第30話地主になりました!



大音量で鳴るワールドアナウンスと大量のクリア通知。

そして明らかに序盤で手にしてはいけない土地の所有権という文字………

目の前には立派な館があったとは思えない瓦礫まみれの土地、そして当然のごとくまた館が復活する兆しはない。



先に正気に戻ったらしい、いろはが館のあった場所に近づきしゃがみこんだ。



「ゆ、ゆらさん!!!これってもしややらかしたというやつですか!?」



「そう、ですね。やっちゃったというやつですねぇ…」



「えぇぇぇ!?どうしましょう…はっ!?館を建て直せばなんとか…」



訂正、正気ではなかった。瓦礫を積み始めるいろはを見て少し落ち着きを取り戻す。

人間自分よりやばい子を見ると、正気に戻るよね。

まあ、正気に戻ったからと言ってどうすればいいかわからないのは変わらないんだけどね。

うーん…あ、そうだ。



「こういう時は困った時のおネェ様です。さっさと街に帰りましょう。この場にずっといて、野次馬が湧いてきたら面倒ですしね。」



「そうですねっ!お姉様ならどうにかしてくれますよねっ!!!!!」



いろはもおネェ様への信頼がそろそろ天元突破しそうだねぇ。

私は最初からですけどね。(どや)


人通りの少ない道をなるべく選びつつ、街へと帰る。

無事、冒険者ギルドに着いたら駆け込みダッシュ!!!



「おネェ様ただいま戻りました!!!」



「お姉様!!!」



いろはと2人でダッシュ、ジャンプ、飛びつき!!!



おネェ様はやれやれとした顔で軽く頭を抑えつつ、両手を広げて………デコピンをかました。



「「痛っ!!!」」



「騒がしいのよっ小娘共!!!もっとレディなら落ち着きを持ちなさい!!!」



ちぇ…怒られた……



「そ、そんなことより大変なんですって!!!むぐっ」



いろはが焦りすぎて全部口走りそうになったから、とりあえず口を塞いでおく。



「……ふぅん。ここではダメな話ってことね。じゃあ、そうね。この時間なら会議室が開いてるはずだから、そこで聞きましょうか。」



さっすがおネェ様!理解が早い!!

いろはの口を塞いだまま部屋まで連れていく。


ふごふご言っているいろはがさすがに可哀想だったので部屋に入った瞬間拘束を解く。



「ぷはぁっ!!!いきなり何をするんですかーっ!」



……やっぱり解かなくてよかったかも。



「で、何をやらかしたのかしら?」



「やらかしたって決めつけないでください…まあ、そうなんですけど。」



「やっぱりそうなんじゃない。まぁとりあえず話しなさいな。」



なんかおネェ様に色々諦められてる気がする。そんな残念な子を見る目で見られる覚えは……おぼえは……あるわ。宝珠の件で迷惑かけたしねぇ…仕方ないかぁ。


ベルトにつけたポーチを漁ってっと…あ、あった。

権利書をおネェ様の目の前にバッと広げる。



「えっとですね、土地持ちになっちゃいました☆」



「はぁ?急に何を言い出し……」



理解できないという顔で、おネェ様は書類に目を通していく。そして途中で目を見開き言葉を止め、書類を奪い取る。


真剣に読み進めてるなぁ……あ、ため息ついて頭抱えちゃった。



「はぁ……ゆらに言いたい事は山ほどあるけど……あそこよくクリアしてきたわね。2人ともおめでとう。」



え……おネェ様………好き。



「………?ありがとうございますっ!!!」



あ、固まってる間にいろはに先越されちゃった。

いや、でもあれずるいもん。びっくりしてキュンしちゃうよ。



「え、おネェ様好きです。急にどうしたんですか……?」



「いや、あんた達こそ急にどうしたのよ。あそこって物量で押してくるダンジョンだから攻略できたってことはそれだけの実力があるってことじゃない。そこはしっかり褒めなきゃダメでしょう。私がそんな当然のこともできない女だと思ったのかしら?」



おネェ様かっけぇ……



「いや、そんなことはないですっ。」



「ふふ、そうよねぇ。まぁ、それはそれとしてダンジョンを潰す……なんてことよくやらかしてくれたわねぇ。」



「やっぱり、ダメな事でしたか?」



「いいえ、むしろ逆よ。ありがたい事なのよ。ダンジョンっていうのはキングラットの巣穴みたいにモンスターの総量が増えることでスタンピードが起きるの。だから、ダンジョンが消えたということはすっごくいいことなのだけど……」



だけど……?



「ダンジョンが消えた手続きをしなきゃだから、私たちギルド職員がとぉっても大変になるわ。あと、ゆらも書類提出義務があるから協力してもらうわよ。」



ヒェ、おネェ様の目からハイライトが消えちゃった…



「はい……」



「あとは、土地の所有権なのだけど……これは神殿に売りに行くか、自分で活用するか決めた方がいいと思うわぁ。私的にはぁゆらがこの街にクランを作ってくれたら遊びに行けるし嬉しいのだけど……どうする?」



???

ちょっと待ってクランって作れるの!?

今の段階で?え、どういうこと??



「え、クランって作れるんですか?」



「……そうよぉ?クランっていうのはクラン本部に相応しい建物を持つこととギルドへの書類があれば作れるから、ゆらなら建物さえ作っちゃえば設立完了ねぇ。」



え、意外と簡単。



「でも、クランメンバーいないですし……」



「1人でもクランは作れるわよぉ。まあ、人数が少なければ土地を買うのも建物を作るのも大変だけどねぇ。あと、人数が少ないのが気になるなら、お仕事の任期が終わったら私が入ってあげるわよ?」



「えっ!?いいんですか?」



「もちろんいいわよぉ。もともと私は巫女だからねぇ職員じゃないのよ。今は3ヶ月ほど旅人対応で頼まれて用心棒兼職員として働いてるだけよ。だから、任期さえ終われば入ってあげるわ。とは言っても、自分磨きの修行のために戦闘や修行をするから、そんなには手伝えないけど。」



「え、それでもいいのでお願いします!!!」



やったぁ!!!おネェ様ゲットだぜ!!!



「まあ喜ぶのはいいけれど、その前に書類整理やりましょうね?」



あ、はい。ご迷惑おかけします。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る