第28話血まみれメアリー
扉を開けた私たちが目にしたのはとてつもなくファンシーな内装だった。
ピンク色の壁にレースの天蓋付きベッド、そして大量のぬいぐるみと人形。おいてある家具がすべて白とピンクを基調にしていてかわいらしく、だが気品を感じるつくりになっている。
いかにもお姫様のお部屋って感じでさっきいた場所と同じ館なんて信じられないくらいだ。
「えっ!?ここ本当にさっきの館と同じ空間ですかぁ!?」
「…油断しては駄目ですよ。ここはさっきよりもだいぶホラーな空間ですからね。」
「えぇ…?こんなにかわいいお部屋ですよ?さっきみたいないかにもな空間の方が怖いです。ゆらさんは警戒しすぎじゃないですか?」
あぁ、いろはにはこの部屋の怖さが伝わらないんだ…まぁホラースポット見慣れてないならわからないよね。
「いや…管理者のいない館のはずなのにここだけ綺麗でほこり一つ落ちていないですし、しかもここのものだけ一つも古びてもくすんでもいないんですよ。一切怖くない空間だからこそ怖いというやつですねぇ。」
ここの攻略(と趣味)のためにこの館について調べてみたけど、数百年前に持ち主である亡国の王女メアリーがいなくなってからは管理者がいないホラーハウスになったって書いてあったからねぇ。それなのにこんなに綺麗な状態の部屋なんて絶対にありえないんだよね。
「確かに玄関ホールの床も階段の手すりも形を保つのがやっとみたいな腐食具合なのにここだけは年月を感じさせない綺麗さですもんね…」
「おおよそ、モンスターから逃げてこの部屋にやってきた人を油断させて殺す悪趣味なここの家主さんの目論見でしょう…」
『あれあれ?そこまでバレちゃった?おねぇちゃん達あたまいいねぇ!本当ならわたしといっしょに遊んでほしかったんだけど…』
突然かわいらしい幼女が楽しそうに目の前に飛び出してきた。無邪気にキャハキャハ笑う様子はとてもこの屋敷の住人には見えない。
この子がメアリーちゃんなのかな?綺麗な金髪にぱっちりした青い目のいかにもお姫様な感じの女の子だね。意外と友好的な雰囲気だしもしかしたらこれは仲良く…
『でもね、わたしのとっても大事なおともだちのマーガレットがさっきから見当たらないの…………………………
ねぇ、オネエチャンドコニヤッタノ???』
…なれないねぇ。
あー、あの人形マーガレットっていうんだ。しかも重要なやつなんだ。
もしかして、あの場でイラっとして壊しちゃったけど結構まずかった…?
「ひぃぃっ!!!ゆらさんめっちゃ怒らせてるじゃないですかっ!?今すぐ謝ってください!!!」
部屋が一気に腐食し、年月通りの見た目になっていく。何より変化が大きかったのはメアリーちゃんだ。かわいらしかった顔も腐って溶けおち、もとの姿の名残は金髪とドレスだけになってしまっていた。さすがホラー屋敷の主って感じだね。
突然の豹変に驚きすぎていろはが錯乱してること以外は想定の範囲内かな?
「これ謝ってどうにかなるんでしょうか…?」
多分今更謝ってももう遅いんじゃないでしょうかねぇ。もう綺麗にパーツごとに分解しちゃったし……
くっつけて元通りってやっても余計キレられちゃうだろうしな。
「ならなくても、謝ってくださいっ!!!ていうか元に戻してぇ!!!!!」
理不尽…
そんなふざけた掛け合いをしているのにしびれを切らしたのか、はたまた時間がたったからなのか
『ユルサナイ』
メアリーちゃんが突然鬼の形相で手元にあったぬいぐるみをこちらに飛ばしてきた。
急なことで驚きはしたもののなんとかいろはを抱えて避けられた、はずだった。
「きゃぁっ!?」
「がはっ!?」
咄嗟にいろはを突き飛ばし、かばう。いろはに怪我は……ないね。よかった。
かわりに私の腕を噛みちぎっていった人形を睨む。
「…っ、まさかとは思いますがここの人形も全部意思があるとかいいませんよねぇ?」
そんなことあってほしくないけど、多分それが真実なのだろう。嘘であってほしいほど残酷な事実。
そうじゃないとさすがに人形が180度転換して襲いかかってきた説明がつかないし……
「そうみたいです……というかこの部屋自体がモンスターです……」
いつの間にかモノクルを出し鑑定していたいろはが言う。あ、部屋もなんだ。
この部屋を埋め尽くす人形、しかも部屋までがモンスターってどう勝てと……?これもヘルモードの弊害とか言わないよね?
もし仮にそうだとしてもハードすぎないかなぁ。
『ゼンブカエシテ!!!ワタシノオトモダチ!!!』
………しかもこれ、死んだら全ロスする感じじゃない?
やっだぁ、本当にHellすぎぃ。
「いろは、これ多分死んだら全ロスの流れですよ。死ぬ訳には行きません。本気だしてくださいね?」
もう1回再戦は勘弁してほしいですからね
「全ロス……ですか?まさかまさか今までにドロップアイテム全部失うとか、ふざけるのも大概にしてほしいですね。……ゆらさんこそ死んだら100回は殺しますからね。覚悟してください。」
え、いろはこわぁ。そんなこと言う子だったっけ?
誰の影響かしら?お姉ちゃん心配……
「ま、まぁいろは、全力で行きますよ!!!」
「はい!!!」
私たちの地獄の死闘が始まった。
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