第29話地獄ってこういうことなんですね



気合いを入れ直して、相対した私たちに降り注いだのは大量の人形だった。



「…っ、やはり量が多いですね。」



「個別に処理するにはちょっと厳しい量ですよね…なにより当たるだけでデバフが入るのがっ…」



さっきまでの人形は定期的にデバフをかけて周囲を漂うだけだったのに、メアリーの操る人形は接触するだけでデバフがかかる上に近づくと襲ってくるため避けるのは非常にキツい。というか無理である。

それがメアリーが腕を振るだけで飛んでくるって本当にどうすれば正解なんだ?運営攻略法用意してます?



「……もう屋敷ごと焼き払いませんか?」



「面倒くさくなってるじゃないですかぁっ!正直、このまま戦ってもジリ貧ですけど、そもそも火種がない……?」



そう言うといろはは首を傾げつつ、私の方を見ると



「……ゆらさんってヘスティアの巫女なんですよね?」



「そうですよ?」



「炉の女神様であるヘスティアの巫女なんですよね?」



「まさか、火を起こせって言ってます?私が使えるのは猫化だけですよ……?確かに火を使えたらいいなとは思いましたけど……」



「でも、お姉様は巫女の力で光ったりエフェクトつけられるって教えてくれましたよ!自分の顔を綺麗に見せる光の位置とかとっても勉強になりました!!」



え、私もそれ知りたかった。じゃなくてなんでそんなすごい力の使い方なんで教えてくれなかったんですか、おネェ様。



「そんな力の使い方があるんですね…?でも、急に言われても火のつけ方なんてわからないですよ。」



「そんなこと言ってる暇ないです!このままだと回復が間に合わなくなって死んじゃうですから、ニャーって気合いでつけてください!!!」



ニャーってなんですか、ニャーって…

でも策がないのも事実ですし、やりますぅ?



「ニャー!!!(ฅ・ω・ฅ)و♡」



ボッ!!!



えー…?これでついちゃうんですか???

ぼんやりと優しい光の火が右手の爪先に灯っていた。



「つきましたっ……ぷぷっ……ね……」



何提案した人が笑ってるんですか?いてこましたろか?おぉん?

そんな風にイラついてたからだろう、うっかり火をつけたままの右手で人形を薙ぎ払ってしまった。


火のついた人形が、ころころと人形のもとに転がっていく。そして……



はい、出火(ノ≧ڡ≦)☆



「なにやってるんですかぁ!?」



「いろはが火をつけろって言ったのが悪いんです!」



ギャーギャー責任の押し付け合いをしていると



『Guruaaaaaaaaaaaaaaaa!!!』



突然大きな悲鳴のような音が地響きとともに起こった。これは…部屋が火をつけられて暴れてる……?

そう言えば、この部屋自体がモンスターなんだっけ。



『ワタシノオウチガ……!?ヤメテ!!!!ヤメテ!!!!!!』



……なんか私達の方が悪人みたいじゃない?

でも、大量の兵仕向けられたし(正当防衛)、人形にも馬鹿にされたし(不法侵入者に対する制裁)、今もメアリーちゃんに襲われてるし(大事なお友達を分解した復讐)……?だから放火しても許され……


ん?よく考えたら私達のしたことって強盗の放火魔では……?擁護できなくなっちゃった。



必死に人形を使って火を食い止めようとしてるけれど、逆に燃料が追加されたことによってどんどん火の勢いが強まっている。


……なんか可哀想になってきたけど今更消せないしなぁ。



「なんか、燃えすぎじゃありません?さっきボム使った時の火花じゃ火がついたりはしなかったんですけど……」



あ、確かにいろはもバンバン爆弾使ってたのに火がつくなんてなかったな。

私の使う炎が特別なんて……


これ、神の炎だから……?もしかしてこの炎にもアンデッド特攻があるの?


すぅ……


うん、これは不幸な事故だったってことで……



「いろは逃げましょうか……」



「えっ!?これを見て見ぬふりをするんですか……?」



そんな人でなしを見るような目で見られても、困ります。だって、止める手段ないし…

なんなら炎にこの館の水をかけたところで、多分燃え広がるだけだろうし…


さらに今気づいたけど私達は炎に触れても暖かいだけでダメージ受けてないから、これ邪悪なものを燃やす炎なんだろうなぁ。



「……仕方ないのです。私たちには何もできることはないのです。だから逃げましょう。」



この場に留まってたら最後道連れとかありそうな展開だから、仕方ないのだ。うん。



「……っ、そうですよね。」



いろはも渋々ではあるが納得したらしく、私に続いて玄関まで降りてきた。


さっさと館の外に避難しようと、開かずの扉に手をかけると意外にもあっさりと開いて出られてしまった。



「開きましたね?」



「家主の力が弱まったからってことですかねぇ。」



その後も、何をする気にもなれず館の前で座り込んで眺めていると、館に炎があっという間に全体を包んだ。とても綺麗な、しかし地獄絵図と称するには生温いほどの実情。

屋敷全体が悲鳴をあげるように激しくごうごうと燃えていく。



「うわぁ……」



「神々しいくらい綺麗な炎ですねぇ。」



「現実逃避しないでくださいっ!」



ほのおきれい、くうきおいしい。



そんな茶番を繰り広げている間にも、館はどんどん原型を失い崩れ落ちていく。最後の1片すら残さず燃え尽くされていく。


しばらくの間無言で虚無感に浸っていると



[ ワールドアナウンスです。メアリーの館︰王女メアリーの妄執がクリアされました。特殊クリアにより、フィールドが変化いたします。]


《メアリーの妄執クリアおめでとうございます!!!初回クリア特典として王女のリボンが送られます。》


《メアリーの妄執、特殊条件下でのクリアおめでとうございます!!!クリア特典として彷徨う王女の魂が送られます。》


《メアリーの妄執、シークレットクリアおめでとうございます!!!この土地の所有権が送られます。》



しょゆうけん???


ワァ……


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正規ルート

雑魚敵を全て処理する。時間が経過するとお気に入りのお人形マーガレットが現れる。マーガレットは遊びに満足すると帰っていくので、それまで厄介なピアノ線を切りつつ雑魚敵の相手をする。その後は、襲いかかって来る敵を全部処理する。そして、ボス部屋でメアリーとマーガレットの2人と追いかけっこなどで遊ぶと満足してお家に返してもらえる。遊んでいる途中、館に仕掛けられた罠や雑魚敵からの攻撃があるのでご注意を。

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