第21話戦利品を整理しましょう!



街に帰ってきた私たちは、ひとまず神殿に向かうことになった。



「知恵の女神の神殿の禁書庫奥にはねぇ、英智の水晶があるのよ。普通なら使えないけど、ラーネにちょぉっとお願いすればオッケーよぉ!この際全部の再鑑定しちゃいなさい。普通の鑑定じゃ映らないことも全部映るからねぇ。」



すごい……のか?全部映るのもそれはそれで怖い気がするけど……



「そうなんですね。全部映る鑑定ですか……いつかできるようになりたいものです……はぁ……」



いろは、すぐには無理だと思うよ……

というか、神殿に厳重に保管されてる道具くらいの鑑定ってほぼ不可能じゃないかな……?



「んー……私が思うにはいろはの適性はそっちじゃないと思うのだけどねぇ……?まあ、いろはが頑張ればそれくらいはできると思うわぁ。」



んんん?おネェ様はいろはのことなんかわかったのかなぁ。それに、何気にいろはの評価上がってるよねぇ。前はもっと私のおまけとして扱ってたような気がするから、気絶している間になんかあったのかな……?



「そうですか…んー、私の適正ってなんなんだろ?」



気になるところだけど、ラーネさんに会うのが優先なので神殿の扉を開ける。



「お前たち来たのかっ!」



おネェ様に続き中に入ると急に顔めがけて何かが飛んできた。

慌てて両手で受け止めると



「待ってたのだぞっ!お母様が待ってるのだっ!!!」



蜘蛛さんだった。相変わらず必死で跳ねててかわいいねぇ。じゃなくて、待ってるってどういうことなのかな?



「ラーネが……?何かあったのかしらねぇ。急ぎましょうか。」



あ、なんとなく察してたけどこの子のお母様ってラーネさんなんだね。んー…嫌な予感はしないから大丈夫だと思うけどね。


そんなことを思いつつ階段を登り禁書庫に入る。



「おう、やっと来たのか。待ちくたびれたぞ。」



「もー私たちはクイーンラット討伐してきたんだから、そんなに早く帰ってくるわけないでしょ?」



「えっ!お、お前たちもしかしてもうクイーンラット討伐してきちゃったのか……?」



なんか残念そう……?驚いてるし、なんかまずかった?



「あー……そう言うと思って、ほらいろはあれ出して。」



「えぇっ!?ここでですか?」



「いいから、早く出しなさい。」



おネェ様に急かされていろはは渋々とリュックから大量のネズミとクイーンラットの死骸を出した。

うぎゃ!って、え容量大きすぎない?アイテムボックスみたいなやつってこと?私持ってないんだけど……羨ましい…………ギリリ(歯ぎしり)



「えっいいのか!!!ありがとう!」



「魔核は渡しなさいよ?」



「もちろんだ。あんなの硬くて不味いだけだからな。」



そう言って、ラーネさんは不格好だった白衣を脱ぎ捨て……



蜘蛛の口でネズミを食べ始めた……?



「ええっ!?ラーネさんって蜘蛛なんですか?モンスターなんですかっ?」



「もぐもぐ……わらひはもんふたーとはちがうぞ。」



「ラーネ……食べながら喋るのはお行儀悪いわよ?そういえばゆらといろはには話してなかったわね。ラーネは半人半蜘蛛アラクネ。んーと定義を説明するとややこしくなっちゃうんだけど、一応人族よ。アラクネという種族はこの世界にはラーネただ1人しかいないの。だからアラクネはモンスターではないのよぉ。」



「モンスターとは違う存在なんですか……えっとモンスターになる基準ってあるんですか?」



おネェ様の言い方ではアラクネがモンスターじゃないのはラーネさんだけだからってことらしいけど……



「敵対してるかどうかだぞ。人間の敵かつ異形の姿のものをモンスター、友好的なものが人族なのだ。もし私以外のアラクネが存在して敵対していたとするなら私はモンスターとなる。」



一通り食べ終わったらしいラーネさんがそう言う。食べるの早っ。



「そうなんですか。ちょっと残酷ですね……」



「って、なんで湿っぽい空気になってるの!ラーネもラーネですぐに食べ尽くすんじゃないわよ。クイーンラット以外残ってないじゃない!」



「ぬ。クイーンラットはやらんぞ?」



「食べないわよっ!ってあーもうっ!!!この子達の鑑定したいから英智の水晶使わせなさい!!!」



おネェ様……聞いた感じだとこの神殿の大事なものっぽいしそんな簡単に貸してくれないのでは……?



「いいぞ。そこの奥にある。壊さないでくれよ。」



えぇ、意外とあっさり……



「いいんですか……じゃあ遠慮なく使わせて貰いますね?」



いろはもいろはでグイグイ行くねぇ。って、なんかいっぱいまたバッグから出してる……



「順番に鑑定していきますよ〜!」



《クイーンラットの前歯》

齧歯類の女王にふさわしいとても綺麗な前歯だが、折られているため剣などに加工することはできないだろう。砕いて薬にするか、アクセサリーにするのがよい。



《クイーンラットの冠》

《狂乱の》クイーンラットが生前身につけていた冠。とても美しい宝飾がされているが見る影もないほど穢れている。その原因は、同族食いの呪いによるものであろう。この呪いを跳ね除けるほどのものが身につければ装備者に肉体を強化する効果の様々なバフを与えるであろう。



《鳴神式アーミーナイフ》

ネームドモンスターに打ち勝ったものであるゆらに贈られた特殊装備。一時的に轟雷の力を操ることができる。しかし、ゆらが無理やり力を獲得したため装備者が相応しい力を得るまでは正しく使いこなすことができない。現在では使用時に、瀕死になる代わりにアーミーナイフを振った剣筋に向かってまっすぐ雷が飛ぶ。使いこなせれば、強力な武器になるだろう。



《女帝のマント》

ネームドモンスターに打ち勝ったものであるアインに贈られた特殊装備。真の女帝近づくほど、筋力が増える。まさにクイーンラットとの一騎打ちに勝利したアインに相応しいと言えるだろう。



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一通り装備やアイテムの鑑定が終わったね。特殊装備ってなんか心が踊るよね♪ってあれ、キングラットのアイテムは……?



「いろは、キングラットの何かってないんですか?」



「ないです。キングラットはゆらさんが雷で消し炭にしちゃったから素材がはげなかったんです……」



そうなんだ……このゲーム倒し方も大事なんだね。

次は気をつけなきゃ。



ふぅ……次は私達自身か………うぅ、なんか緊張するかも。



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英智の水晶

知恵の女神アテナによって産み出された水晶。万物の真理を内包していると言われ、世界に1つしかない逸品。その水晶が鑑定できないものはほとんどないが同格以上のものは不可能である。現在はファーストにある神殿の禁書庫にて保管されている。

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