ、最初は私1人で行こうとしてたんだけどゆらの巫女状態ってネズミが率先して襲いに行くのよぉ。だからより多くのネズミを叩くことができるの。それにぃ、ゆらのローブが返り血全部吸ってくれるから便利で……つい、ね?」



てへぺろじゃないんですよ、おネェ様っ!?

百歩譲って囮にするところまではわかりますけど、どこに人を杵に括ってそのままネズミ叩きする人がいるんですか!!!!



「おろしてくださいっ!!!」



「えー……楽しかったのにぃ……」



残念そうにしてるけど、絶対に折れませんからねっ!?

根気強く説得し、ひとまず安全地帯に向かう。追いかけてくるネズミを撒いて、何とかさっきいたボス部屋に逃げ込む。ここは、まだ結界糸の効果があってネズミが入れないらしい。


なんとか縄を外してもらい、解放される。

あー……もう本当に散々だよー………………



「ちゅっちゅっちゅー!聞こえまちゅかー!!僕を運んでほしんでちゅー!!!」



視界を横切る光り輝くドブネズミ。



「ちゅぁっ!?叩き潰そうとしてきたでちゅっ!!!やっぱり猫は話のできないあほでちゅ!神獣に敬意をもっと払えでちゅ!!!」



このドブネズミ、ヘスティア様の神獣である猫を馬鹿にしやがったか……??超絶プリティーアルティメットかわいいにゃんこを???



「たかだか神獣の分際で偉そうにするな……ヘスティア様を侮辱するつもりか?」



ヘスティアという名前を出した途端、急に自称神獣のドブネズミが震え始めた。



「お、お前もしかしてへ、ヘスティアの巫女とか言わないでちゅよね?だ、だってあいつはもう星界にいったはずでちゅ……嘘つくなでちゅっ!」



んー……?このシャイニングドブネズミ、ヘスティア様のこと知ってるのか?



「私は平穏の巫女ゆら。ヘスティア様を信仰する巫女です。」



「ちゅああああっっ!?あの似非平和主義の暴力女神の巫女でちゅっっ!??な、なんでちゅかまたこのプリティーな僕をいたぶるつもりでちゅかっ!!?」



「聞き捨てならない暴言ですね……焼きネズミと煮ネズミ、揚げネズミ、それともたたきがいいですか?刺身じゃなければなんでもいいですよ?」



生はもう嫌だからね……………………



「なんでゆらさんは食べる前提なんですかっ!?じゃなくて、このネズミは一応神獣なんですよね?だったら一応神殿に持って行きましょう!あ、でも汚れた宝珠によって狂っているって言いますしバッチいんでしょうか……?」



「そこの小娘も失礼でちゅねっ!!バッチくなんてないでちゅっ!!!ただちょっとあの暴走してたクイーンを止めようとして食べられただけでちゅ……それによってクイーンがNMになるのは予想外だったでちゅけど…………」



……こいつのせいじゃん?やっぱ殺そう




「このドブネズミが元凶だったんですねぇ。殺しましょう。」



「それもいいかもしれないわねぇ。宝珠を奪われたごときで人様に迷惑をかけた神獣なんてねぇ…」



そうです。おネェ様やっちゃいましょう!!!



「ちゅあああっ!?美の巫女、お前までこの僕を庇わないんでちゅっっ!?」



「あ、そうだったわぁ。やっぱりこの害獣持って帰りましょう。イイコト思いついちゃった♪」




えぇ……


でも、おネェ様がご機嫌だから、多分このネズミはろくな目に合わないんだろうな……まあいっか



「仕方ないですねぇ。おネェ様がそういうならそうしましょう。というかドブネズミは何処から出てきたんですか?」



「クイーンのお腹からでちゅ……途中ナイフが横を通った時は肝が冷えたでちゅ………ちゅぅっ、宝珠が汚されたことで酩酊状態じゃなきゃ、キングやクイーンを止めることなんてお手の物だったんでちゅけど……あ、でもほろ酔いって感じで気分良かったでちゅしたまにはいいかもでちゅねぇ。今度からは酩酊状態のときは仕事サボって遊ぶでちゅっ♪」



ちっ、そのまま切られれば良かったのに…

そしてこのネズミは結構屑だなぁ。

よし、死刑!


このネズミが要らないことをペラペラ喋ってると、おネェ様が近づいてきて耳打ちしてきた。



「大丈夫よぉ、ラーネに全部私がある事ない事チクっておくからぁ。」



ラーネさんにか……おネェ様が大丈夫って言うなら、なんかあるのかな?



「まあとりあえず街に帰りましょう!戦利品もいっぱい手に入れましたし!!!」



「そうなんですか?」



「あ、ゆらさんは気絶してましたもんねっ。色々ありましたよ!ここで鑑定してもいいんですけど、早く帰ってシャワー浴びたいです……」



確かに……

私もシャワー浴びたいかも……血は全部ローブが吸ったけど、なんか気持ち悪いし…………



「そうねぇ、じゃあ2人と害獣私の腕に乗りなさいっ!せっかくだし乗っけてってあげるわ。」



わぁ!ちょっと年甲斐もなくワクワクするねっ!

この歳になると滅多に肩車なんてして貰えないもんね……


こうしておネェ様の肩の上で風を受けつつ私たちは街に帰ったのだった。冒険者の人達の視線は痛かったけど……ちょっとはしゃぎすぎちゃったかな………(反省)




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る