第38話いろはさん……?(視点︰いろは)




「ふぅ……」



ドキドキしながら、目を開けるとそこは不思議な空間だった。



「ここは海……いや湖の中?」



揺らめく光が幻想的でついつい見惚れてしまう。

だけど、ここはどこなんだろう?さっきまでお姉様とゆらさんと一緒に広場にいて、私の番だから闘技場に転送されたはず……だよね。


そんなことを疑問に思いながら藻?でできた椅子に腰掛ける。あ、めっちゃぽにょぽにょしててフィットする!え、すごーい!!!


楽しくなって椅子の上で跳ねてると



「今回はご参加ありがとうございます。私はこの闘技場のナビゲーターを務める弁慶と申します。」



突然、高身長なよっと系の眼鏡イケメンくんが現れた。弁慶かぁ…んー名前のいかつさに似合わない細身だな。



「よろしくお願いします!」



「今大会中は試合の待機時間は、出場者様の1番落ち着くイメージのお部屋で待っていただく形になります。それではお時間までごゆるりとお待ちください。」



「はーい!」



噂には聞いてたけど脳内のイメージを読み取る技術ってすごいなー。そこら辺の法律も整理されたから、今では安心安全にVRを楽しめるし、最高だね!


不思議なタコのような触手が絡まった冷蔵庫を開けると美味しそうなサイダーがあったのでとりあえず飲んでみる。


あ、爽やかでおいしー!


他の味もあるんだ。……これは勝ち残って全種類制覇しないとかな。


そんなこんなでくつろいでいると、目の前にウインドウが表示された。



《闘技場準備が完了いたしました。転送まで5秒……》



えっ、だいぶ急なカウントダウンなんですけど?


まあでも、控え室なんだからそんなものなのかなぁ。

ちゃちゃっと武器とアイテムを鞄に詰め込んで準備を終える。



「さぁて、モノクルくん!一緒に頑張りましょー!!!」



ん、なんかちょっと震えたような?

……もしかしてやっと懐いてきたかな、よしよし。


体が徐々に透けていき転送されていく。何度味わっても不思議な感じがするな。


視界が急にホワイトアウトし、次の瞬間には開けた空間にいた。



「おー!ここが闘技場!!!」



周りを見渡していると、対戦相手と思しき人が目の前に現れた。



「おうおうおう、こんなちっこい嬢ちゃんが来るようなとこじゃねぇぞ。ここは。」



「もしかしてあなたが対戦相手さんですか?よろしくお願いしますねー。」



んー厳つめのオニーサンか。グラサンで角刈り、いかにもって感じだなぁ……

頭は悪そうだけど、万が一があるからな。



「はっ、怪我しないうちにとっとお家に帰んな!」



見た目だけで弱そうって判断するような奴だから、やっぱり弱いかも。じゃあ実験台……?いや、でも弱者をいたぶる趣味はないし……



「えへへー、怪我の心配なんてオニーサン優しいですね。私もとっとと帰りたいのでさくっと倒しますから安心してくださいね。」



「ワケわかんねーこと言う嬢ちゃんだ。……ん?あーお前、掲示板でマッチョにお姫様抱っこされてた女と一緒に写ってたやつじゃねーか。あの女、めっちゃ美人で胸もデカかったよな。紹介してくんねーか?そしたら今回は優しく殺してやっからよ。」



……は?


こいつ、ゆらさんを紹介しろなんて抜かしやがったのか?こんな三下顔のゴミがか?



「ぜーったい嫌です!!!」



「あぁん!?こっちが下手に出てやったら付け上がりやがって!生意気なガキがぁ!!!ぶっ殺してやる!!!」



この程度で冷静さを失ってくれるなんて頭が残念な人……


存分に煽っていると準備が整ったのかカウントダウンが始まる。



「私にはですね。とーっても大事な人がいるんです。絶対に離れたくない人。私を救ってくれた、とっても綺麗なダイヤモンドみたいな人。」



「でも、ですね。その人は今世紀きっての馬鹿なのでいつも楽しそうに危険に突っ込んでいくんですよ。だから、私は共に歩めるように、強くならなきゃなんです。だから土足で入ろうとするやつは許せない。あの人の道にお前のような下衆はいらない。」



「なので、最大限残酷に見せしめとしてキルしますので……悪しからず。」



カウントダウンがゼロになる。



「なんかごちゃごちゃ抜かしてっけどよぉ!俺には勝てねぇんだよっっ!!!」



三下は斧を振りかぶり襲ってくる。先手は取られちゃったな。



「……そうかもですね。」



必死に避けつつ逃げ回る。途中で何度も当たりそうにながら距離を取る。



「ちょこまか逃げやがって!」



大ぶりな一撃。うん、これならいけるかな?


滑り込むように避けつつ、相手の背中を掴み微妙に体勢を崩させ再び距離を取る。


その後は、10m以上の距離を取り時々アイテムを投げつつ時間を稼ぐ。



「どんだけ逃げたところで、お前が俺に勝てるわけない!」



ジジッ……



あ、やっとだ。安いやつだったから時間かかったなぁ。三下から一気に距離をとる。



3


2


1



ドッカーン!!!



「ゴハァッ!!!?」



さっき背中に触れた時に爆弾仕掛けといたんだよね。



「足と手、取れちゃいましたね。」



「グぎゃぁっっっ!!!」



あー、この程度か。じゃあこんなのといても面白くないし最低限の実験だけして、帰ろっかな。



メモを取り出して、実験結果をまとめていく。


・足など肉体から離れた部分を回復すると、微妙に結合部分の肉が回復する。優先的に皮膚などの表面の傷が癒される。


・結合部分をくっつけて癒すと接合できる。ただ、しっかり治さずに置いておくと少しづつ剥がれていく。


・結合部分が損傷しすぎるとくっつくことはない。


・血を抜くとちゃんと冷たくなる。


・目で見えない部分を治そうとすると、体の内部をきちんと把握できていない場合悶え苦しむ。


・致命傷部位を落としてもすぐ処置をすれば、生き残れはする。


うん。こんな感じでいいかな。



「あぎゃ……gya…………」



あれ、人語喋れなくなってる?そんなに痛くしてないし、麻酔使ってあげたんだけどな。

視覚情報だけでダメならゆらさんに近づくなんて5億年早いですね。



「では、もう二度と会わないことを願って。さようなら。」



綺麗に首を切り落とし、切り口にビッグアントの蟻酸をかけておく。



よーし、勝てたしゆらさんに報告しに行こー!!!


試合内容は見れて無いはずだし音も乗ってないからバレてないはず、捏造しとこう♪





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「お帰りなさい、いろは。あの……私は別にいいと思いますからね?」



……ミエテル?



え、全部見られた???



終わったぁ…………



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いろはの対戦相手


名前︰犬噛 三太

プレイヤーネーム︰ラガー

噛ませ犬中の噛ませ犬として、幼なじみをぽっと出の男に盗られた。その後も出会う女は全て他の男に盗られる悲しき宿命。今回もいろはを奮起させ、本性を現すきっかけになることでゆらとの関係を変えることだろう。とてもいい噛ませ犬になったことだろう。強くいきろ。

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