第10話さばきましょう!
炎くんがポリゴン片に変わり消えていくのを見守ったあと、私は後ろへと振り返り短剣を投げる。
なんか終わったみたいな顔で逃げようとしてるけど、逃がす気なんてないんだけどなぁ?ふしぎー
「ねぇ、君たちは当然関わってるんだよね?」
優しく聞いてあげたのに、ガタガタ震えながらこっちを化け物でも見たかのように睨んでくる。
「お、おれたちは関わってねぇ!あいつが勝手にやってたことだっ!!!だ、だからゆるしっっ……」
この期に及んでまだ認めないとかびっくりだねぇ。さっきリーダーに言うなって口止めしてたの君じゃん…
そうだなぁ。関わってないのかどうかは、神様に決めて貰おうかな?
「裁定。あなたたちパーティはそこにいる鑑定士ちゃんの有り金を巻き上げ、あまつさえPKをしようとして恐喝恫喝などで精神的苦痛を与えた。また、攻略組で立場を維持するために、道具や武器の金額を高く伝えることで中抜きしたり、武器の修理のさいにすり替えなどを行ったりして金銭を不当に稼いだ。そして、許されざる罪として、街の神殿に保管されていた宝珠を盗み汚し、神獣を狂わせた。以上をもってして、あなたたちを神の名のもとに裁きます。」
と、告げたところで不思議と次の言葉が私の口から紡がれていく。
「罪人に死を、咎人に苦痛を、永遠なる平穏の地からの追放をもってしてあなたたちは償い続けなければばらないのです。」
これが、神様の裁定なんだね。うっすらと感動を覚えつつ、武器をかまえる。
「なんなんだよっ!お前はっ!!!」
その言葉の答えなんてわからないけど、強いて言うならそうだな
「平穏の巫女であり、ヘスティア様の信者かな?そしてお前たちを殺し裁く者だよ。」
「断罪」
その言葉をはなった瞬間、一気に身体が軽くなり、世界がゆっくりに感じるほどの祝福がかけられていく。
それとは逆に、炎くんのおまけのゴミ達は身体を抱えてうずくまり、悶え苦しんでいる。
なるほどねぇ、裁定と断罪は強力なスキルみたいだね。でも、こんなに馬鹿な罪人ばかりじゃないだろうし、使い所が難しい所謂死にスキルになりがちかな?
私はヘスティア様から貰ったスキルだし(拡大解釈)これからも使うけどね。
「苦しいねぇ。つらいね。楽になりたいね。だからはい、ポーション。」
さっきのPVPで得た大量のポーションをかけて死ぬのを遅らせていく。炙ったり、縛ったり、切ったり、抉ったり、打ち付けたり、そんなこんなで、30分くらいたったところでポーションの在庫が切れたので、遊ぶのをやめる。
「じゃあ、そろそろいっか。」
そう言って、とどめを刺そうと短剣を振り上げると
「あ、悪魔が……お前がいちばんの罪人だ…………」
ははっ
そうだよ?
だから君たちは馬鹿なんだよ。
「ばいばい。」
そして一人一人丁寧にとどめを刺し、終わらせていく。
これで、全部だね。楽しかったなぁ。
満足して余韻に浸っていると
「あ、あのぉ……」
あ、そうだった。鑑定士ちゃんを助けるのが目的だったんだ。
「すみません。ほったらかしにしてしまって、貴女に怪我などはないですか?」
「え、あ、はい。大丈夫です。あの…失礼ですが、口調が全然違いますね……?」
目をまんまるにして、戸惑ってる鑑定士ちゃん…
はっ!自己紹介まだだった
「そうですねぇ。敬語を使う価値がない輩には使わないだけですけどね。そういえば、自己紹介がまだでしたね。私はゆらと申します。あなたのお名前を伺ってもいいでしょうか?」
「あっ、そうでしたね!私は鏡音いろはと申します!ゆらさんですね。これからよろしくお願いいたします!!!」
ん?これから?もしかして…
「いろはさんですね。勘違いさせていたのなら申し訳ないのですが、私は貴女をあのパーティから抜けさせるために私のものにと名乗り出ただけなのですが…」
そう告げると、いろはさんは泣きそうな顔になって
「ゆらさんは私のこといらないんですか……?そうですよね、鑑定士なんてお荷物ですよね。私ごときがすみません…………」
「そんなことないですよ!?鑑定士さん欲しかったですし、いろはさんはかわいらしくてパーティにいるだけで嬉しいですよ。ただ、いろはさんの選択肢を奪いたくないだけですよ。」
「かわいい…ですか……?」
いろはさんが意外そうに固まったので、そっと顔を覗き込む。
確かに前髪が長いから分かりずらいけど、目がくりっとしてて睫毛も長く、小動物を思わせる可愛らしいお顔をしてるのになぁ。そこまで驚くかなぁ?
「はい。リスみたいにちっちゃくてかわいいですよ。」
「そう、ですか。そんなこと初めて言われました…嬉しい、です。」
そう言うといろはさんはこっちに向き直ると
「やっぱり私をゆらさんのパーティに入れてください!鑑定士がメインジョブでサブで癒術師を取ってます。お荷物かもしれませんが、よろしくお願いいたします。」
深々と頭を下げるいろはさんをなんとか宥めて頭をあげてもらい
「こちらこそよろしくお願いしますね。鑑定士はとある内緒の情報源から聞いたのですが、お荷物じゃないですよ。むしろこちらから欲しいくらいの人材なのですから。私は平穏の巫女がメインジョブで異端審問官がサブですね。たいしてできることはありませんが、ああいう輩からは守ってみせますから安心してくださいね。」
「鑑定士がお荷物じゃないって…そうなんですか?」
「そうですね。さっきの鑑定の情報も詳しく聞きたいのでとりあえず街に戻りましょうか。」
こうして、初のフィールドはモンスター0キル、プレイヤー4キルで終わったのだった。なんでだろ?
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ゆらの生態7
ゲームセンターにたまに行って、ゾンビの頭を撃ち抜いている。クレーンゲームは得意だけど、リズムゲームはすごく苦手。某太鼓をやさしいで遊ぶレベル。
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