第32話おネェ様の地獄の特訓です……!



ログアウトし、しっかり寝て食べてやってまいりました冒険者ギルド!!!


……ってやりたかったんだけど残念ながら、目が見えないから無事ログイン地点で立ち上がった瞬間転んでここどこ状態です。助けて。


そのままもがくこと約30分。

その間立ち上がったり、歩こうとしてみたけど無理だねぇ。並行感覚までなくなるんだなぁ、軽く見てたけど視界が無くなるって結構重要だったんだね。まぁ


というか《ログアウトした後のリスポーン地点はベッドで寝ていない限り街の真ん中にある広場になります。》この事項が問題になるなんて思ってなかったよ………


何回も転んで顔から地面にぶつかる。さすがに動くのを諦めて地べたに座り込んで何分もの時間が経過していく。どうしようかなぁ……


どれくらいの時間がかかったのかわからないが、そろそろログアウトを考えていたところ



「ゆらっ!?ここにいたのね!!!」



「…………!おネェ様ですかっ!?」



おネェ様の声が聞こえてほっとして駆け寄ろうとして………コケた。



「あっ!……………………?」



衝撃に備え身構えながら倒れていく……と思いきや、何か硬いものに受け止められた?



「もう、そっそかしい子なんだから〜!」



おネェ様に受け止められたらしい。



「ありがとうございます。目が見えないのを忘れていて……」



「もうっ!中央広場でひたすら転んでる旅人がいるって言うからもしかしてと思って様子を見に来たのよ!ゆらみたいな子なら朝には来ると思ってたのに来ないから嫌な予感はしてたのよ〜……」



おネェ様には助けられてばっかだね……

いつかきちんとお礼しないとなぁ。



「ご心配おかけしました。本当にありがとうございます………おネェ様が来てくださらなかったらこのままここにずっといる所でした。」



「………あんたねぇ。周りの人に私の名前出すなりにして冒険者ギルドまで案内なり、伝達してもらえばいいじゃない。」



あ!?その手があったかぁ……

もっと早くそうすればよかった。(´;ω;`)



「確かにそうすればよかったですね……」



「ゆらははちょっと抜けてるわねぇ。あんだけ戦闘中は頭が回るのにどういうことなのかしらぁ?不思議ねぇ。」



あはは……お恥ずかしい…………



「あ、そうです。おネェ様遅れてしまってすみません。ギルドに行って早く戦闘訓練しましょう!」



「バカ!まずはまともに動けるようになることでしょうが!!運んであげるから掴まってなさい!!!」



ごもっともです……

恐る恐るおネェ様の腕をつかむ。うわぁかったい…これホントに人の腕???

いわゆる姫抱きというやつで運んでもらう。



「じゃあ、今日は人が多いし跳んでいくわぁ。」



………?

おネェ様の発言の意図をとらえかねていると、



「きゃっ!?」



「ちゃあんと掴まってるのよぉ。」



直後に風…いやGを感じる。圧倒的な速度に伴う空気抵抗がすごいんですけどっ!?

え、これどうなってるの!?視界がないからなにが起こってるかわかんないんですけど!!!


そんなこんなで混乱しているうちに、いつの間にか冒険者ギルドについていたらしい。



「ゆら、着いたわよ!」



「ありがとう…ございます…!?うっぷ…おネェ様いったいどのような方法でここまで…?」



乗り物に乗ったわけでもないのに酔ってフラフラしつつ、おネェ様に尋ねる。



「あぁ、ちょっと空中を蹴って空の道から行っただけよ?道が混んでたから。」



ナチュラルにスケールが違うんですけど…

空中って蹴れるんだぁ。すごいなぁ。(遠い目)



「そう、ですか……」



「さぁ、とりあえずは戦闘の前にまともに歩けるようになりましょう。そこからどんどん動きの練習よ!全部できたらお楽しみの戦闘訓練ね!!!」



「はい……」



「さぁて、まずはしっかりまっすぐ立てるようにトレーニングよ!自分が選んだ道なんだからキビキビ動きなさい!!!」



そうだね……思ってたより辛いとはいえ、あの選択を後悔することはないしね……


なんなら今まで以上に動けるようになろうじゃないか。見えないことまで戦略にできるようにしよう。

そのための特訓なら辛くはないね。



「まずはぁ、本を頭に10冊のせて歩く練習よ!!!」



はい?



「えっと聞き間違えかもしれませんが、10冊ですか?」



「そうよぉ。基礎の基礎よね!」



あ、そうだおネェ様ってこういう人だったわ。

人選間違えました……?



「そう、ですね。はい……」



その後も、おネェ様の言う基礎の基礎のトレーニングは続き……



「さぁて、そろそろ応用編よ!その本を載せたま10km走りましょう。」



「……はい」



いよいよ20冊もの本をのせてランニングまで来ていた。ここまでついてきた自分を褒めてあげたいくらいだわ……



「応用編が終わったら今日は軽く戦闘して終わりよ!」



「はいっ……!」



歯を食いしばり、応用編にもついていく。途中のあのダンスをする練習とかランウェイの歩き方とかいるかなぁ……?とか思いつつ最後のステップまでなんとか辿り着くことができた。



「最後の応用編トレーニングは……この訓練場内を完璧に端から端まで掃除することよ!」



はいぃ……!?



「えっとそれはどういう……?」



「ここに掃除道具はあるから、さっさとやっちゃってちょうだい!私は書類を片付けてくるわ!!!」



そういうとおネェ様は爆速で去っていった。



バタンッ!!!



ドアしまっちゃったなぁ……

1人でこの訓練場をかぁ。おネェ様ならきっと何か考えがあるんだろうね。



そう考えつつ、掃除をしていく。

何時間にも及ぶトレーニングで自分のいる位置を把握するくらいはできるようになっていたので、隅から隅まで掃き掃除を行う。


1時間くらい経ったところで、一応床を全て掃ききることができた。


うん、綺麗になったんじゃないかな?見えないけど。



「ゆら、よくやったわね!!!」



掃除が終わった感慨に浸っていると頭上からおネェ様の声が降ってきた。



「いつ入ってきたんですか!?」



「最初からいたわよっ!弟子の成長を見守らないわけないでしょう?」



え、でもさっき床全部掃き掃除したよね?多少接触したり足音に気づきそうなもんだけど……



「どこにいたんですか……?」



「天井の梁の上よ!まぁそんなのはどうでもいいじゃない!!!よく頑張ったわねぇ!!!」



頭を痛いほど撫でられる。

乱暴な撫で方ではあるが嫌なものではない。頭を撫でられるのっていつぶりだろうかな……



「ありがとうございます。」



「じゃあお約束の戦闘と行きたいんだけど、書類を片付けなきゃいけないからまた明日でもいいかしら?」



「大丈夫です。」



「じゃあこの寝袋で寝るといいわ。旅人はちゃんとした場所で寝ないと大変なんでしょう?」



気遣いすごいな、おネェ様……

手渡された寝袋を素直に受け取り、いそいそと寝る準備をする。



「今日はありがとうございます。明日もよろしくお願いします。」



「しっかり休みなさい!!」



おネェ様らしいなぁ。


こうして地獄のトレーニングは幕を閉じたのだった。


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おネェ様のトレーニング(例)


・本をのせたままスキップ

・腕立て伏せなど筋トレ

・本をのせたまま綱渡り

etc……


普通の人がやるのも辛いものですね。ついて行くのには才能より努力が必要です。ただここまで行くと努力どころじゃない頑張りがいります。これをできる常人はいません。軍人や騎士団にならいるかも……?

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