第39話私のターンです!




いろはが無事(?)1戦を終えて帰ってきたあと、現場は…………





戦場と化していた。



「わ、忘れてくださいっ!!!」



「ちょっ、いろは!?落ち着いて!!!」



「ゆらさんを殺して私も死にますっ!!お覚悟っ!!!」



鞄からアイテムを取り出し投げ続けるいろは。

迂闊に近づこうにも近づけないなぁ。


どうやって止めようか考えているうちにも、いろはの攻撃は止まらない。



「落ち着いてください!なんとも思ってないですからっ!!!とにかく……落ち着けっ!!!」



あ、つい手元にあった飴玉(?)を投げちゃった。

綺麗な放物線を描いて飛んで行った飴玉がいろはの額に吸い込まれていき……


スコーーーーン!!!



間の抜けた音が響き渡る。



「ふひゃっ…………きゅぅ………………」



いろはが声にならない声をあげて倒れる。



「あれ、いろはー?大丈夫ですかー??」



何度か揺さぶってみるが、ぴくりともしない。



「あらら……気絶しちゃってるわねぇ。横に寝かしときましょ。」



冷静にいろはを路肩に寄せ、寝かせるおネェ様。

……事故車扱い?



「お騒がせしました。ご迷惑をおかけし、すみません。」



いろはの処置をおネェ様に完全に任せ、周囲への謝罪を行う。

色々投げてたからなー……怒られるだろうな。


……いろは、絶対にあとでシバキ倒す。



「いやいや、嬢ちゃん達の戦いはよかったよ!!!今は休憩時間中だったしな。いい余興になったよ。」



「おう、そこの爺さんの言う通りだ!なかなかの投擲だったぜ!」



「いえ、このお詫びは後ほどさせていただきます。本当にお騒がせし申し訳ありません。」



「真面目な嬢ちゃんだなー。あ、そうだ。そんだけの腕があるんなら闘技場イベント出るんだろー?それで面白い試合見せてくれや。」



「え……それでは…………」



「それはいい提案じゃな。この老いぼれが心躍るような勝負期待しとるぞ。」



いい人達だなぁ。



「……わかりました。最高の試合をお見せいたします。」



ここまで言われたらやるっきゃないよね。



「あらあら、なかなか言うじゃなぁい?いろははとりあえず救護室で面倒見てもらってるから、心置きなく戦ってくるといいわ。」



「はい。」



あ、ちょうど試合の準備ができたみたいだね。

身体が少しづつ転送されていく。重力から切り離されていくような不思議な感覚だな。



「いってこーい!!!」



「応援しとるぞー!!!」



声援を背に受けつつ、控え室に転送される。



視界が一瞬ホワイトアウトすると、そこは満開の桜が咲いた野原だった。


んんん?でも野原にしては煤けてるいるような……

よくよく見てみると、所々に赤茶色の跡や埋もれた武器などがある。


もしかしてここは合戦場跡地……?

戸惑いつつも、いい感じの切り株を見つけ腰かける。


一息つきつつ辺りを見回す。


これはどうすればいいんだろうか……



「今回はご参加いただきありがとうございます。

私は今大会のナビゲーターを務める弁慶と申します。おや、この合戦場は………いえ、失礼いたしました。つい見覚えのある場所だったもので。」



弁慶か……なんかここ曰く付きの場所だったりするのかな。

深く聞いてみようと目線を向けると、いきなり身体が重たくなった。



「ここは出場者様のイメージによって作られた仮想の空間。あくまでも控え室です……ゆめゆめお忘れなきように。」



「はい……!」



赤べこのように首を何度も振り答えると、すっと身体にかかっていた圧力が霧散する。



「それでは、お時間になると闘技場まで転送されますので、ごゆるりとおくつろぎください。」



弁慶さんが空間の歪みに消える。


ほっ……



怖かったーーーーー!!!


会う人会う人、ヤバい人ばっかなんですけど!?


私はただ普通にゲームを楽しんでるだけなのに……



「おい、人間!そこに菓子があるようだぞ!!!」



あ、そっか。気にとめてなかったけど、目が見えてるんだからそりゃいるよね。



「聞こえていないのか!?人間!そこに美味そうな菓子があるぞ!!!」



「すみません。聞こえていますよ。お菓子ですか……もしかして食べたいんですか?」



「むっ、私は食べたいなど言っておらんぞ。だが、食ってやらんこともないのだ!!!」



……素直じゃないなぁ。

さっきから視点がずっと釘付けだからわかりやすいことこの上ないんだけど。まあ、取ってあげるか。



「はい、どうぞ。」



「……う、うむ!!!感謝するのだ!!!」



あ、やっぱ素直だったわ。夢中になってむしゃむしゃとお菓子をたいらげる蜘蛛さん。

微笑ましく見守っていると、食べカスが頭の上から零れ落ちてくる。


……こぼさないで欲しいなぁ。切実に。


頭の上に降り積もる食べカスに耐えながら、時間が経つのを待つ。



「うむ?人間、そろそろ時間みたいだぞ!では、またな!!!」



突然視界が暗転する。

そっか、戦闘は禁止だもんね。



「そうでしたね。では、行ってきます。」



「うむ、頑張ってくるのだぞ!!!」



蜘蛛ちゃんの声援に見送られつつ、身体が転送されていく。



よし、気合い入れて行きますか!


いざ、尋常に勝負!!!



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る